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008 悪役キャラは口説く

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 俺が前世を思い出して二年が経った。

 現在、俺は七歳。
 地球で言えば小学一年生になる。
 この世界では十三歳になる年に通う学校があるだけなので、小学一年生とかないらしいけど。それまではご自宅で家庭教師を雇うなどして勉学に励むのが普通のようだ。

 この二年であったことをふと思い出す。
 まず、公爵領で大規模な鉱山が見つかったことで財政が非常に潤った。元々農耕で儲けていたのだが、最近は凶作続きで助かったと父がよく言っている。

 そしてこれは俺自身の話なのだが、案の定セックスのし過ぎでメイドが多くが妊娠してしまった。
 本人たちの希望によりマーリンが魔法で受精卵を除去する、ということが年に四、五回はあったのだ。

 前世では子供を下ろすと次に妊娠出来なくなる危険があるって聞いたことあるけど、魔法はそんなこと無いらしい。
 マーリンが毎度顔を赤くしながら作業をするため、中々見物だった。

 その時警告されたのは、ある程度成長している場合は取り除けないとのこと。それだけは気を付けろと言われた。

 自分だってセックスしたいとマーリンの顔に書いてあったが、あちらから手を引いてくれと二年前に言われたので出さない。
 だが、そろそろマーリンを堕とすための仕込みが終わりそうなので、近いうちに本格的に堕としに行こうと思う。

 さて。
 暇があればセックス出来る平和な日常を謳歌していたある日、俺は父に呼び出された。

「今日から数日ほどムーンライト領南部にあるバルザ村へ視察へ行くんだが、エルゼも来るかい? エルゼも七歳だ。今から領主としての腕を磨いておいた方が良いと思うのだけど……」
「行きますっ!!」

 俺はその申し出に二つ返事で了承した。
 普段ならセックス三昧の日常を過ごせる屋敷から出るなんて御免なのだが、行き先がバルザ村なら話は別だ。

 何故なら、バルザ村は『勇者と五人の聖剣乙女』の主人公が育つ村だからである。
 七年後に起こる反乱軍の弾圧に巻き込まれて滅ぼされてしまった村だ。そこでは当然ながら主人公が生活している。接触してどんな様子か見ておきたいというわけだ。

 まぁ、目的は主人公だけじゃない。
 主人公の母親だ。名前すらゲームに登場しないキャラではあるが、主人公やその幼馴染みキャラによれば絶世の美女だったらしい。

 ついでに言えば、母親が殺された後で主人公や幼馴染みキャラを育てるシスターがバルザ村の教会で過ごしている。
 あわよくば主人公の実母と義母をまとめていただけるってわけ。実に楽しみだ。






 そうしてやって来たバルザ村。

 移動中の馬車から眺めたバルザ村は大きな畑が広がっており、農民たちが汗水垂らして一生懸命に働いていた。
 ただ少し一生懸命過ぎるというか、彼らを見ていると倒れないか心配になってくる。凶作が続いていた影響で、それを必死に取り戻そうとしているのだと父が教えてくれた。

「大変そうですね」
「ああ。彼らの頑張りあってこそ、私たちが食事を出来るということを忘れてはいけないよ?」
「分かってます。その対価として領主は彼らをモンスターや盗賊から守る義務がある、ですよね?」
「はっはっはっ、エルゼも次期領主としての自覚が芽生えたようだね。七歳でそれが分かっているなら大丈夫だろう」

 俺は前世で働いたことはない。
 調教したメス共が貢いでくれた金で生活ていたからだ。しかし、それを当然と思ったことはない。彼女たちから金をもらう代わりにチンポを恵んでやった。
 これは領主の心構えに通ずる。
 え? お前はただ女とヤりたかっただけだろって? はっはっはっ、何のことだか。

「そろそろバルザ村の村長宅に到着する。お前は迷子にならないよう気を付けるんだぞ」
「はい」

 精神年齢がおっさんな俺が迷子になることは絶対にないけど。
 馬車から降りると村長と思われる初老の男性が笑顔で出迎えてくれた。

「お久しぶりです、領主様」
「ええ、本当に。これから数日世話になる」
「はい。そちらの少年は……」
「ああ、会うのは初めてでしたね。息子のエルゼだ。今年で七歳になります」
「ほうほう、儂の孫と同じ年齢ですな」

 むむ?
 バルザ村で俺と同じ年齢なのは主人公と幼馴染キャラの二人だけだ。そして主人公は別に村長の孫ではない。となると――

「ほら隠れてないで出ておいで、メイル」

 そう言うと、村長の陰から一人の女の子がひょっこりと顔を出した。
 白金色の髪をショートカットにした少女がヴァイオレットの瞳で俺と父を交互に見つめている。

――おお!! メイルだ!!

 『勇者と五人の聖剣乙女』で一番簡単に攻略出来るヒロインだ。
 これといったフラグも必要ではなく、最初期から攻略可能な彼女は、主人公と同じ村で育ち、そして復讐を望む主人公を常に隣で見守る重要なキャラでもある。

 だがゲームのメイルと言えば、明るく溌剌とした美少女だったはず。どうしたんだ?

「ははは、普段はこんなに静かじゃないのですが、緊張しているようです。ささ、どうぞこちらへ」

 村長の家へと案内される。
 しばらくここで寝泊まりさせてもらうらしい。あのメイルと同じ屋根の下で過ごすなんて、理性が保てるか分からないな。

 最悪の場合、睡眠魔法で全員眠らせて眠姦しようか。
 俺の魔法は多岐に渡り、熊を一撃で仕留めるような魔法から女を強制的に発情させる魔法などあらゆるものが使える。
 その気になれば村人を全員眠らせて人妻を一人ずついただけるかも知れない。

「エルゼ、私は今から村長の案内で視察に向かうが、どうする?」
「え? どうするって……」

 元からそういう名目で付いてきたのでは?
 そう言おうとしたら、父の視線がメイルに向いていた。メイルを見れば、俺へちらちらと視線を向けている。

 あー、遊びたかったら遊んでも良いぞってことかな? でも公爵の息子と平民の娘が一緒に遊ぶってどうなんだろ?
 うちの父親はそこら辺がフランクだってのは知ってるけど……。

 父がこっそり耳打ちしてくる。

「一応言っておくと、彼女は平民ではないよ」
「え?」
「村を預かる村長は国王から騎士爵を賜った人物だからね。あの村長の娘は伯爵家の三男に見初められて結婚している。立派な貴族の血筋だ。子爵家なら公爵家ともギリギリ婚約出来るよ」
「父上、七歳の子供に婚約なんて早いと思います」
「まさか。私とカレンが婚約したのは七歳の時だったよ?」

 貴族の婚約って早いのな。
 しかし、まさかメイルが貴族の血筋だなんて知らなかった。ゲームの製作者のみが知る裏設定というやつだろうか。

 だがメイルと遊ぶのは悪くない。
 俺は彼女に向けて微笑を浮かべ、優しい声音で話しかける。

「メイル嬢、良ければ俺と遊んでくれませんか?」
「!」

 メイルがビクッと震えた。
 そして村長に上目遣いで良いのかと様子を窺い、村長は「次期公爵の誘いは断れないですねぇ」と心底楽しそうに笑っている。

「うんっ」
「では何をして遊びます? あまり同年代の友人が居ないもので、出来ればご教授いただければ」
「じゃあ、えっと、かけっこ!!」

 大人しそうな割に運動が好きなのか。
 そこら辺はゲームのメイルと全く同じなんだな。感無量。

 その後、父は村長と共に村の視察へ。
 俺の護衛として数名の兵士を伴わせてくれたのだが、俺からしてみれば正直不要だ。何故なら俺は七歳にしてドチャクソ強いから。

 それが分かっているからこそ、護衛の兵士たちは乾いた笑みを浮かべている。
 すまんな、仕事を奪って。

「それでは俺たちも行きましょう」
「うんっ」

 こうして俺はヒロインと遊びに出掛けた。

 ちなみにかけっこは俺の圧勝である。
 中身が大人なのに本気を出すなんてズルいだって? はっはっはっ、大人とはセコい生き物なのだよ。








「はぁっ、はぁっ、エルゼ、走るの速過ぎるよぉっ!!」
「鍛えてますからね」
「むぅ~っ、私だって毎日走ってるのにっ」

 村の一角にある丘の上で、俺とメイルは大の字になっていた。
 軽いランニング程度だったが、それでも護衛の兵士たちがバテている横で軽く息が上がっているだけのメイルも十分凄いと思う。

 しかし、一緒に走っただけで随分と打ち解けたな。上手く口説けばレイプじゃなくてもヤれそうだぞ。
 幸い、兵士たちはへばっていてこちらを見ていない。こっそりエロいことも出来る。

「メイルは可愛いね」
「……へ?」

 俺の言葉にメイルが間抜けな声を漏らす。

「な、なにを……」
「走ってる時のメイル、凄く楽しそうで可愛かった」
「か、か、かか可愛いなんて……わ、私、村じゃ男っぽいって馬鹿にされてるのに……」

 あっ、何となく最初にメイルが大人しかった理由が分かったかも。
 ゲームでの彼女はたしかに男勝りな部分もあるため、少なからずネタにされている。だがいざ乙女の一面を見せようとするとどうして良いか分からず、似たような態度になることがゲームの描写でもあった。

 しかし、それはある程度主人公への好感度が上がっている場合の話。
 会ったこともない俺に対してそんな風に応対しようとするのはちょっと違和感がある。

 ……ちょっと探るか。

「最初の物静かなメイルも可愛かったけど、今みたいに元気で明るいメイルの方が良いと思います」
「っ!! や、やめてよぉ、恥ずかしいから!! し、仕方ないじゃん、お母さんからお父さんとの馴れ初めを毎日のように聞かされてたんだもん……」

 あー、騎士の娘が子爵家の三男に見初められって話か。
 なるほどなるほど。
 メイルは母親の惚気話で少なからず高位の貴族に対する思いがあったと。

 あれだ、女の子が王子様に憧れるのと同じ原理か。納得。ちょっとからかうか。

 俺は地面に寝転がって空を仰ぐメイルを覗き込んだ。あと数センチ動いただけでキス出来そうな距離である。

「なら俺はメイル嬢のお眼鏡にかないましたか?」
「はぇ? ち、近いよ……」
「ご不快でしたらすみません。でも俺はもっと近付きたいです」

 そう言って俺が微笑むと、メイルは顔を真っ赤にした。

 メイルは何というか、押しに弱いキャラなのだ。主人公と関係を持つのも、主人公が無理に迫ったからでもある。
 ただし、一度快楽を覚え込まされたらその相手に心を許してしまう忠犬型の女。一発ヤれたら浮気の心配もないメスなので、出来ればこの視察の間で堕としておきたい。

 そのための一手がこれだ。

「キス、しますね」
「へぁ? ま、待っ――はむっ♡」

 舌は絡ませない。
 あえて唇と唇を重ねるだけ。
 しかし、それでもメイルにとっては予想外だったらしく、同時にワナワナと身体を震わせた。怒りは見られず、混乱している様子。

「大丈夫ですか?」
「え? あ、うんっ!! ぜ、ぜぜん全然大丈夫っ!! な、なんか走ったせいか熱いねー!!」

 動揺隠せてないじゃん。
 まぁ、俺は優しいので深くは突っ込まないことにする。

 イケるぞ。
 この調子で褒めて褒めて褒めまくってやれば簡単に堕とせそうだ。そう思っていたのだが……。

「あー!! メイル、お前こんなところに居やがったのか!!」

 ここで思わぬ邪魔が入った。
 俺が一方的によく知っているガキンチョがやって来たのだ。

 そう――主人公である。



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