底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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身バレ!?

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「エルちゃん、そのバックを私の部屋まで運んで~」

これですか?
だって隊長の身の回りの荷物、この屋敷のメイドさんが三人がかりで運んでますよ。
一緒に運んでいただいては…いえ、命令とあれば喜んで運ばせていただきます。

「でね、それを運んでくれたご褒美に、一緒にお茶しましょうね」

そっちかい!


メイドさんの案内で、隊長の部屋へと向かう。
王宮には行った事は有るけれど、あの時はテンパっていたし、周りを見る余裕なんてなかった。
今まで質素倹約の生活をしていたから、改めてこんなの見るとかなり腹が立ってくる。

「(コソッ)隊長、かなりゴテゴテしたこの扉って何なんですか」
「来客への見栄と権勢」
「(コソッ)このでっかい白磁の彫像は?」
「財力の誇示」
「(コソッ)上のシャンデリアって灯した事あるんですかね」
「ただのメチャクチャ高い装飾品。あんなところに火をつけたところで、ここまで明かりは届かない」
「(コソッ)こんなに大きな建物と庭って必要なんでしょうか」
「虚勢」
「(コソッ)これって誰のお金なんです?すべてシャインブルク様の財産なんですか」

だとしたら領民から莫大な税を取り立てて、自己満足のために使っていると言う事でしょう?
酷い!その分、貧困生活者の保護とか、町の整備とか色々な所に回せるだろうに。

「そうよ。だが彼はかなり頭の働く奴なの。税は領民から無理やり搾り取る事はしていない。彼なりに知恵を絞り、農業、商業、工業。あらゆる面から領民の生活を豊かにし、そこから正当な税を取立てている。にくったらしい事に、あいつの財産はあいつの努力の結果なのよ。そしてこの町の中心にこんなものを建てた。分る?あいつ曰く、この屋敷はこの領地の貯金箱みたいなものだそうよ」
「貯金…」
「税からいろいろな言い訳を付けて、値の張るものを買い付ける。それが国に認められれば、それはこの領地に留まる。つまり国へ流れる金がその分少なくなるのよ。そしてこの町に何かあれば、これらを全て処分し災害や領地を守るために役に立てる。ここはその為の金庫なんですって」

いけ好かない奴…そんな言葉が聞こえた気がした。
シャインブルク様、悪者疑惑から一転していい人、いえ切れ者さんですね。


それを聞いてから、美術品を味わうのではなく、ついついその価値を金額に結びつけてしまうエレオノーラです。
この屋敷全てをお金に換えれば一体いくらになるんでしょうか。
そんな事を考えキョロキョロしながら隊長の後ろを歩いていると、急に立ち止まった隊長の背にぶつかってしまいました。

「えっ?」

それから腕を引かれ、壁際へ移動させられた。

「(コソッ)エルちゃん、頭を下げて」

言われるがまま、隊長の横で頭を下げる。
やがて近づいてくる足音。
一人では無いな。

ドキドキするような、体が冷たくなるような緊張。
出来れば壁の中に溶け込んでしまいたい、そんな気持ちになる。
なるべく隊長の後ろになるように身を縮め、息を殺す。

コツ、コツ、コツ。

冷たい汗が背を流れる。
早く、早く通り過ぎて。

だがその願いも空しく足音が止まった。

「久しぶりだなルドミラ。ゆっくりして行ってくれ」
「そうも行きますまい」
「相変わらずつれないな、そう言えば今回の件、ずいぶん手際がいいな」
「運が味方してくれたようで」
「そうか、後ほど経過を教えてもらいたい」
「では後で」

早く行って!

「そちらの者は?」

動揺してはダメだ、落ち着いて。

「こちらは私の弟のエルと申します」
「弟?………そうか。面を上げよ」

なんで!どうしてそんな事を言うの!?
隊長の腕が私の肩を抱き、大丈夫と言うように力がこもる。
それに励まされ、私はそっと顔を上げた。

!!!
やはり………。
そこに立つは、堂々とした男性が二人。
目を見開きこちらを見つめるは……アレクシス様。
あの時より少しやつれて見えるが、やはりその佇まいは人を引き付けるオーラが醸されていた。

「エ……エレオノーラ………」

手をこちらに伸ばし、まるで何かに縋るようにゆっくりと近づいてくる。

「我が国、第二王子アレクシス・グランタール様とお見受けします。わたくしはシュカルフ辺境伯に使えしルドミラ・ククロヴァーナと申す者。お初にお目にかかり、光栄の至りと存じます。ここに控えしは我が弟、エルドレットと申します。弟に何か御用でございますか?」

そう言いながら隊長がギュッと抱きしめてくれる。
あぁ、暖かい………。

「弟……そうか…そうだな。いや、人違いをした。すまない」

フイッと目を逸らし、佇むアレクシス様。
思わず駆け寄り、慰めてあげたい。
そんな衝動に駆られるが、今はがまんがまん。

「疲れているだろうに時間を取らせて悪かった。どうか部屋で休んでくれ」

シャインブルク様はそう言い、再びアレクシス様と歩き出し、去っていった。
だけど、私の前を通り過ぎる時、ちらっと私を見たあの目が少し気に掛かった。

「ごめんねエルちゃん、怖かったわよね。さっ、早く部屋に行って美味しい物を食べましょうね」
「怖かったですぅ、ミラ姉様。ありがとうございました。助かりました。ミラ姉様、大好きですうぅぅ」

私はミラ姉様に、ぎゅうぎゅうと抱き着きました。
ホント、怖かったわぁ。
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