底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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新しく変わっていく村

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「一往復目、よく頑張ったね。お水でも飲んで一休みしておいで」
『いえ、毎回そんな事をしていると、いつまでたっても目標が達成できないわ』
『ありがとうよ姉さん、あんたの気持ちは有り難く受け取っておくぜ。そういえば20㎞走った先に村が見えたから、取り敢えずそこまで延長して走って来たぜ』
「おお、良く分かっているじゃないですか」
『姉さんの考えている事なんてお見通しだよ。んじゃ、もうひとっ走り行って来るわ』

この40㎞走っている間に、少しは気持ちの変化が有ったようですね。

『まあ、お主の眷属という自覚が出てきたのであろう』

けんぞく?剣属?券属ですか?まさか眷属などと言う大層な物じゃないですよね?

『…まあ良い、それよりあ奴らの様子なら、10往復もすれば馬車が通れるほどの道が出来そうじゃな。その後はおいおい整備していけばよい』

確かに大きなピーポーちゃん達が、どたどたと走った後は、かなり踏み固められている。
この様子なら、9往復で勘弁してあげても良さそうだな。

「土地の改善も自然とされちゃっているようですが、このまま全土に広がる事になったなら、困る事ってありますか?」

自然が広がる事は賛成だけど、我が家の庭が雑草だらけになったら、きっと母様からお小言を食らってしまう。

『だからお主は神では無いのだ。多分これはピーポー達が走ったあたりまでしか広がらないだろう』

そうか、ピーポーちゃん達自身に私の魔法が掛かっているから、多分私を中心とし、あの子達の行った付近を半径として、それ以上広がっていかないのだろう。
なるほど納得。

「それならあの子達に魔法を掛けたままにしておけば、あの子達の行く先々で、同じような事が起こるんですね」
『それはやめておけ、生き物はその気候などで進化し、適応しているのだ。そこに自分に合っていない物が入り込んでくれば、その地の生物にとって迷惑極まりないだろうが。それに何度も言うがお主は神ではないのだ。そんな事をすればいずれ魔力切れのせいで命を落とすぞ。この付近一帯が戻ったところで、あ奴らに掛けた魔法は解いておけ』

了解しましたキング殿!

私は徐々に変わりつつある風景を眺め、綺麗な泉のほとりで、さわやかな木漏れ日の下、気持ち良く通り過ぎていく風を感じている。
何と言う贅沢なんだろう。
うん、この土地はとても良い所になる。
そしてこの土地を訪れた人たちは、みなそれを味わう事だろう。


「さて、自然が回復する事については目星がつきました。次は村人たちの生活ですね」

家を立て直し、農作物についての知識や、昔ならではの生活を改めるためには、必要な事はたくさん有る。
私の魔法でそれを整える事も吝かでは無いが、それをしたところでありがたみは薄れるだろう。
人からもらったものと、自ら作ったもの。
その価値や受け取り方は、かなり違ってくるだろうから、労働は大切なのだよ。

「さしあたっては国に技術者と労働力を進言しておく。多少時間は掛かるだろうが、あの極限状態がここまでになったのだ。この村の者達も待つ事は苦にはならないだろう」
「兄様、もしかして人の移動の事を言っているのですか?それなら私に言ってくれれば、すぐにでも移動させますよ?」

最近では、一大隊ぐらいなら移動させられるようになったし。

「たまには国にも花を持たせろ。そう聖女様や神似者様、エレオノーラ様ばかり奉られては、国の沽券にかかわるぞ」
「でも、早ければ早いほど、ここの人達は助かるだろうし」
『そう甘やかせてばかりだと、ピーやポッポのようになるぞ』

それは困ります。
ならばと、ここは兄様の意見に従う事にしました。
ただ、当座の設備ぐらいは整えておきたいなぁ。

「何をするつもりだ?食料はお前の成した事で自然の物は手に入る。いずれそれにつられ動物などが移動してくればそれを狩る事も出来るだろう。今まで地面に吸収されてはいたが、今までも雨は降っていたんだ。それを凌ぐ方法もあった。今は水も ふんだんにある。それも万能薬付きのものだ。他に何が必要だ?」

確かに仰る通りでございます。

「では兄様にお願いが有ります。確かにこの地が栄え、この国が栄える事は喜ばしい事です。ですがそれを私欲の為に利用する者が出る事は私の本意では有りません」
『確かにそうだな。ならばお主がそう思えばよかろう。というか、既に加護はついているようだな』

そう言い、リンデンさんがユグドラシルを見上げる。

『お前の気持ちに同調した世界樹が、この地に参り、私腹を肥やそうとする者は許しておかないと言っておるよ』
「そうですか、良かった……」

良かったんですけれど、少し怖い気もする。
この地を私腹の為に利用しようとした者は、一体どういう制裁を受けるのだろう。
ん~~、これ以上は、ユグドラシル様に一任しておこう(それを人は、逃げと言う)


ピーポーちゃん達が道を作っている間、取り敢えず私達はかなりガタがきた家の補強作業をしておこう。
兄様が状況を確認し、村人総出でその指示に従う。
力仕事はリンデンさんにお願いして、たとえ一時しのぎとは言え、家の形はずいぶんマシになった。
汗をぬぐいながら山を見上げれば、そこには葉を揺らしながら、ユグドラシルがたっている。

『エレオノーラよ、わしはこの地に根を下ろしたい。それを許してくれるだろうか』

許すも何も、それがリンデンさんの望みなら、だれも反対をする事は無いと思いますよ。

「反対する人などおりません。いえ、反ってあなたがここに留まる事をみな歓迎するでしょう」

あなたの立場が神獣と呼ばれるドラゴンであり、それもその頂点に立つ者。
それを目的で賛成する人もいるかもしれない。
でも私はあなたの為人を感じ、ぜひここに住んでほしいと思うのです。

『お前だけでもそう思ってくれるなら、わしはぜひここに留まる事としよう。ありがとうエレオノーラ』
「こちらこそですよ」
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