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転生司祭は逃げられない 6
しおりを挟む「だから、ただの胃痛と頭痛ですってば!重病でもなんでもないです。薬のんだらすぐに治るし、でも心因性だから治ってもすぐ痛くなるんですよ!!
戦闘とか、そもそもグロいの苦手だし、体力も精神力も削られるし。みんなすぐに揉め事おこすし、喧嘩するし!やっと魔王討伐も終わったと思ったら周りの人からは「なんか一人場違いなの混じってる」って視線で肩身が狭いし!面倒な貴族とかあの馬鹿、違った愚王とかやたら絡んでくるし!!」
すぅっ、と息継ぎを挟み、目の前の王子と騎士団長を軽く睨む。
「大体、場違いで地味な司祭が一国の王に呼びつけられて断るすべなんてないじゃないですか。関わらせたくないならそっちで留めてくれませんかね?!そもそもこっちだって好き好んで関わりたくないですよ。正直、ぶん殴りたくて仕方ないの堪えてたっつの。
能力が劣ってるのは事実だから微妙な視線はいいとして、「ついてくだけで栄光が手に入んなら俺も行けばよかった」とか休日に仕事入っただけで「彼女と約束あったのに!」とか嘆いてる奴に勤まるわけあるか。魔王討伐の旅に定休日なんてないわ!終いにゃキレるぞって話ですよ!!
旅の最中よりも旅終わってからのが精神的ストレス大きいってどういうこと?!」
グチ、大爆発。
あ、後半の話は若い騎士が軽口叩いてんの聞こえたやつね。
突如ブチ切れた僕に場が引いて、落ちた沈黙に僕もスッと熱が引いた。
冷静になると人って後悔が襲ってくるもんだよね。
「その、申し訳ない……」
「大変失礼致しました」
しかも一国の王子と騎士団長に素直に謝られてしまい、溜飲が下がるどころか気まずさハンパないし、引いてるみんなの視線がめっさ痛い。
「……そんなことが。許せない」
「あの王様、殺した方がいいですか?あと他にも」
気まずいとか視線が痛いとか言ってる場合じゃなかった!?
よし止めて!!
あとユリア、他にもって誰を想定してるのかな?
「あー……と、ごめん。俺らも旅の面倒事、結構ミシェルに丸投げしてたし。あと城の連中の対応とかにも気付いてなくて。そんなしょっちゅう呼び出されたりしてたんだ?」
「勇者や聖女を手懐けるのにいいエサだと思われたんでしょうね。変なのは寄ってくるし、お蔭でまともな人達には疎まれますし」
「でもミシェル様が怒るのなんて初めて見ました」
こくこくと頷く勇者パーティ。
僕、そんな温厚な認識なの?
割とキレてるよ?心の中で。
「普通に怒るしムカつきますよ。大人ですし、揉め事ふやしたくないから表に出さないだけで。でもあの馬鹿だけは無理なんですよね。あのまま城に滞在してたら胃に穴あいてました、多分」
「その、王…父はそれほど司祭殿に無礼を?」
「いえ、侮りが透けて見えましたけど丁寧でしたよ。利用価値を見越してでしょうが。でも無理。アーサーたちを利用しようとしてることも無理なら、存在自体生理的に無理なんで」
もうぶっちゃけちゃってもいいよね?
でもその前にしなくてはならないことがある。
「王子殿下」
居住まいを直し、真正面から王子を見据える。
「貴方はあの王の処遇をどうなさるおつもりですか?不遜ながら、騒動に巻き込まれ、また解決に関わった者として私たちには聞く権利があります。今、この場でお答えください」
逸らすことを許さぬ視線に、躊躇いの後、王子は真っ直ぐな視線を返した。
「王は国を危険に曝した。許されることではない。王の地位を剥奪したうえで斬首することになるだろう」
「そのお言葉、決して違えることのありませんように」
しっかりと念押しまでしてから、一同へこの処罰に関し手出し禁止を言いつける。
よし、頷いたな。
不満たらたらだけど了承したよね。撤回は無効だから!
「随分こだわるねあの王に」
「当然ですよ。アレが魔族を呼び寄せる愚行を犯すかもと知っていながら未然に防ぐことをしなかったのはその為ですから。待ってたんです、この時を」
「何のためにだよ?」
「王を裁くにはそれなりの罪状が必要だからですよ」
「えっらい嫌ってるね、あの王のこと。確かにムカつく奴だったけど」
「ええ、大っ嫌いです」
深く刺さった棘のように、抜けない痛みがある。
火傷のように、鈍く胸の底で疼き続ける痛みがある。
本当は、言わないでいようと思ってた。
だけどもう耐えられそうにない。だから、
さぁ、懺悔を始めよう_____。
応援ありがとうございます!
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