集めましょ、個性の欠片たち

崎田毅駿

文字の大きさ
6 / 9

罪な罰 その2

しおりを挟む
 携帯端末のカメラ機能で写真に撮れば早い、と分かっていても高杉がそうしないのは、かつて校内での使用禁止の規則に反したことをやったのがばれて、しばらく端末を取り上げられた過去があるからに違いない。
「諏訪馬流転がツイートしたって、朝の番組でやっていた。着替えながらメモったから、正確じゃないが、だいたい合っているはず。えー、『少し前に世間をお騒がせしましたが、あのことの罰が当たったのかな。反省して、しっかり治したあとは、本業に力を入れていきます』だってさ」
 どうだ?と見得を切る風な高杉。対する真鍋さんを筆頭とする女子達は、微妙な顔つきになった。「世間をお騒がせした」件への反応だろう。僕もあんまり詳しくないながら、大まかなことは知っている。
 それは、諏訪馬流転が同じ年頃の女優の家――マンションの一室に“お泊まり”したというもの。かつてドラマで共演した経験が何度かあり、その頃から仲よさげであると噂が立っていた。そんな二人がいい歳した大人になり、一晩泊まっていくなんてことをすれば、当然泊まるだけじゃ済まないだろうという流れになったんだけども、諏訪馬も女優も男女の関係である可能性を徹頭徹尾、強く否定した。演技の勉強をするためであり、苦手なところをお互い補い合っていたと言い通したのだから、ある意味あっぱれだと感じた。
 諏訪馬流転及びくだんの女優の人気ぶりや事務所の力もあってか、“お泊まり”騒動はいつの間にか鎮静化していた。まるでなかったかのように収まっていたのが、自らツイートしてぶり返すなんて。
「こんな、罰が当たったみたいな言い方をするからには、“お泊まり”の一件も嘘をついていた、後ろめたさっていうか罪悪感があったんじゃないか。ま、自業自得っていうか、因果応報っていうか」
「何よ高杉。石動紅緒いするぎべにおのファンだったんだ?」
 そうそう、女優は石動紅緒だった。
 それはさておき、高杉があまりに諏訪馬をくさすものだから、女子達に石動紅緒ファンと思われたようだ。まあ、それも無理ない。
「ちげーよ」
 高杉が短く否定したそのとき、僕の視界を影が横切った。それは真っ直ぐ、高杉に向かって行ったかと思うと、いきなり頬に平手打ちをした。あまりに突然な出来事に、何が何だか分からない。呆然とするあまり、高杉の頬の叩かれた、乾いた音があとになって聞こえて来たような気さえした。
 何せ、平手打ちをしたのはクラスで一番大人しい、女子の狭山樹さやまたつきさんだったのだから。
「な? おい、どういうこと?」
 叩かれた高杉は、痛みよりも困惑が遙かに上回っているようで、ほっぺたをさすることすらしていない。ただただ、狭山さんを見送るばかり。
 そう、叩いた当人は、すーっと陽炎のような存在感の希薄さで、教室の外に出て行こうとしている。逃げると言うよりか、こんなところにはいられない!って雰囲気が漂う。誰も止められない。高杉の声も届いていないみたいだ。
 廊下を足早に抜けると、彼女の姿は見えなくなった。見えなくなったところで、ようやくみんな、疑問を口々にし始める。
「え? 何だったの?」
「高杉君、何か悪いこと言ったっけ」
「そりゃあ、諏訪馬流転の悪口を……」
「でもさ、狭山さんてそこまで諏訪馬流転のこと、好きだ、ファンだって言ってた?」
「うーん、記憶にない」
 教室にいる誰もが、狭山さんが高杉の頬を叩いた理由が分からないでいた。
 いや、今はそれよりも、出て行った彼女を追い掛けるべきなのでは? だいたい、学校はこれから始まるってのに、狭山さんはどこへ行こうというんだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

刈り上げの教室

S.H.L
大衆娯楽
地方の中学校で国語を教える田辺陽菜は、生徒たちに校則を守らせる厳格な教師だった。しかし、家庭訪問先で思いがけず自分の髪を刈り上げられたことをきっかけに、彼女の人生は少しずつ変化していく。生徒たちの視線、冷やかし、そして自分自身の内面に生まれた奇妙な感覚――短くなった髪とともに、揺らぎ始める「教師」としての立場や、隠されていた新たな自分。 襟足の風を感じながら、彼女は次第に変わりゆく自分と向き合っていく。地方の閉鎖的な学校生活の中で起こる権威の逆転劇と、女性としての自己発見を描く異色の物語。 ――「切る」ことで変わるのは、髪だけではなかった。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...