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第五章

一話 【いじるベンゾウ!】

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スワロと別れてから3日、クロの荷車で東へ進んでいた惣一郎とベンゾウ。

途中[トークンの村]を通ったが、そこも前線基地として、騎士が数人いるだけであった。

マイズ方面から来たふたりに驚いていたが、厄災が死んだ原因はわからないと、死骸を一つ出し見せると慌てて他の基地へ確認に行ったので、そのまま通り抜けて来たのだった。

今は東へ[ギゾの町]を目指している。

「振られたご主人様、町が見えて来ました」

3日経っても、ケラケラいじってくるベンゾウに「うるせ!」っと、ニコニコ返す惣一郎であった。

スワロは家族や村の復讐に取り憑かれていたが、厄災を倒すと、すっかり憑き物も取れ、穏やかな顔になっていた。

父親の後を継ぎ、族長として各地に散った仲間の帰る場所を守ると言って、マイズの村に残る選択をした。

冒険者も引退し戦いとは無縁と、呪羅流眠も惣一郎に返したが、共に旅をした証として亜流美を譲り、惣一郎達と別れたのだった。



ギゾの町に着き門をくぐると、まだ厄災の影を色濃く残していた。

閑散とする町並みは、店らしいものも数軒しか開いてない状態で、住民の半数以上は安全な他の街に移り住んだという。

この町にはギルドもなく、利用できるのは宿屋と品薄の雑貨屋ぐらいであった。

宿屋を利用するつもりもない惣一郎は、このまま通り過ぎようと、町の反対側に向かっていた。

「すいません、冒険者の方ですか?」

痩せた子供を連れた、町の女性が惣一郎に話しかけ荷車を止める。

惣一郎は「ええ」と返事をし、母親らしい女性も痩せ細っている事に気付く。

「どうかこの子に、食べる物を分けていただけないでしょうか?」

惣一郎は以前、カーマの避難キャンプでこの世界で買った食事をほぼ使ってしまい、どうするか悩んでいた。

一回の食事ぐらいなら数日で元に戻るだろうし、厄災はもういない。

ここを乗り切る力ぐらいならあげてもいいか?っと、町の真ん中で炊き出しを始める。

惣一郎ならそうするだろうとベンゾウも、当たり前の様に手伝う。

大きな寸胴鍋を出し水を入れ、だしの素に大根と人参を切り、鍋に投入。

炒めた豚肉とネギも入れ味噌で味付けし、炊き上がったご飯で、おにぎりを作りまくる。

具は、シャケとシーチキンマヨ。

できる頃には人も集まり、ベンゾウが配り出す。

みんな、惣一郎に感謝しながら、笑顔で食べていた。

途中から腹が膨れた町民が手伝ってくれ、惣一郎の手を離れる炊き出し。

ベンゾウと豚汁を町民達と楽しみ、なんだかんだと一泊する事になる。

クロが居ると言い訳をし、民家の空いた納屋を借りる。

テントを出すには十分だった。

テントに入り数の減ったベッドに、ベンゾウが寂しそうに空いたスペースを見ていた。



翌朝、町に馬に乗った騎士が現れ、町中に厄災が倒されたと触れて回っていた。

「厄災の脅威は去った! 救世主ゴキコロリがこの国を救ったぞ! もう怯えて暮らす必要は無い。この事を皆に伝えるのだ!」

エリリンテの国旗を掲げながら騎士は、次の街へと走り去る。

町の人々は歓喜に湧き、誰もが笑顔で涙を流し、誰もがゴキコロリの名を叫び、歓声を上げる。

そんな中、惣一郎は……

もっといい名前にすればよかったと、後悔していた。



復興モードに様変わりしたギゾの町は、少ないながらも誰もが目を輝かせ、惣一郎はこの町の逞しさに後押しする様、また食事を提供する事にした。

そしてまた、なんだかんだと町を出たのは次の日だった。

まぁ急ぐ旅でもないしと、のんびり行こう。



荷車に揺られながら惣一郎は「海でも見に行くか?」っと、ふと声に出す。

「フラれたから?」

ちゃうわ!

ベンゾウを無視して、東へ[ルドの街]をのんびり目指す。




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