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第四章

二十四話 【走れ走れ走れ!】

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人間関係が希薄だった惣一郎は、仕事から帰ればひとり、休みの日もひとりと職場でも最低限な人間関係に、本人は「気楽で良いよ」っと答えていた。

今、そんな惣一郎がこの異世界で共に旅をする仲間を思い、必死にひたすら西へと向かっていた。

息を切らし、徐々にスピードが落ち、踏むペダルが重くなり、ついに止まると道に倒れる惣一郎。

視線の先が小さく暗くなる。

意識を無くす直前だった……

このままここで意識をなくせば、この世界では死に繋がる。

惣一郎にもそれはわかっていた……







焚火の上でコトコト湯が沸騰し、鍋の蓋が鳴っている音で意識を戻す惣一郎。

「起きたか?」

………

「驚いたよ、こんな所で倒れてるなんて」

暗い林の中、木の根元で麻布の上で横になっていた惣一郎は、状況を把握する為に、キョロキョロと周りを見渡していた。

冒険者風の男達が3人、火を囲んでいた。

「よっぽど急いでいた様子だが、倒れちゃ意味がないぞ」

昼間、道で追い越した冒険者だった。

「それにしても、あの銀の乗り物はなんなんだ、あんな精巧な作りの物、見たこともない」

「車輪が前後で、なんで倒れないんだ?」

冒険者達は惣一郎より、自転車に興味がある様だった。

急がないと!っと、惣一郎は起きようとするが、体が言うことを聞かない。

惣一郎は冒険者達に「ありがとう……」と言うと、また意識を失う様に眠りにつく。




翌朝、目を覚ました惣一郎は冒険者達に礼を言い、国境まで急がないといけない事を伝える。

すると冒険者は、

「ここから国境まで4日はかかるぞ! また倒れたいのか?」

と声を荒げる冒険者。

だが、惣一郎にも急ぐ理由がある。

「大丈夫だ、次は気をつける」

と助けてくれたお礼に、セルネルの街で買った酒を出し渡す。

「余程の事情の様だな。俺は[深緑のセルビア]の[グレン]だ、またどこかで会おう」

「[コーニー]と[セブ]だ。おっ死ぬなよ!」

深々と頭を下げて惣一郎はまた、自転車で先を急ぐ。

一晩寝たので多少回復はしているが、まだ足は重いし、太腿を筋肉痛が襲う。

今度は倒れる前にテントで寝よう……

四日か…… 自転車なら二日ってとこかな!




林の中を自転車を漕ぐ…… まだ行ける。

すると急に横から、ベルフの爪が惣一郎を襲う!

だがベルフの爪撃は、自転車のスピードに遅れ空を切る。

そのまま二匹のベルフが惣一郎を追いかける。

不味いどうするか!

ベンゾウもスワロもいない! ひとりでやれるか……

必死に自転車を漕ぐが、ベルフとの距離は開かない。

後ろから追いつくベルフが二匹同時に飛びかかる!

惣一郎は急ブレーキでその下に潜ると、自転車を降りスタンガンを構える。

惣一郎を飛び越えてしまった左の一匹が、反転し右手を大きく振りかぶる!

惣一郎は、左でガードし懐に入り込み、電撃を見舞う!

先ずは一匹!

警戒した残りのベルフは、両手を地面につき牙を剥き出して威嚇する!

惣一郎はテーザーガンを出し撃つと、銃口から2本のワイヤーがベルフに刺さり、バリバリバリ!っと煙を上げる。

買っといて良かった…… 連発出来ないが。

ベルフを回収すると緊張からか疲れがぶり返したので、林の中でテントを出し寝ることにする。

多めのご飯を胃に押し込み、栄養ドリンクを飲んで装備を整え寝る。

いま出来る事を全力でやってる様だった。




今朝は体調も回復し、テントを収納。

昨夜新たに買った、たまたま見つけた迷彩柄のオフロード自転車を出し、迷彩柄のポンチョを着て走り出す。

人に見られる事も、襲われる事も、コレで少しは減るだろう。

「待ってろ、みんな!」





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