誰も助けてくれないのだから

めんだCoda

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第7話 シャーランの身分 ①

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「シャーランさん!!!」

 マハラは人垣を押しのけ、倒れているシャーランへ駆け寄り抱き寄せる。
 シャーランは意識なく、ぐったりとして動かない。

「どいた、どいたーー!」
 大声とともに、白い防護服のようなものを着た人が数人こちらに駆けてくる。
 学園の専属医療チームだ。

「彼女を床に寝かせて!そして君は離れて!」
 みなマスクで顔を覆っており、見えるのは目だけだ。声だけでは男女どちらなのか、判別はできない。

「なにしてるんだ!早く!!」
 マハラはシャーランを自分の腕の中から離したくなかったが、言われたとおりにシャーランをそっと床に寝かせると、医療チーム全員が素早く動きシャーランを囲む。

「大丈夫だ、息はしてるようだ」
「呼吸が乱れている、酸素ボンベくれる?」
「脈が弱ってるな、良くないな」
「この子に何かあったら一大事だぞ」
「なんとかしないと」
「とにかく運ぼう」

 ボソボソと話す医療チームに、マハラはシャーランの容態に不安になる。

「ここから運び出すので、みなさんどいてくださーい!ここ開けてー!道開けてー!」
 医療チームの1人が立ち上がり、何事かと首を伸ばし見ている人混みに対して、手を左右に振りながら道を作るよう身振り手振りで示す。

 どこからか用意された担架にシャーランは乗せられ、医療チームによって運び出されていく。

「待ってください、オレ彼女の知り合いです、付き添いしま・・」
「付き添いは今はいらない。君は来なくていい。」

 マハラの話途中に、被せるように断りをいれる治療チーム。ピシャリと言い切るその言い方は、マハラがついて行きたいと懇願こんがんしても受け入れられそうになく、シャーランが運ばれていく様を、ただ何もできず見送るしかなかった。

 ザワザワとしていた昼食会場も、徐々に人がはけていく。次の授業が始まる時間になり、授業がある人は移動し始めたが、マハラはその場から動く気がせず立ち尽くしたままだった。


 ◇◇◇


「マッハラちゃーーーん!さっきの授業をサボって、ここでなーにしてるのー?」
 学園庭の一面に広がる芝生の上に座るマハラを見つけ、スカイはからかいの笑みを浮かべマハラの顔を覗き込む。

 しかし、マハラはスカイを見ることはせず、暗い表情で前を向いたままだ。

「え、おい、どうした?」
 いつものマハラならすぐに戯じゃれてくるのに、元気のない様子に心配になるスカイ。マハラの隣に座り、マハラの肩に手を置く。

「なに、どうした?」
 ジャンが、ケイシとタクを連れて2人のところに来る。
スカイがマハラをチラッと見て、両手を上げ首を傾げる素振りを見せる。

「さてはー、シャーランさんと何かありましたー?マハラ、この前楽しそうでしたもんね~!」
 元気にタクが言う。タクは同じ学年だが1つ歳下で、いわゆる飛び級でマハラたちと同じ年に入園し授業を受けている。そのため、同学年だが先輩に話しかけるような言葉を使う癖がある。

「おまえ、空気読めよ、、」
 マハラの元気のない様子に心配したケイシが、眉をひそめタクをたしなめる。

「わかってますよ、マハラ元気ないの見ればわかるっす。でも黙ってたって分かんないじゃないですか。」
 タクは真剣な顔でケイシたちを見て、その後にマハラに視線を向ける。

 タクの顔はパーツパーツがハッキリしており、美人顔とみんなに言われている。その笑顔は、明るく魅力的で惹きつけられるが、一転いってん、真面目なときには相手の目を真っ直ぐ見て、自分の気持ちも隠さずそのまま伝える。裏表のない憎めない性格だ。

 そんなタクの性格をわかっているマハラは、意を決したように、ふう!と息を大きく出し、くるりとみんなの方に体を向け、先ほどの昼食会場でのシャーランのできごとを話し出す。


 ◇◇◇


「そうだったのか。そんなことがあったのか。」
 ジャンは考え込むように腕を組み、あぐらをかいて座っている。
 スカイ、ケイシ、タクも真剣な顔で下を向き頷うなずいている。

「で、今シャーランちゃんは今どこにいるの?」
 スカイが両手を組み人差し指をクルクル回しながら、マハラを見る。

「わからない。けど、自力で探してみる。」
 スクッと立ち上がるマハラを、スカイたち4人は見上げる。

「探す・・って、当てもないのに、難しいだろ。」
 ケイシが止めに入るのも無理ない、この学園は敷地内だけでなく園内、また園内から続いている寮部屋に至るまで、全てが広くこの学園全体を把握している人はいないのではないかと噂されている。

「彼女の寮部屋が分かればね・・ただ、彼女のこと知ってる子がいるかどうか・・。」
 ジャンはいつも1人で行動していたシャーランを思い出し、心が痛む。

「・・よし!ここはオレらの出番だな!ケイシ!ナンパいくぞ!!」
 スカイが立ち上がりケイシを誘うが、ケイシは座ったまま苦笑いする。

「無理でしょ。この学園どんだけ女子いると思ってんの。片っぱしから彼女のこと聞いても、わかる人どんだけいるんだって話だよ。」
 ケイシは自分の言葉で、シャーランには今まで友達でもいい、誰か側にいてくれたことがあったのだろうかと、シャーランのことを考えると寂しい気持ちになった。

 しばらくみなの様子をジッと見ていたタクが、ゆっくり立ち上がる。
「・・よし、じゃあ行きますか。」

 ジャン、スカイ、ケイシはポカンとした表情でタクを見る。

「知ってんの?居場所。」
 マハラは、真っ直ぐな目でタクを見る。
 マハラはこうして足踏みしている時間にも、シャーランに会いたい気持ちが強くなる。

 タクがみんなに歩きましょ、というジェスチャーを送り、先頭に立ち歩きながら話し出す。

「おれ、飛び級じゃないですか。飛び級だとやっぱり学園側から重宝されるっていうか、優秀扱いみたいな感じで。」
 歩きながら、マハラたちにニヤリと歯を見せて笑うタク。だが、反して声はいつもより小さく、周りに聞かれまいと辺りを警戒している。

「それで、まぁ・・そういう人たちには、特別な部屋が用意されるわけなんすよ。」

 学園内に入り、昼食会場を通り過ぎ様々な授業部屋も通りすぎ、寮部屋一帯にきたタク、マハラ、ジャン、スカイ、ケイシ。

「特別な部屋?よく分かんねぇけど、シャーランちゃんは飛び級じゃないだろ。」
 寮部屋から出てきた女の子たちに、キャースカイー!と名前を呼ばれ、笑顔で手を振るスカイ。
 ケイシも負けず劣らず周りに名前を呼ばれては、手を振っている。

「相変わらず人気っすね。」
 ハハと笑いながら、タクは続ける。歩みは先ほどより少し早い。

「この学園に途中入園するには莫大なお金がかかるんすよ。おれ、最初は少し遊んで、それでここに途中入園しよっかなって考えてて。バカっすよねー。まぁ、でも勉強勉強の世界でずっときてたんで少し一息入れたくて、・・ま、そんなおれの話はどーでもいいんすけど、途中入園は可能て言われたんすけど、その案内パンフレットにかかれてる費用見たら、普通に入園する10倍だったんすよ。それで、おれは諦めたんすけど。」

 寮部屋一帯の端まできたところで、キョロキョロと辺りを見回し歩みをゆっくりにするタク。寮部屋は広いが端の方には部屋がないため、ここまでくると人気ひとけがない。

「なんで、途中入園のシャーランさんて、相当なお金持ちっていうか、そういう家柄なんじゃないかなーて思って。わかんないっすよ、おれのただの勘なんで。ただ、もしそうなら、そういう家柄の子が普通の寮部屋に入れられるとは思えなくてですね。」

 寮部屋一帯を過ぎ、すぐそばにある階段を降りると、タクは壁にかかっている大きな貴婦人の絵の前で立ち止まる。

 タクが辺りを見回し人がいないのを確認すると、その絵の額縁裏に手を入れる。
 すると、静かに絵と額縁が半分に割れ茶色いドアが出てきた。

「なんだよこれ・・。」
 ケイシは、驚きながらも半笑いでドアを見る。

「ひとまず誰か来ると面倒なんで、入っちゃいましょ。」
 タクがドアを開け入り、マハラ、ジャン、スカイ、ケイシもそれに続き静かにドアを閉める。

 その先には綺麗に磨かれた廊下が続いており、片側には大きな窓が日の光を取り入れ、廊下を照らしている。その様は、寮部屋一帯とは比べものにならないほど綺麗だった。窓の反対側には、華美な装飾が施された大きなドアが幾つかある。しかし、ドアの間隔が離れているため、1部屋1部屋が広いであろうことを示していた。

「なんだここ・・」
 マハラはドアから天井までをぐるりと見渡し、初めてみる光景に目を丸くする。

「なるほどね、ここが特別な部屋ってわけだ。でもなんで?こんな隠し部屋みたいになってるんだ?」
 ジャンは、見ているものが信じられないといった風に首をかしげる。

「で、だ。ここに、シャーランさんがいるんじゃないかってことだ。タクの予想だと。」
 ジャンは、幾つかのドアを指差しタクに促す。

「そうっす。けど、これはおれの推測であって、ここにいるかどうかは分かんないっす。」
 タクは窓によりかかり腕を組み、みんなを見る。

「オレがやります・・!」
 タクの言葉遣いがうつったのか、マハラは手をあげ一番近くのドアを見る。

「オレが順々にノックしていく。」
 マハラがドアの前に立つ。

「これ、ここにシャーランさんいなくて、通報とかされたらおれたち終わりっすね。」
 タクが満面の笑みで笑う。

「いくよ。」
 マハラがゆっくりと腕を上げ、ドアに拳でノックをする。
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