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第一章出会い

2 休憩

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  第二王子はソファーに身体を預け伸びをした。

  このところ毎日のように、いくつもの公務が続いている。やれ国際会議だ、何とか大会だ、おらが村祭だと、長時間ただ座って微笑んで、手を振って、挨拶して、お偉方の似たような賛辞を聞き、移動して、また挨拶して、手を振る。延々と続く代わり映えのしない公務。それでも王子は極上の微笑みで、挨拶し、手を振り、頷く。移動中も、常に人の目に晒され、民衆に手を振ると歓声があがる。若い娘たちは、ここぞとお洒落をして着飾り、王子の目を引こうとする。王子の周囲に近づいてくる貴族の、厚化粧に香水たっぷりの令嬢たちに比べるとまだ初々しくて可愛らしいが、見回してみても彼の心が動く娘はいない。

  式典が終わって控えの間にての休憩中。側近のハルバートが王子の手袋と上着を受け取ってシワを伸ばしハンガーに掛けた。用意されていた紅茶とクッキーはさげて、持参したものをテーブルに音も立てずに並べた。これはいつもの事で、王子が口にするものは全てチェック済みの物である。
「本日、この後は、関係者挨拶、図書館内見学、移動、懇親会、移動、市長と夕食……」
  次々並べられる本日の予定に、少し憂鬱になって無駄とは解っているが口を挟んでみる。
「ゆっくり休む時間は?」
「ございません。」
 にっこりよそいきの言葉でばっさり切り捨てられて、王子は口をとがらせた。その姿は年相応の少年のもの。素の顔を見せるのも、王子の側近への信頼の証だろう。
「少々疲れたな。」
ん~っとハルバートは顎に拳をあてて考えて、うんっ、と頷き、口を開いた。
「少し予定を変更しましょうか。」
「うん。」
少し嬉しそうに頷く王子。
  ハルバートが手元の手帳に何やら記入していた時、かすかに足音が近付いて来るのに気付く。
「そろそろ時間です。」
  ハルバートはドアのそばで待機した。
すぐに扉がノックされ呼び掛けられる。どうぞと、来客者達を招き入れた。
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