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第27話 私とおいで
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「だからなのね、故郷では、皆私に近寄ろうとしなかったのは…。バカみたいね…色々なことの当事者である私が、何にも分かっていなかったなんて…」
無表情で視線を足下に落とすシャーランのその瞳は、悲しそうでどこか寂しそうでもあった。
シャーランの様子を見ていたルイは、眉間に皺を寄せ両手をグッと握る。
「俺は、何にも分かってなかった。マージ家の本当の妹だった子とも、幼少の頃に会っていたのに。なぜ、気づかなかったんだ…。シャーランが幼い頃の記憶となんか違うと思っていた、あのモヤモヤした記憶の正体が、今頃になって分かるとは…」
ルイは顔をあげ、ケイランを見据える。
「シャーランは、アイスブルーの瞳だ。けれど、マージ家は、全員グリーンの瞳。その事実に、驚くことに俺だけでなく、他の誰もが気付いていない。」
ルイの言葉に、皆が、一斉にケイランの瞳を見る。
だが、ケイランは自分に集中する皆の視線にも表情を変えることはなく、冷めた視線でルイを見返す。
「そうだ、そもそもアイスブルーの瞳は、現在生きてる人間で、所持できる者はいない。これは始祖だけに許された、特別な瞳の色なんだよ。だが、シュトムのことを知る人間がほとんどいない今、瞳の色のことなんて気にしないみたいでね、マージ家は、それを指摘されたことは一度もない。まぁ、気味悪くて、誰もうちに関わりたくないからかもしれないが」
ハッ、と、自嘲気味に笑うケイランを、シャーランは悲しそうに見つめる。
そのシャーランの視線に気付いたケイランは、先ほど話していたときの表情とは打って変わり、目を細め、愛しいものを見る眼差しでシャーランを見つめる。
シャーランとケイランの見つめ合うその様に、マハラの気持ちはイライラが増していき、その荒ぶる気持ちを隠せない口調で話し出す。
「事実を知っているセントラル国王は、シャーランの行動を監視し続けているんだろう?そんな状況を知りながら、あんたはよく、彼女にああいう酷いことをできたな。それだけじゃない、彼女がシュトムで、彼女をこんな状況に陥いらせた人間の愚かな過ちの罰を知っている癖に、なぜ!彼女に執拗に触れて、あんなに酷いことをしてこれたんだ——!」
マハラは吐き捨てるように言うと、ケイランを睨みつけ、歯を食いしばる。
ケイランはマハラを横目で見ると、ふぅ…と小さく息を吐く。
「私が何をしようと、お前には関係ない。確かに、私はシャーランを愛しいと思うあまりに触れてはいたが、行為にまでは及んだことはない。それに、シャーランに恋心を抱いている君こそ、この事実を知れて良かったんじゃないか?神の子ともいえる彼女と平凡な君とじゃ、釣り合わないってことが、よく分かっただろう?」
「——こっっのやろうっ!!!」
マハラはケイランに突進しようと前のめりになったが、すぐ側にいたケイシがマハラの体に両腕を回し、力づくで制止する。
「やめとけ!挑発にのるな」
「くっ……そっ!!」
マハラは強く握りしめた拳で宙を殴り、ケイシの腕を振り解くと、気持ちを鎮めるためにケイランに背中を向ける。
ジャンはマハラを心配そうに見たあと、ケイランに向き直る。
「リハクさんが…この学園の医師だった方なんですが、シャーランと関わるならば王国に気をつけろ、と亡くなる前に言ったんです。その意味が今ようやく分かったのはいいのですが、正直これからどうしたらいいのか…」
ケイランは、気だるそうな視線でジャンを見る。
「気をつけようが、どうしようが、君らにはどうすることもできない。考えるだけ無駄だ。君らにできることは、気をつけることじゃない。シャーランと距離を置くことだ」
「距離を…おく……?」
「そうだ。シャーランが自分の出生を知った以上、いつ何をきっかけにシャーランが記憶を取り戻すか分からない。それだけじゃない。今日のガオガイのような、王国のシュトム族への関わりと思想に反対している奴ら、反王国派が、これからどんどんシャーランに記憶を取り戻そうと、行動に移していくだろう。君らは今日のようにその渦中にいても、何も異変に気づかず、ただ彼女のそばにいるだけだ。シャーランが嫌がる状況になっても、助けられずにな」
「え…いや、ガオガイ先生は…、僕らに授業とあの本を教えて下さっただけで、僕らを何かに巻き込んだ様子はなかったように思いますが…」
動揺するジャンの様子を見たケイランは、髪をかき揚げ、蔑むような目つきで、ジャンや他の皆を見る。
「はっ。そんな調子だから、距離を取れと言っているんだよ。いいか、ガオガイが武術の授業を必須にし、急に模擬戦を行ったのは、シュトム族が得意な武術をすることによって、シャーランの記憶が取り戻せればと、ガオガイら反王国派が考えたからだ。そんな背景すら知らない、想像できない君らに、シャーランを守ることなんて到底無理だ」
ケイランの言葉に、ジャンも他の皆も何も言い返せず、ただ心だけが焦り、ケイランを見ることしかできなかった。
ケイランはゆっくりとシャーランの方に顔を向けると、手を差し伸べる。
「シャーラン、おいで。この学園で、まだ勉強をしたいんだろう?やりたいことが全てできるよう、私が常に側にいて、心配ないようお前を守ってあげる。だから、私と来るんだ」
シャーランは悲しげな瞳でケイランを見つめたままじっと動かずにいたが、視線を下に向け、ゆっくりとケイランの方へ一歩足を踏み出す。
シャーランの近くにいたタクとスカイは、ハッとしてシャーランに向けて手を伸ばすが、シャーランの今の気持ちが分からず、彼女に触れられずに手を自分の体に引き戻す。
「シャーラン!」
ケイシに体を抑えられたマハラが、悲痛な顔で名前を呼ぶが、シャーランはマハラをチラッと見ただけで、何も言わずにケイランの前まで歩いて行ってしまった。
「いい子だ。よく分かっているね」
ケイランは、シャーランの顔に指を当て、輪郭をそっとなぞる。
「さぁ、行こう」
ケイランがシャーランの腰に手を回すと、シャーランと共に部屋のドアの方へ向かう。
「シャーランっ!!」
マハラが再度大きく名前を呼ぶが、シャーランは振り返ることなく、ケイランと共にドアから出て行き、扉がバタン、と大きな音を立てて閉まり、部屋にはマハラ、ケイシ、ジャン、ルイ、スカイ、タクのみが取り残された。
無表情で視線を足下に落とすシャーランのその瞳は、悲しそうでどこか寂しそうでもあった。
シャーランの様子を見ていたルイは、眉間に皺を寄せ両手をグッと握る。
「俺は、何にも分かってなかった。マージ家の本当の妹だった子とも、幼少の頃に会っていたのに。なぜ、気づかなかったんだ…。シャーランが幼い頃の記憶となんか違うと思っていた、あのモヤモヤした記憶の正体が、今頃になって分かるとは…」
ルイは顔をあげ、ケイランを見据える。
「シャーランは、アイスブルーの瞳だ。けれど、マージ家は、全員グリーンの瞳。その事実に、驚くことに俺だけでなく、他の誰もが気付いていない。」
ルイの言葉に、皆が、一斉にケイランの瞳を見る。
だが、ケイランは自分に集中する皆の視線にも表情を変えることはなく、冷めた視線でルイを見返す。
「そうだ、そもそもアイスブルーの瞳は、現在生きてる人間で、所持できる者はいない。これは始祖だけに許された、特別な瞳の色なんだよ。だが、シュトムのことを知る人間がほとんどいない今、瞳の色のことなんて気にしないみたいでね、マージ家は、それを指摘されたことは一度もない。まぁ、気味悪くて、誰もうちに関わりたくないからかもしれないが」
ハッ、と、自嘲気味に笑うケイランを、シャーランは悲しそうに見つめる。
そのシャーランの視線に気付いたケイランは、先ほど話していたときの表情とは打って変わり、目を細め、愛しいものを見る眼差しでシャーランを見つめる。
シャーランとケイランの見つめ合うその様に、マハラの気持ちはイライラが増していき、その荒ぶる気持ちを隠せない口調で話し出す。
「事実を知っているセントラル国王は、シャーランの行動を監視し続けているんだろう?そんな状況を知りながら、あんたはよく、彼女にああいう酷いことをできたな。それだけじゃない、彼女がシュトムで、彼女をこんな状況に陥いらせた人間の愚かな過ちの罰を知っている癖に、なぜ!彼女に執拗に触れて、あんなに酷いことをしてこれたんだ——!」
マハラは吐き捨てるように言うと、ケイランを睨みつけ、歯を食いしばる。
ケイランはマハラを横目で見ると、ふぅ…と小さく息を吐く。
「私が何をしようと、お前には関係ない。確かに、私はシャーランを愛しいと思うあまりに触れてはいたが、行為にまでは及んだことはない。それに、シャーランに恋心を抱いている君こそ、この事実を知れて良かったんじゃないか?神の子ともいえる彼女と平凡な君とじゃ、釣り合わないってことが、よく分かっただろう?」
「——こっっのやろうっ!!!」
マハラはケイランに突進しようと前のめりになったが、すぐ側にいたケイシがマハラの体に両腕を回し、力づくで制止する。
「やめとけ!挑発にのるな」
「くっ……そっ!!」
マハラは強く握りしめた拳で宙を殴り、ケイシの腕を振り解くと、気持ちを鎮めるためにケイランに背中を向ける。
ジャンはマハラを心配そうに見たあと、ケイランに向き直る。
「リハクさんが…この学園の医師だった方なんですが、シャーランと関わるならば王国に気をつけろ、と亡くなる前に言ったんです。その意味が今ようやく分かったのはいいのですが、正直これからどうしたらいいのか…」
ケイランは、気だるそうな視線でジャンを見る。
「気をつけようが、どうしようが、君らにはどうすることもできない。考えるだけ無駄だ。君らにできることは、気をつけることじゃない。シャーランと距離を置くことだ」
「距離を…おく……?」
「そうだ。シャーランが自分の出生を知った以上、いつ何をきっかけにシャーランが記憶を取り戻すか分からない。それだけじゃない。今日のガオガイのような、王国のシュトム族への関わりと思想に反対している奴ら、反王国派が、これからどんどんシャーランに記憶を取り戻そうと、行動に移していくだろう。君らは今日のようにその渦中にいても、何も異変に気づかず、ただ彼女のそばにいるだけだ。シャーランが嫌がる状況になっても、助けられずにな」
「え…いや、ガオガイ先生は…、僕らに授業とあの本を教えて下さっただけで、僕らを何かに巻き込んだ様子はなかったように思いますが…」
動揺するジャンの様子を見たケイランは、髪をかき揚げ、蔑むような目つきで、ジャンや他の皆を見る。
「はっ。そんな調子だから、距離を取れと言っているんだよ。いいか、ガオガイが武術の授業を必須にし、急に模擬戦を行ったのは、シュトム族が得意な武術をすることによって、シャーランの記憶が取り戻せればと、ガオガイら反王国派が考えたからだ。そんな背景すら知らない、想像できない君らに、シャーランを守ることなんて到底無理だ」
ケイランの言葉に、ジャンも他の皆も何も言い返せず、ただ心だけが焦り、ケイランを見ることしかできなかった。
ケイランはゆっくりとシャーランの方に顔を向けると、手を差し伸べる。
「シャーラン、おいで。この学園で、まだ勉強をしたいんだろう?やりたいことが全てできるよう、私が常に側にいて、心配ないようお前を守ってあげる。だから、私と来るんだ」
シャーランは悲しげな瞳でケイランを見つめたままじっと動かずにいたが、視線を下に向け、ゆっくりとケイランの方へ一歩足を踏み出す。
シャーランの近くにいたタクとスカイは、ハッとしてシャーランに向けて手を伸ばすが、シャーランの今の気持ちが分からず、彼女に触れられずに手を自分の体に引き戻す。
「シャーラン!」
ケイシに体を抑えられたマハラが、悲痛な顔で名前を呼ぶが、シャーランはマハラをチラッと見ただけで、何も言わずにケイランの前まで歩いて行ってしまった。
「いい子だ。よく分かっているね」
ケイランは、シャーランの顔に指を当て、輪郭をそっとなぞる。
「さぁ、行こう」
ケイランがシャーランの腰に手を回すと、シャーランと共に部屋のドアの方へ向かう。
「シャーランっ!!」
マハラが再度大きく名前を呼ぶが、シャーランは振り返ることなく、ケイランと共にドアから出て行き、扉がバタン、と大きな音を立てて閉まり、部屋にはマハラ、ケイシ、ジャン、ルイ、スカイ、タクのみが取り残された。
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