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第2章 隠居に成功(?)した魔王様
魔王様は日付感覚がおかしい
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「これとこれを…こうして…。あ、間違えたこっちだったか…」
ボフンッ!
「だぁー!爆発しちまった……これ結構珍しい素材使ってたんだけどなぁ…。とりあえず今の行程をもう一度確認して……これで、よし!もう少し頑張れば突き詰められそうだけど…とりあえず、これでこの島の全ての新種を解明し終えたぞ!」
鬱蒼とした森の中、そのさらに奥にある洞窟をノアは住処にしていた。
この島で目覚めて以来、最低限の居住スペースを作り、早速研究を始めたノアはまさしく隠居生活を謳歌していた。
ほとんど日課となっていた魔術についての研究はもちろん、ノアの興味を特に引いたのはこの島にある固有種の存在だった。植物に鉱物はもちろん、生物も島独自の生態系で成り立ったものばかりで、魔族の領土でもお目にかかれなかったそれらは、未知なるものに熱中する癖のあるノアの好奇心を大いに刺激した。
その全てをついに解明できたのだとしばらくホクホク顔のノアだったが、ふと気づいた。
「あれ…そういえば今日って何日だったっけ…?」
ノアには日付感覚が壊滅的になかった。
500年も生きていれば仕方のないことなのかもしれないが、細かい日付は基本的に覚えていないし、それを気にしたこともなかった。
さらにここが誰にも邪魔されない研究に熱中できる環境であること、また研究しがいのあるものを見つけてしまったせいで、それ以外のことは今の今まで完全に頭から消え去っていたのだ。
ただでさえ元々1週間や1ヶ月のズレはたまにあって、その都度ルークを困らせていたというのに、こうなってしまえば推測すらも難しい。
つまり現在、自分が一度死んでからどれだけの時間が経ったかすらもわかっていない。
「ま、まぁ…経ってて1年くらいだろ大丈夫大丈夫!……多分…。それにもう十分魔力は回復してるし、今なら一度戻ってもしばらく不便はなさそうだな」
一息で城の自室へと戻ろうかと思うが、魔族の領土がどうなっているか分からない今、とりあえず城下町の方に飛ぶのが安全だろうと当たりをつける。
(ルーク、元気にしてるかな。許してくれるとは思わないけれど…まずは全部話そう。あの日何があったのか、どうして俺が生きているのか…。『なんで事前に相談してくれなかったんですか!』って怒られてもおかしくないな…)
ノアには今の自分がルークに会っていいのかわからなかった。
目の前で死ぬ様を見届けた誰かが、見た目が変わり、長い間姿を見せなかった後に突然目の前に現れて、本人だと自称してきたとしたら…信じられるだろうか。
(いいや、俺が弱気になってどうする…!勝手なことをしたのは俺なんだから、せめて後始末くらいつけないといけないだろ!一発二発殴られるくらいなら甘んじて受け入れる!)
魔族の領土まで飛べばノアがルークにあげたチョーカーの追跡もできる。あくまでもまだ手元に持っていてくれれば、の話だが。
胸に渦巻く不安を振り払い、少しでも早くルークの様子を見に行こうとノアは決意した。
・・・・・・・・・・
たどり着いたのは城下町の誰もいない路地裏。
ノアはとりあえず自らに気配を隠蔽する魔術をかける。会いにいくと決意したとはいえ、真正面から堂々と行って許されると思えるほどの自信はなかった。
(これでよし…と。それにしても…城下の雰囲気はあまり変わってないな…。てっきり魔王がいないうちが好機だと攻め入ってくると思っていたのに…。それとも何か考えがあって様子見をしているのか…)
すれ違う魔族には戦争や侵略を窺わせる悲壮の色などはない。むしろ町全体で言えば活気があって賑やかといった言葉の方が合うだろう。
「ねーねーおかーさん、あれ!まおーさま!」
町の広場に行くと小さな子供がその中心にある銅像を指差していた。何を隠そうその銅像のモデルはノアなのである。
本人としては早く撤去してほしいと何度も申し立てたのだが、ノアがいる間はついぞ撤去されなかったという過去を持つ代物である。
(これ…まだ残ってるのかよ…自分がモデルになった銅像なんて黒歴史にしかならないからさっさと壊せって何回も言ってたのに…)
「まおーさま、おしごとたいへんなの?」
「そうね…あなたが生まれる前に魔王様のお城に勇者が攻めてきたことがあってね、けれど魔王様はとってもお強いから勇者なんかには負けなかったのよ」
「すごーい!まおーさまつよーい!」
「今から5年も前のことだからね。その時に大きな怪我をしちゃったから、しばらくは魔王様のお顔が見れないんだって」
「まおーさま、いたいいたいなの…?」
「そうよー、だから少しでも魔王様のお怪我が良くなるようにお祈りしよっか」
「うん!」
(5年…?聞き間違いか…??いやそんなはずはない…。だって俺からすれば死んだのだってこの間の感覚で…。じゃあつまり、俺は今から5年も顔を見せなかった相手に『実は死んでませんでした』って理由を説明しにいかなきゃいけないのか…?)
この時初めてノアは、自分の日付感覚のなさを後悔することになった。
ボフンッ!
「だぁー!爆発しちまった……これ結構珍しい素材使ってたんだけどなぁ…。とりあえず今の行程をもう一度確認して……これで、よし!もう少し頑張れば突き詰められそうだけど…とりあえず、これでこの島の全ての新種を解明し終えたぞ!」
鬱蒼とした森の中、そのさらに奥にある洞窟をノアは住処にしていた。
この島で目覚めて以来、最低限の居住スペースを作り、早速研究を始めたノアはまさしく隠居生活を謳歌していた。
ほとんど日課となっていた魔術についての研究はもちろん、ノアの興味を特に引いたのはこの島にある固有種の存在だった。植物に鉱物はもちろん、生物も島独自の生態系で成り立ったものばかりで、魔族の領土でもお目にかかれなかったそれらは、未知なるものに熱中する癖のあるノアの好奇心を大いに刺激した。
その全てをついに解明できたのだとしばらくホクホク顔のノアだったが、ふと気づいた。
「あれ…そういえば今日って何日だったっけ…?」
ノアには日付感覚が壊滅的になかった。
500年も生きていれば仕方のないことなのかもしれないが、細かい日付は基本的に覚えていないし、それを気にしたこともなかった。
さらにここが誰にも邪魔されない研究に熱中できる環境であること、また研究しがいのあるものを見つけてしまったせいで、それ以外のことは今の今まで完全に頭から消え去っていたのだ。
ただでさえ元々1週間や1ヶ月のズレはたまにあって、その都度ルークを困らせていたというのに、こうなってしまえば推測すらも難しい。
つまり現在、自分が一度死んでからどれだけの時間が経ったかすらもわかっていない。
「ま、まぁ…経ってて1年くらいだろ大丈夫大丈夫!……多分…。それにもう十分魔力は回復してるし、今なら一度戻ってもしばらく不便はなさそうだな」
一息で城の自室へと戻ろうかと思うが、魔族の領土がどうなっているか分からない今、とりあえず城下町の方に飛ぶのが安全だろうと当たりをつける。
(ルーク、元気にしてるかな。許してくれるとは思わないけれど…まずは全部話そう。あの日何があったのか、どうして俺が生きているのか…。『なんで事前に相談してくれなかったんですか!』って怒られてもおかしくないな…)
ノアには今の自分がルークに会っていいのかわからなかった。
目の前で死ぬ様を見届けた誰かが、見た目が変わり、長い間姿を見せなかった後に突然目の前に現れて、本人だと自称してきたとしたら…信じられるだろうか。
(いいや、俺が弱気になってどうする…!勝手なことをしたのは俺なんだから、せめて後始末くらいつけないといけないだろ!一発二発殴られるくらいなら甘んじて受け入れる!)
魔族の領土まで飛べばノアがルークにあげたチョーカーの追跡もできる。あくまでもまだ手元に持っていてくれれば、の話だが。
胸に渦巻く不安を振り払い、少しでも早くルークの様子を見に行こうとノアは決意した。
・・・・・・・・・・
たどり着いたのは城下町の誰もいない路地裏。
ノアはとりあえず自らに気配を隠蔽する魔術をかける。会いにいくと決意したとはいえ、真正面から堂々と行って許されると思えるほどの自信はなかった。
(これでよし…と。それにしても…城下の雰囲気はあまり変わってないな…。てっきり魔王がいないうちが好機だと攻め入ってくると思っていたのに…。それとも何か考えがあって様子見をしているのか…)
すれ違う魔族には戦争や侵略を窺わせる悲壮の色などはない。むしろ町全体で言えば活気があって賑やかといった言葉の方が合うだろう。
「ねーねーおかーさん、あれ!まおーさま!」
町の広場に行くと小さな子供がその中心にある銅像を指差していた。何を隠そうその銅像のモデルはノアなのである。
本人としては早く撤去してほしいと何度も申し立てたのだが、ノアがいる間はついぞ撤去されなかったという過去を持つ代物である。
(これ…まだ残ってるのかよ…自分がモデルになった銅像なんて黒歴史にしかならないからさっさと壊せって何回も言ってたのに…)
「まおーさま、おしごとたいへんなの?」
「そうね…あなたが生まれる前に魔王様のお城に勇者が攻めてきたことがあってね、けれど魔王様はとってもお強いから勇者なんかには負けなかったのよ」
「すごーい!まおーさまつよーい!」
「今から5年も前のことだからね。その時に大きな怪我をしちゃったから、しばらくは魔王様のお顔が見れないんだって」
「まおーさま、いたいいたいなの…?」
「そうよー、だから少しでも魔王様のお怪我が良くなるようにお祈りしよっか」
「うん!」
(5年…?聞き間違いか…??いやそんなはずはない…。だって俺からすれば死んだのだってこの間の感覚で…。じゃあつまり、俺は今から5年も顔を見せなかった相手に『実は死んでませんでした』って理由を説明しにいかなきゃいけないのか…?)
この時初めてノアは、自分の日付感覚のなさを後悔することになった。
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