集めましょ、個性の欠片たち

崎田毅駿

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罪な罰 その3

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 結局、狭山さんは戻ってこなかった。一時、騒ぎになったものの、学校が彼女の自宅に電話を入れたところ、ちょうど戻って来たとかで事なきを得た。今日は休むという。高杉をぶって、学校を飛び出したわけは分からないままだ。学校や担任の先生は理由を聞き出していたのかもしれないけれども、だとしても僕らには教えてくれなかった。
 狭山さんとは昔――小学生低学年の頃、家が近所だった。同じ会社の社員用アパートに入っていたんだけど、同じ棟だったせいもあり割と仲よく遊んでいた。僕の家の方が戸建てを買って、先にアパートを出た。以来、学齢が上がるとともに関係は希薄になっていった。それでも、狭山さんの性格はよく知っているつもりだ。
 だから、というのもおかしいけれど、狭山さんは理由もなく相手を叩くような人じゃない。それどころか、理由があったとしても、まず手を上げるようなキャラクターじゃないと思うんだけどな。
 ――なんてことを思って、もやもやしつつ、午前中を過ごす。昼休みになって、高杉が声を掛けてきた。
「クラスの男子で狭山さんと一番親しいの、おまえだよな」
 一緒に昼飯を摂るのは珍しくないのだけれど、今日は普段とは違う雰囲気がある。分かっていても、いきなりそんな風に切り出されると、気持ちがちょっと重たくなった。
「かもしれないけど、確証はないよ。もしかしたら、秘密の恋人がいるかも」
 声を潜めてそう応じると、高杉は意外にもまともに受け取ったようだ。目を丸くして、「冗談だろ?」とわざわざ確認してくる。
 僕は給食の“おかず小”をぱくついてから、相手に合わせて返事した。
「秘密の恋人がいるかどうかなんて知らないよ。秘密なんだから。それよりも、早く本題に入ったら」
「うむ。――何で叩かれたか分からん」
 高杉は困惑のせいか、あまり箸が進まないようだ。
「やっぱり、話はそれだよね。僕も分からない。今朝はびっくりした。逆に聞きたいくらいだ、高杉、狭山さんに何かしたんじゃないの?って」
「なんもねえ。てか、心当たりがあるくらいなら、ここまで悩んでねえってば」
 そう言って自身の顔を指さす、いや箸で示す高杉。本人は悩んでいる表情をしているつもりのようだけれども、僕には普段の彼とどこがどう違うのかさっぱりだ。
「意識しないまま、狭山さんに迷惑を掛けていたとか、悪口を言ったことになっていたとか、そういうのは?」
「前提条件に無理がないか、それ? 意識しないままってことは、悪気がないってことと同等だろ?」
「思い返して気付ける場合もあるんじゃないか」
「うーん。そう言われてもだな。今朝、狭山さんが消えてから、ずっと、それこそ授業中も考え込んでいたくらいだぞ。そんだけ思い返しても、特に思い当たる節がない」
「そんなに考えて分からないなら、多分無理だね。明日、直接聞いた方が早い」
「そうしたくないから、おまえに聞いたんだけど」
「いや、だから、仮に僕が男子の中で一番狭山さんと親しいとしても、狭山さんの考えが分かる訳じゃないからね」
「あ、それそれ。おまえのペースに乗せられて忘れていたが、代わりに聞いてきてくれないかと持ち掛けるつもりだったんだよ」
「聞いてきてくれってことは、今日中に僕が狭山さんの家に行って、事情を聞くって意味?」
「そうなる」
「自分で行きなよ」
「ばか言うな。それができないから頼んでいる」
「何でできないのさ。当事者である高杉こそ聞く権利があるだろうに」
「わけが分からなすぎる。こっちが悪いことしたと分かっているなら、謝罪に行く心構えで行けるけども、今みたいな状況は初めてだ。一方的に叩かれたのに、相手を詰問しようとは何故か思えないんだよな」
「ふうん」
「実際、俺の方が悪い、みたいな空気をひしひしと感じる。特に、女子からの視線が」
 それは何となく分かる。
 何人かの女子は、それこそ高杉を詰問したい気配すら漂わせている。実行に移さないのは、狭山さんの方が叩いたという事実があるせいだろう、多分。
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