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しおりを挟む両雄並びたたず
清潔なシーツに横たわる貴人を佐和は悲しく見守った
精彩に欠くが外見は逞しく国一番と謳われた美男だ
しかしその美貌の顔は今は頬が痩せてきたように思う
黒く艶やかな長い髪を纏め浅黒い肌や逞しい身体つきは変わらないのに
彼の名は貴意《きい》双の王の片割れ
ここ西南領と呼ばれる国は珍しく双子の王を擁立していた
それも海に囲まれて諸外国からの侵略されにくい環境と侵攻が困難なことで内政へと力を注げるからだ
双頭の王、貴志は武力を
片割れ、貴意は内政を
それぞれの均衡をもっていた
しかもこの双王は犬猿の仲でも有名で、双子だけあって寸分違わぬ美貌なのだが互いを毛嫌いしていた
佐和は貴意に仕えており、貴志とは数回しか顔を合わせていないので人となりをよく知らないのだが
顔を合わせたといっても残虐なことでも、有名な貴志は佐和には恐ろしく俯き黙って貴志の後ろに隠れて遠目で見ただけ
「……………佐和」
消え入りそうな声に視線を上げると、貴意が少しだけ瞼を開き透けそうな鳶色の瞳で佐和を見つめていた
その視線には慈しみや愛情が溢れている
「死んだら共にきてくれるか」
悲しいまでに弱気に揺れる視線に佐和は黙って頷いた
大きな貴意の手を取り頬にあてる
「…どこまでも佐和はついていきます」
佐和がそう言うと貴意は安心したようにくしゃりと笑った
Continue end
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