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一章 出逢い編

狂った世界。

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宮ノ内から逃げるようにバスに乗り込んだ愛華は、考えないようにしていてもあのニュースが頭から離れない。目的地に着いて欲しくないと思っている時に限って早く感じるものだ。到着したので仕方なく降り、重い足取りで花森学園に向かい歩き出す。

(多分大騒ぎだよな⋯)

昨日まで普通に学校に登校していた近藤茉莉奈が亡くなったのだ。仲良かった子もいるだろうし、たとえ問題があった生徒だったとしてもこういった死はとても受け入れられないだろう。

数々の怒涛の出来事でのモヤモヤと宮ノ内に対しての怒りで、頭を抱えながら歩いていると花森学園が見えて来た。見たところ表面上はあまり変わりはないが、校内に入ると生徒達の噂話が嫌でも耳に入ってくる。

「ニュース見た!?近藤茉莉奈が父親に殺されたってー!」

「あはは!マジでいい気味だよねぇ~!」

「イカれた家族じゃん!!」

耳を塞ぎたくなる様な悍しい発言がそこら中で飛び交う。

(何なの⋯悲しむ子もいないの!?)


怒りに震えながらも自分のクラスに入っていくと、騒がしかった教室が一瞬で静まり返りクラスメイトの視線が私に集まる。気まずさを感じながらも席に着くと、一人の女子生徒が恐る恐る近づいて来る。

「ねぇ、まさかあんたが何か関係してるの?」

「⋯どういう意味?」

「だって⋯ねぇ?茉莉奈、昨日あんたに怪我させてからすぐに退学になったし⋯父親もあんな事になったし⋯あんた何なの?実は大物~?」

何故か楽しそうに話すこの女子生徒は確か近藤茉莉奈と仲が良かったはずなのに、悲しそうな雰囲気は微塵もない。この状況を楽しんでさえいるだろう。

「⋯あのさ、あなた近藤さんと仲良かったよね?何がそんなに楽しいの?」

「はぁ!?あのさぁ~皆が好きで茉莉奈と一緒にいたと思う?茉莉奈を怒らすと面倒だから仲良くしてただけ!だよね?」

そう言って他のクラスメイトに同意を求める女子生徒。

「マジでウザかったもんな」

「親があの近藤グループだからって調子に乗ってなぁ!?」

「でも今じゃあ娘殺して犯罪者とかウケるよなぁ!!」

「バチが当たったんだよ!エグいいじめやってたもんなぁ!?」

楽しい話で盛り上がっている様な雰囲気のクラスメイトに怒りが込み上げてくる。

「人が死んでそんなに楽しいの!?これがもし自分だったらどう思う!?」

「はぁ?何よ良い子ぶって~⋯あんたさぁ⋯宮ノ内様とどんな関係なの?近藤グループを買収したのって宮ノ内グループ傘下の会社だし⋯」

「何の関係もない。昨日初めて会ったし、宮ノ内理事長の事なんて何も知らないよ!」

「いや、あの宮ノ内さんと話せるだけでもありえないのに、あの人が自らクラスに案内するなんてありえねーから!!あの人がどんなに凄いかお前分かってんのか!?」

男子生徒が信じられないとばかりに騒ぎ、周りも彼の意見に同意する様に頷く。

「宮ノ内⋯宮ノ内うるさいな!!そんなに知りたかったら本人に聞けばいいでしょう!?」

「俺なんかが聞ける訳ないだろ!!」

そうやって言い争っていると、チャイムが鳴り担任の水口が教室に入ってくる。

「おはようございます。皆、席に着いて下さい。」

水口は近藤茉莉奈の件に一切触れずに、クラスメイトも何事も無かったかのように席に着き始めた。

(こいつら皆狂ってる⋯)

「先生、気分が悪いので保健室で休んできても良いですか?」

この場に居たくなくて水口の返答の前に立ち上がる。

「高島さん、怪我は大丈夫ですか?」

「ああ、怪我は大丈夫です。⋯もう行って良いですか?」

「あ⋯はい。一人で大丈夫ですか?」

「はい」

愛華は皆の顔を見ずに、教室を出ていった。だが出てきたのは良いが、昨日の今日であの保健室には行きたくなくて気付けば屋上まで来ていた。

(はぁ⋯こんな事になるなら転校なんてしなければ良かった⋯)

春から夏になろうとしてるこの時期のジメジメした嫌な暑さが今の愛華には相当なダメージで、気分が更に悪くなる。なので日陰に避難してそこでただ何も考えないで空を眺めていた。

「ここに居たんですか、探しましたよ」

今、一番聞きたくない声がしたので屋上入口を見ると、そこには宮ノ内が嫌味なぐらい優雅に立っていた。

「⋯」

「気分が悪いと聞きました。大丈夫ですか?」

心配そうにこちらに近付いてきて、当たり前の様に自分の手を愛華の頬に当てる。あまりに自然だったので一瞬思考が停止したが、急いでその手を払い退ける。

「⋯。誰のせいだと思ってんの?」

「愛華、まだ怒っているんですか?」

「愛華って呼ばないで!もう私に関わらないでよ⋯あんた⋯凄い人なんでしょ?だったらその世界で生きて?お願いだから私に関わらないで下さい!この学校にもいたくないし、あんたやあのイかれた金持ち達の顔も見たくないの!!」

吐き出す様に叫ぶ愛華を見ている宮ノ内の顔はどこか恍惚としている。

「私にこんなに感情を露わにしてくれるなんて⋯嬉しいよ。でも、愛華に関わらないっていうのはあり得ないよ。イカれていると思われても⋯狂っていると思われても絶対に離れられないし、ずっと側にいる」

真剣な顔で恐ろしい宣言をする宮ノ内。その綺麗な瞳に吸い込まれそうになるが、寸前で思いとどまり逃げるように立ち去ろとした時だった。腕を掴まれて引き寄せられた愛華は宮ノ内に抱きしめられていた。








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