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盗賊A VS 盗賊B
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「てめーら起きやがれ!!!」
闇に響くジョンさんの叫び声。
まるでその声を合図としたように、枯れ草の中を駆ける夥しい足音が、私達の周りを取り囲んだ。
「誰だお前らは!」
「おうっ、ずいぶんと威勢がいいじゃねえか」
「色男とじじいとガキか、楽勝だな」
「お前ら、悪い事は言わねえ、黙っておとなしくしてろ」
勘違いしてるみたいだけど、私達は3人じゃありませんよ、もっと沢山いますよ、それも盗賊さんですよ、危ないですよ。
「どぉれ、その馬車の中を見せてもらおうか。尤も馬も馬車もお宝も、全て俺たちがいただきますが~」
おぅぅっ、もしかして同業者さんでしたか?
「そうだなぁお前たちは…じじいとガキは奴隷として売り叩くか。そっちの色男は高値が付くだろうし、うまくいきゃぁ男娼としても売れるんじゃねえか」
ゲラゲラと、下品な笑い声を立てる同業者さん達。
私は隣のジョンさんを見つめて…うん、いけるかもしれない。
『(コソッ) ジョンさん、どうしてそんなイケメンバージョンをしてるんですか!?』
『(コソッ )いや、みんなが言うには、こうしていた方がお前からのポイントが高くなると言われて……』
良く分からないけれど、どうやら私のせいらしい。
ならばジョンさんが男娼として売られないように、私が何とかしなくてはいけない。
「人質なら私がなります!だからこの二人には手を出さないで下さい!!」
何たって私は腐っても鯛だ。
私を餌に差し出せば、この二人を逃がしてもらえるかもしれない。
「ガッハハハハ、愉快なガキだぜ。お前なんかそっちと天秤にかける事すら難しいって。いいか、お前達や荷物全て、既に俺たちの物なんだよ。お前のようなゴミすらな」
どうやら私は、鯛の糞ぐらいにしか、認めてもらっていないようでした。
「きさま!エルに何て事を!」
ジョンさんが腰に差していた剣を引き抜き構える。
色男は、何をしても絵になる。
「おいおい、慣れない物を振り回して怪我をされてると、商品の価値が下がって困っちまうんだよ」
盗賊の一人がロープを取り出すと、他の人が剣を構える。
「おらおら、多勢に無勢だって分からないのかよ。さっさとそんな物騒な物は捨てちまえ」
「確かにそのようだなぁ」
盗賊さん達の向こうから、ルーベンスさんらしき人の声が聞こえた。
それから月明かりの下、木の陰や草の間から、人影が浮かび上がる。
服装はちぐはぐで、とても盗賊に見えないけれど、醸し出す気配は怒りを抱えた盗賊そのもの。
「何なんだてめーらは……、隠れていやがったのか。この卑怯者が!」
盗賊さん、それを言っちゃあいけねぇよ。
あんた達だって、似たような者でしょう?
1,2,3,4……、ひーふーみーよー。
ジョンさん達の盗賊Aはだいたい25人ぐらいに対し、いきなり現れた盗賊Bはざっと15人ぐらい。
うん、ジョンさんのチームの勝ち。
「さてと、やるかい?」
ジョンさんが、右の口角を上げニヤリとほほ笑む。
「なまいきな!おい、やっちまえ!!」
その声を合図に、剣や槍を振りかざした盗賊Bさん達が、一斉に切り込んできた。
お頭Bさんに逆らえないのかもしれないけれど、多勢に無勢なんでしょう?命は大事にした方がいいと思います。
あちこちで剣の音がし、戦いが始まっている。
最初はケガをしている人を見つけては、何気なさを装い治療をしていたけれど、それじゃあいつまでたっても戦いが終わらない事に気が付いた。
ならば放置しておいた方がいいかな?
でも重傷者にそれをやると死んじゃうかもしれないし、何より体力と時間の無駄だ。
ならばもう夜だし、実益を兼ねて全員寝てもらうのはどうだろう。
だけど、それじゃあ私だけ起きてる事になってしまう。
つまり私が一人で盗賊Bさん達を拘束しなくてはならない。
面倒くさいな………。
「それなら盗賊Bだけを眠らす事は出来ないのか?」
「それは出来ますけど」
まかり間違って盗賊Aの誰かを眠らせてしまっても、実害が無いから大丈夫だ。
って、ジョンさん?
「何で私の考えが読めたんですか!?もしかしてジョンさんの能力はサイコメトラーですか!」
「いや、お前、今の口に出てたぞ」
「うそ!」
「本当だ」
やらかしちゃいました、恥ずかしい~~。
でもそれをやるなら、怪我人が出る前にやっっちゃった方がいいですよね。
「いきます。あとはお願いしますねジョンさん」
「あぁ、任せておけ」
ジョンさんが、襲ってくる盗賊Bさん達から私を守りつつ、頷く。
だから私は安心して、両手を組んだ。
『盗賊Bさん達、お休みなさい』
次々に崩れ落ちていく人達。
その結果、剣を交えていた人達が、意識を失い倒れていく人を切りつける事故が多発してしまった。
まじい。
「この人で最後ですね?他に怪我をしている人はいませんか?」
「あっ、エルさん。俺二の腕をケガしたみたいで痛いんだわ」
「そんなひっかき傷、明日の朝には治っている。あまりエルさんの手を煩わせるな!」
「すんません!」
眠っているのは全員盗賊Bさん達。
幸いにして、しくじる事はしなかった。
重軽傷者は6名。
それも全てチームB。
皆さん大したケガをしていなかったようだし、一番重傷だったのは、背中を袈裟斬りにされた人。
出血は酷かったけれど、傷は無事修復しました。
後は魔物のレバーでも沢山食べて下さい。
「さてと、こいつらどうします?」
「連れて歩くのも面倒だな」
「ならいっそ、引っ縛ってこの辺に転がしておきますか」
「魔物に感謝されるだろうなぁ」
だめ、それはダメでしょう。
かと言ってこのまま開放すれば、またきっと人を襲うに決まっている。
「ジョンさん………」
どうすれば良いのか分からないけれど、命は大事。
両手をお願いポーズに組み、瞳をウルウルとさせ、上斜め45度でジョンさんの顔を見つめる。
後は勝手にジョンさんが考えてくれると思います。
「分かったよエル」
仕方が無いな、エルの頼みだ。
そう聞こえてきそうです。
「お前たち、こいつらをバスクまで引っ立てる。武器を隠し持っていないか調べてから、全員を縛り上げろ!」
……………………
すいません!今まで書き溜めていたものを手直しして掲載していましたが、それが尽きてしまいました。頑張りますが、毎日更新できるか不安でしかありません。ごめんなさい、すいません、申し訳ありません。土下座 orz
闇に響くジョンさんの叫び声。
まるでその声を合図としたように、枯れ草の中を駆ける夥しい足音が、私達の周りを取り囲んだ。
「誰だお前らは!」
「おうっ、ずいぶんと威勢がいいじゃねえか」
「色男とじじいとガキか、楽勝だな」
「お前ら、悪い事は言わねえ、黙っておとなしくしてろ」
勘違いしてるみたいだけど、私達は3人じゃありませんよ、もっと沢山いますよ、それも盗賊さんですよ、危ないですよ。
「どぉれ、その馬車の中を見せてもらおうか。尤も馬も馬車もお宝も、全て俺たちがいただきますが~」
おぅぅっ、もしかして同業者さんでしたか?
「そうだなぁお前たちは…じじいとガキは奴隷として売り叩くか。そっちの色男は高値が付くだろうし、うまくいきゃぁ男娼としても売れるんじゃねえか」
ゲラゲラと、下品な笑い声を立てる同業者さん達。
私は隣のジョンさんを見つめて…うん、いけるかもしれない。
『(コソッ) ジョンさん、どうしてそんなイケメンバージョンをしてるんですか!?』
『(コソッ )いや、みんなが言うには、こうしていた方がお前からのポイントが高くなると言われて……』
良く分からないけれど、どうやら私のせいらしい。
ならばジョンさんが男娼として売られないように、私が何とかしなくてはいけない。
「人質なら私がなります!だからこの二人には手を出さないで下さい!!」
何たって私は腐っても鯛だ。
私を餌に差し出せば、この二人を逃がしてもらえるかもしれない。
「ガッハハハハ、愉快なガキだぜ。お前なんかそっちと天秤にかける事すら難しいって。いいか、お前達や荷物全て、既に俺たちの物なんだよ。お前のようなゴミすらな」
どうやら私は、鯛の糞ぐらいにしか、認めてもらっていないようでした。
「きさま!エルに何て事を!」
ジョンさんが腰に差していた剣を引き抜き構える。
色男は、何をしても絵になる。
「おいおい、慣れない物を振り回して怪我をされてると、商品の価値が下がって困っちまうんだよ」
盗賊の一人がロープを取り出すと、他の人が剣を構える。
「おらおら、多勢に無勢だって分からないのかよ。さっさとそんな物騒な物は捨てちまえ」
「確かにそのようだなぁ」
盗賊さん達の向こうから、ルーベンスさんらしき人の声が聞こえた。
それから月明かりの下、木の陰や草の間から、人影が浮かび上がる。
服装はちぐはぐで、とても盗賊に見えないけれど、醸し出す気配は怒りを抱えた盗賊そのもの。
「何なんだてめーらは……、隠れていやがったのか。この卑怯者が!」
盗賊さん、それを言っちゃあいけねぇよ。
あんた達だって、似たような者でしょう?
1,2,3,4……、ひーふーみーよー。
ジョンさん達の盗賊Aはだいたい25人ぐらいに対し、いきなり現れた盗賊Bはざっと15人ぐらい。
うん、ジョンさんのチームの勝ち。
「さてと、やるかい?」
ジョンさんが、右の口角を上げニヤリとほほ笑む。
「なまいきな!おい、やっちまえ!!」
その声を合図に、剣や槍を振りかざした盗賊Bさん達が、一斉に切り込んできた。
お頭Bさんに逆らえないのかもしれないけれど、多勢に無勢なんでしょう?命は大事にした方がいいと思います。
あちこちで剣の音がし、戦いが始まっている。
最初はケガをしている人を見つけては、何気なさを装い治療をしていたけれど、それじゃあいつまでたっても戦いが終わらない事に気が付いた。
ならば放置しておいた方がいいかな?
でも重傷者にそれをやると死んじゃうかもしれないし、何より体力と時間の無駄だ。
ならばもう夜だし、実益を兼ねて全員寝てもらうのはどうだろう。
だけど、それじゃあ私だけ起きてる事になってしまう。
つまり私が一人で盗賊Bさん達を拘束しなくてはならない。
面倒くさいな………。
「それなら盗賊Bだけを眠らす事は出来ないのか?」
「それは出来ますけど」
まかり間違って盗賊Aの誰かを眠らせてしまっても、実害が無いから大丈夫だ。
って、ジョンさん?
「何で私の考えが読めたんですか!?もしかしてジョンさんの能力はサイコメトラーですか!」
「いや、お前、今の口に出てたぞ」
「うそ!」
「本当だ」
やらかしちゃいました、恥ずかしい~~。
でもそれをやるなら、怪我人が出る前にやっっちゃった方がいいですよね。
「いきます。あとはお願いしますねジョンさん」
「あぁ、任せておけ」
ジョンさんが、襲ってくる盗賊Bさん達から私を守りつつ、頷く。
だから私は安心して、両手を組んだ。
『盗賊Bさん達、お休みなさい』
次々に崩れ落ちていく人達。
その結果、剣を交えていた人達が、意識を失い倒れていく人を切りつける事故が多発してしまった。
まじい。
「この人で最後ですね?他に怪我をしている人はいませんか?」
「あっ、エルさん。俺二の腕をケガしたみたいで痛いんだわ」
「そんなひっかき傷、明日の朝には治っている。あまりエルさんの手を煩わせるな!」
「すんません!」
眠っているのは全員盗賊Bさん達。
幸いにして、しくじる事はしなかった。
重軽傷者は6名。
それも全てチームB。
皆さん大したケガをしていなかったようだし、一番重傷だったのは、背中を袈裟斬りにされた人。
出血は酷かったけれど、傷は無事修復しました。
後は魔物のレバーでも沢山食べて下さい。
「さてと、こいつらどうします?」
「連れて歩くのも面倒だな」
「ならいっそ、引っ縛ってこの辺に転がしておきますか」
「魔物に感謝されるだろうなぁ」
だめ、それはダメでしょう。
かと言ってこのまま開放すれば、またきっと人を襲うに決まっている。
「ジョンさん………」
どうすれば良いのか分からないけれど、命は大事。
両手をお願いポーズに組み、瞳をウルウルとさせ、上斜め45度でジョンさんの顔を見つめる。
後は勝手にジョンさんが考えてくれると思います。
「分かったよエル」
仕方が無いな、エルの頼みだ。
そう聞こえてきそうです。
「お前たち、こいつらをバスクまで引っ立てる。武器を隠し持っていないか調べてから、全員を縛り上げろ!」
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