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014 悪役キャラは王女と婚約する

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 翌日。
 俺は応接間でサンライト王国第二王女アイリスと向かい合っていた。

「初めまして。エルゼ・フォン・ムーンライトです」
「アイリス・フォン・サンライトです」

 正直に言うと、俺は目を奪われた。
 ゲームで彼女の外見は知っていたつもりだが、実際に見るとまるで違う。
 ふわふわとした桃色の髪と翡翠色の瞳、純粋無垢な天使を思わせる可愛らしい少女だった。まだ俺と同じ七歳だが、身にまとう雰囲気と無警戒な笑顔でかなり幼く見える。

――好みかも。

 俺は女をエロいと思うことは多々ある。
 身体と顔が良ければ、可愛い系だろうが美人系だろうがあまり気にしない。しかし、目の前の少女はどうにも気になってしまう。

 何だか、穢してはならない神聖な雰囲気というか……。だからこそ、余計に俺の色に染めてしまいたくなる。

「じゃ、エルゼ。後は頑張るんだよ!!」

 そう言って父は退室し、部屋にアイリスと二人で残される。
 さてどうしたものか。
 何か話題が無いか考えていると、アイリスの方から話しかけてきた。

「な、何だか緊張してしまいますね……」

 強張った笑顔でそんなことを言う。ここは適当に同調しておくか。

「そうですね」
「あの、えっと……」

 話題が尽きたらしい。
 まぁ、七歳にも使える話題なんてあんまりないよな。

 仕方あるまい。
 ここは合コンで女の子全員をお持ち帰りしてセフレにしてやった俺の腕の見せ所だ。

「アイリス様のご趣味はなんでしょう?」
「え? あ、その……ど、読書が好きですっ!!」
「読書ですか。俺も好きですよ。ちなみにアイリス様はどのような本を?」
「えぇと、その……ロマンス……小説を……少々……」

 へー、それは以外かも。
 ロマンス小説は貴族の間じゃエロ本みたいな扱い受けている。
 俺の質問に答えないのは悪いからと正直に答えたのだろうけど、これは悪いことをしてしまったな。

 でも……。

「あぅ……そ、そのぉ……」

 先程のぽわぽわした雰囲気も良かったが、顔を真っ赤にして視線が泳ぐ姿をちょっと可愛いと思ってしまった。
 ルシアナが淹れた紅茶をこくこくと飲み干していくアイリス。

 よほど喉が渇いてしまったらしい。

「ロマンス小説ですか。俺も読みますよ」
「へ?」
「最近は『貴方と私』というロマンス小説が気に入っています。平民と貴族の恋愛模様を描いた面白い作品です」
「わ、私もそれ読んでますっ」
「おや? 偶然ですね」

 合コンに必要なのは知識だ。
 出来るだけ相手の話題に乗っかり、如何に自分という存在を覚え込ませるか。それが必勝法なのだよ。

 それからアイリスとの会話が弾んだ。
 最初はよそよそしい感じだったが、今では話したいことが多過ぎて止まない感じ。

「はっ、えっと……も、申し訳ありません、私ばかりお話してしまって……」
「お気になさらずに。夢中になっているアイリス様が可愛らしくて、私もついつい聞き入っていましたので」
「か、可愛いだなんて……わ、私なんかフレイア姉様に比べたら……」
「……ふむ」

 そういえば、アイリスは姉にして第一王女であるフレイアに劣等感を抱いている。
 学園での成績を始め、周囲の評価との違いに悩んでいた。それでいてフレイアの事が大好きだから、嫌いになり切れない……。

 ゲームではそんなアイリスを主人公がたったの一言で救い、恋仲になってしまうのだ。

 たしか……。
 ふむ、やってみるか。

「正直、くだらないと思います」
「へ?」
「自分よりも姉の方が優れている。そんなこと、この場では関係ありません」
「それは……でも、エルゼ様だって姉様を見れば同じように思うはずです。私なんか、お姉様の足元にも及ばない、と」
「……」

 少しゲームでのやり取りをアレンジしてみたが、概ね似たような返答だな。
 あともう一押しでアイリスは堕とせる。
 俺は立ち上がって、アイリスの隣に座った。そして彼女の腰に腕を回し、真っ直ぐに目を見つめながら囁く。

「俺の目を見てください、アイリス様」
「はぇ? あぅ、えと……」
「俺の目には誰が映ってますか?」
「え? わ、私……です……」
「はい。今、俺が見ているのはアイリス様です。貴方のお姉様ではありません。綺麗な髪と瞳の可愛らしいお姫様です」
「か、可愛らしいだなんて……」

 俺はアイリスを抱き寄せる。
 その距離、ほとんどゼロ。あと少しで唇が触れそうな距離だ。

「ひにゃ!? な、何をなさるのです!?」
「ふふ、何をすると思いますか?」

 アイリスに微笑みかけると、彼女は怯えながらも瞳を閉じた。
 俺はアイリスの唇を奪う。
 震えつつも俺のキスを受け入れたアイリスを優しく抱きながら舌を絡める。

 子供にはまだ早いキスだが、アイリスは戸惑いつつも俺に応えて舌を絡めてきた。

「ちゅ♡ や、やめ♡ れろっ♡」
「嫌ならもっと必死に抵抗して下さい。もっとして欲しいようにしか見えませんよ」

 しばらくアイリスとのキスを堪能した俺は数分経ってから彼女を解放した。

「はぁ♡ はぁ♡ エルゼ様……♡」
「やはりアイリス様はとても可愛らしいですね。もっと気持ちいいことをしてあげたいところですが……婚約してもいないのに王女の初めてを奪うのは流石にアウトですから、ここまでにしておきましょうか」

 俺はアイリスの頭を優しく撫でる。

「俺はアイリス様との婚約、真剣に考えているんです。もしもアイリス様も同じ気持ちなら……沢山してあげますからね?」
「――♡♡♡♡」
「はは。もう表情を見れば答えは明らかですが……で? どうしますか? 俺と婚約してイイコトしませんか?」

 アイリスが潤んだ瞳で俺を見上げる。
 たかがキスでここまで堕ちるなんて、流石はエロゲのヒロインとしか言い様が無い。

 くっくっくっ。
 王女を手に入れたのは大きいかもな。
 精神も肉体も完全に調教したアイリスを次の女王に据えれば、国そのものが俺のものになる。じっくり開発してやろう。

「――す♡」
「おや、聞こえませんよ?」
「エルゼ様と、婚約します♡」

 俺は笑いを堪えながら、アイリスを抱き締める。

「なら早速気持ちいいことを教えてあげます」
「は、はい……♡」
「まずは下準備からです。心を込めて俺のことを〝ご主人様〟と呼んで下さい」
「はぇ? ご、ご主人様、ですか?」
「はい。アイリス様のような女性は男性に支配されることに喜びを覚えるんです」

 これはゲームでもそうだった。
 アイリスは心優しい人物だが、その反面で救いようがないレベルのマゾヒストである。
 主人公との親密度が上がると自分から主人公のことをご主人様と呼び、敬い慕うようになる。

 それを利用してやれば、このメスを取り返しが付かないレベルの変態に出来る。

「ご、ご主人様……っ♡♡♡♡」
「どうですか? 胸がドキッとしたしでしょう? それこそアイリス様が支配されることに喜びを感じている証拠なのです」
「し、支配されることに、喜びを……」

 まぁ、それだけではないのだが。
 どんなマゾヒストでも初対面の男をご主人様と呼んで興奮するわけがない。では何故アイリスがこんなスケベになっているのかと言うと……。

――紅茶に媚薬が入ってたんだよ、くくく。

 アイリスが飲んだルシアナが淹れた紅茶。
 あまり気乗りしなかったが、父から母ことカレンを寝取るために用意しておいた媚薬を盛ったのである。

 お陰で母を寝取る計画が先延ばしになったが、相手がお姫様なら問題ない。

 かなり強めの媚薬で、薬が効いている間は無条件に相手の命令を聞いてしまう。正常な判断力を根こそぎ奪う代物なのだ。
 なお、我が家のメイド達で実験済みなので安全性は確保されている。

 薬が効いている間のみ頭がパーになって俺の事が大好きになるだけである。

「ご主人様♡ ご主人様♡ ご主人様♡」
「はは、まだキスしかしていないのにここまで堕ちるなんて……。アイリスはスケベなお姫様ですね」

 それにしても、立場が上の女を調教するのは楽しいな。
 前世でも金持ちのお嬢様にマゾ調教して全裸で公園を散歩させたのは懐かしい思い出である。

 そうだ。
 アイリスに婚約祝いで首輪をプレゼントしよう。犬用の首輪に繋いだアイリスをリードで引っ張りながら庭を散歩させるか。

「じゃあ可愛いアイリスに命令するよ」
「は、はい♡ ご主人様♡ 何でも命令して下さい♡」
「アイリスはこれから一生俺の性奴隷ペットだ。二人きりの時は俺をご主人様と呼び慕い、服従するスケベなマゾ娘……。王女でも何でもない、ただのメス犬だ」
「メス……犬ぅ♡♡♡♡ はぃ♡ アイリスはたった今からご主人様のスケベなメス犬ですぅ♡」

 流石に時間が不味いので、手早くアイリスの頭に刷り込みをして魔法で解毒。
 媚薬の効果が抜けてもアイリスは俺に熱い視線を向けてくる。刷り込みは完璧で、すっかり俺のことを大好きなメスになっていた。

 数日後、正式に俺とアイリスの婚約が決まり、しばらくしてから王都で婚約パーティーを開くそうな。

 普通なら十歳で社交界に出るものだが、俺は王族と結婚するのだ。
 社交界デビューには早いが、三ヶ月後に王都で開かれる国王主催の婚約パーティーに主役として出席することになった。

「それにしてもあんな短い時間でアイリス王女が即決するくらい仲良くなるなんて……エルゼ、何をしたんだい?」
「内緒です」

 父にそんなことを聞かれたが、適当に誤魔化しておいた。
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