集めましょ、個性の欠片たち

崎田毅駿

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まずいはきまずいはずなのに その3

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 それからまたしばらくして。
 部活でやったクッキー作りを家でも試してみたら、結構いい出来映えだった。翌日、平田君に食べてもらおうと学校に持って行ったの。好きな人にプレゼントっていうんじゃなく、料理の先生にチェックしてもらう気分。結局は褒められたい!ってこと。
 その日は部活がないためお昼休みに渡し、持って帰って食べてみて、評価を聞かせてほしいとお願いした。
 ここからあとは、高杉から聞いた話になる。同じ日の夜、珍しく高杉から電話があった。
「平田の奴、おまえにぞっこんなの?」
 いきなり、何を?
「な何でそう思うのよ」
「おまえの手作りクッキー、うまそうに食ってたもん」
「それのどこがおかしいの。調理部の腕前を疑う? だいたい、どうして知っているの、私があげたクッキーを、平田君が食べてるとこ」
「あ、すまん。腕を疑っちゃいないさ。最初から説明すると、クッキーを食べるのを見物したくて、今日の放課後、俺と細川ほそかわとであいつに声を掛けたんだ」
 細川と言えば高杉の悪友で、この二人が組むといたずらをよくする。
「平田君に何かしたのね? 何したの、言いなさいよ」
「だから説明するって。実は昼休みにクッキー渡すのを見掛けて、つい、意地悪をしてやりたくなった。あいつばっかりっていうジェラシーだと思ってくれていいぜ」
「格好付けてなんかいないで、早く全部話す!」
「おお、こわ。で、平田が席を離れた隙に、クッキーにソースを染み込ませたんだ」
「何でソースなんか持って来たのよ」
「今日の給食にあったろ」
 言われて思い出す。一人に一つ、小さな袋のソースが付いていた。
「あれの余りを使った。それで……下校の途中であいつを呼び止めて、何かもらっていたよな、見たいなあって頼んだ。見せてくれたから、ついでに食べて味の感想を聞かせろよと持ち掛けたら、食べたよ、あいつ。当然、味が変だと感じてすぐ吐き出すぞと期待してたのに、そうならなかった」
「本当に?」
「ああ。感想は美味しかった、だとさ。こっちは当てが外れて、愛の力はすげーなと冷やかすのが精一杯。しかも平田は何のこと?って顔しやがるもんだから、ばか負けして退散さ」
「何でそこで愛の力って話になるのよ」
「分からん? 平田はおまえのクッキーだからこそ、不味いと言わずに平気なふりして完食した。そうに決まってる。これを愛の力と言わずして」
「ああ、もう分かった。だまれ」
 私はこのあとたっぷり説教をしてやって、電話を終えた。
 それにしても……私が作った物だから我慢して食べきり、美味しいと嘘までついたの? 信じがたいけれど、二度もあると、そう思わざるを得ない……?
 よっぽど、すぐにでも電話し、平田君に話を聞こうかと思ったけれども、時間が遅いと気付いたせいもあって、次の日の学校に持ち越すことになった。

 ~ ~ ~

「――私のせいじゃないとは言え、ごめんなさいっ。せめて個包装にしていれば気付けたかもしれないのに」
 前日の高杉のいたずらを大まかに説明し、頭を下げた。場所は、人気ひとけのない裏庭の隅っこだ。
 面を上げると、平田君の表情が青ざめたように、私の目に映った。
「あの、私をかばうために不味いと言わないでいてくれたみたいで、ほんと、申し訳ないです。今度、ちゃんとしたのを作ってくるわ」
「……いや」
 拒まれた?
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