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海神
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ごめんなさい×10 orz
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見下ろせば、むき出しになった大地には幾つかの亀裂が走り、所々深い谷のようになっている。
剥げた山肌からは大小様々な石が、土煙をたてながら転がり落ちる。
緑を失い枯れていた大地が、更に荒れ果てていく。
もしここにあの人たちがいたらと思うと、心の底からぞっとする。
地の神が、自分の領分を壊してまでこんなことをなさるとは、よほどその緑の精霊を愛しているのだろう。
しかし災いはそれで終わりでは無かった。
海の向こうからゴオォーーーッと言う音が聞こえ、それが徐々に大きくなっていく。
目をやれば、水平線に白く荒い波が線を描き、スピードを上げながら近づいて来る。
それはやがて巨大な壁のようになり、こちらに迫ってきた。
「津波か!」
あれだけ大地が揺れたのだ。
津波が起きてもおかしくはない。
人の気配は近くにはない。
それは比較的緑の残った高台に集中しているようだ。
願うべきは、そこまで津波が届かぬようにと。
それから私は急ぎ兄様を連れ、人が集まっている場所に移動した。
「あぁっ」
私は眼下が見下ろせる場所に駆け寄る。
そこから海を見下ろせば、その最前線には怒り狂った精霊達が見えた。
それは人馬のような姿をして、波を先導するかのように、凄いスピードでこちらに向かい駆けて来る。
多分あれが、バンシーさん達の言っていた海の神と精霊達なのだろう。
あの様子だと、下手をすればここら一面は、簡単にのみ込まれてしまうかもしれない。
「兄様!何とかあの神様に頼んでみます。しかしそれが叶わぬ場合も有ります。兄様はここの人達を連れ、もっと上の方に逃げて下さい!」
「神だと!あそこに神がおわすのか!」
私はその言葉に返す事もせず、海に向かい飛び出した。
この災害を止める方法など考えている暇など無い。
ただ、今は当たって砕けろだ!
「お待ちください!!!」
海の神と思しき方の前で、大きく手を広げ思い切り叫ぶ。
差し迫った巨大な水の壁が、その形状を維持したままその場に停止した。
こんな事も有るのだろうか?
遮る物も無いのに、水がその場に、まるで大きな山並みのように留まるなんて………。
『私の姿が見えておるのか?一体お前は何者だ』
「おおそれながら、海の神様、および精霊様とお見受けします。私はこの国に生まれしガルディア男爵家が長女、エレオノーラと申します。この度の事はパンシー様達からお聞きしました。私の言葉一つでは何の罪滅ぼしになどならぬことは重々承知しております。しかし人間とし、あえて謝罪申し上げます。私に出来る事は何でも致します。この命を差し出せと仰るなら喜んで差し出しましょう。ですので、何とぞ此処に居る者たちの命をお救い下さい」
深く深く頭を下げ、心からそう願う。
私と引き換えなど、それが受け止めてくれる筈も無いと思うが、今はそれしか差し出す物が無い。
『男爵?それは人間が勝手に定めたものだろう。そんな物は我々には何の関係も無い。ただお前には少々興味がわいた。ただな、これはわが友、大地の神に対する私の気持ちだ。彼の愛する緑の精霊はわが友でもある。それが瀕死の状態で苦しみ、明日をも知れない状態だ。あれが死ねば新しい緑の精霊の長が誕生するまでの何百年は、ここら一帯は砂漠と化す。我らは愚かな人間どもの犯した事に怒り、罰する事にした。しかしこれはお前個人が命じた事でもないし、手を貸した事ではない。お前の命を奪った所で解決する事ではない』
「海の神様、あなたのおっしゃることは尤もです。しかし私はこの事を引き起こした人間と同じ種族。無責任に関係など無いと言う訳にはいかないのです。どうか、この怒りが少しでも鎮める事が出来ないか、その糸口だけでも構いません。教えていただけないでしょうか」
『そう言われても………はっははは、いや、私はこんなにもちっぽけな人間と何を真剣に話をしているのだろう。何とも面白い奴だ。分った。私は当事者ではない。お前、直接大地の神に頼んでみるがいい』
「大地の神!!」
精霊…は最近慣れた気がするけれど、海の神と対峙して、更に大地の神と会えと……私の神経、いつまで持つのかしら………。
「………ご主人様ーーーー!!!」
その声と共にドーンと衝撃が有り、気が付けばハルちゃんが私に抱き着いていました。
「ハルちゃん、どうしたの一体?」
『それはこちらのセリフですー!ご主人様がピンチだと感じたので、急ぎ参上しました。私は”誰よりも早く駆ける者”と異名を持つ者ですから一番乗りできたんです。リンデン様達もじきに到着します。一体何が有ったんですか!?』
「いや、この惨状を何とかできないかと、今海の神様と話をしていたんだけど」
そう言い、私は陸地を指さした。
ハルちゃんはその様子に驚き、目を移した先にいた海の神や精霊たちに驚愕した。
『何やっちゃったんですかご主人様ーー!』
私はハルちゃんに首根っこを掴まれ、ガクガクと振り回される。
まあ、いろいろ有ったんだけど、それされると説明も出来ないから。
「ギブギブ、ハルちゃんちょっと落ち着いて」
ハァ、ハァ。
だけど身内だけでこそこそ話をしているのは海の神に対して失礼だし、時間も無い。
『お前はあの下品なハルピュイアか?いや、少し違う気もするが』
『ち、違います。違くないけど違います。私はご主人様にハルと言う名をいただいたハルピュイアです』
『名を。成程お前は神似者か。これは面白い、以前会った神似者は確か200年ほど前で、そ奴はドラゴンであったな』
『お恐れながら海の神様、それは今リンデンと申し、私と同じくご主人様の眷属となっております』
『なんと、神似者のドラゴンを眷属にするとはな。これは愉快だ。ますます大地の神に会わせたくなった』
それを聞いた途端、ハルちゃんの顔色が変わったような気がした。
『大地の神に会う!?ご主人様!一体……一体!?』
うん、言葉にするのも烏滸がましい事だよね。
あなたの気持ち、よ~く分かるとも。
でも成り行き上会わなきゃならなくなったみたいだよ。
『はぁ~~。しょうがないなぁ………』
そう言うとハルちゃんは、私の唇にぶちゅっとキスをする。
それもいつもと違って念入りに。
いつもだったら魔力をつまみ食いされるはずなのに、今回はどうも違う。
魔力は抜けもせず、かえって増えたような気がする。
『ご主人様ちょっと疲れているみたいだから…。あまり足しにならないかもしれないけど、少しは力になれたかな?ご主人様、ヘマしたらダメだよ…………』
「ハルちゃん!」
微笑みながら海へと落ちていくハルちゃん。
慌ててその後を追おうとすると、一人の精霊がハルちゃんを受け止め、岸へと運んでいく。
良かった…、ありがとうハルちゃん………。
『さて、わが友の所に行って来るがいい。話が付くまで、私はここで待とう』
その声を聞いた途端、目の前の景色がぐにゃッと歪み、私の体がどこかに運ばれていくのを感じた。
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見下ろせば、むき出しになった大地には幾つかの亀裂が走り、所々深い谷のようになっている。
剥げた山肌からは大小様々な石が、土煙をたてながら転がり落ちる。
緑を失い枯れていた大地が、更に荒れ果てていく。
もしここにあの人たちがいたらと思うと、心の底からぞっとする。
地の神が、自分の領分を壊してまでこんなことをなさるとは、よほどその緑の精霊を愛しているのだろう。
しかし災いはそれで終わりでは無かった。
海の向こうからゴオォーーーッと言う音が聞こえ、それが徐々に大きくなっていく。
目をやれば、水平線に白く荒い波が線を描き、スピードを上げながら近づいて来る。
それはやがて巨大な壁のようになり、こちらに迫ってきた。
「津波か!」
あれだけ大地が揺れたのだ。
津波が起きてもおかしくはない。
人の気配は近くにはない。
それは比較的緑の残った高台に集中しているようだ。
願うべきは、そこまで津波が届かぬようにと。
それから私は急ぎ兄様を連れ、人が集まっている場所に移動した。
「あぁっ」
私は眼下が見下ろせる場所に駆け寄る。
そこから海を見下ろせば、その最前線には怒り狂った精霊達が見えた。
それは人馬のような姿をして、波を先導するかのように、凄いスピードでこちらに向かい駆けて来る。
多分あれが、バンシーさん達の言っていた海の神と精霊達なのだろう。
あの様子だと、下手をすればここら一面は、簡単にのみ込まれてしまうかもしれない。
「兄様!何とかあの神様に頼んでみます。しかしそれが叶わぬ場合も有ります。兄様はここの人達を連れ、もっと上の方に逃げて下さい!」
「神だと!あそこに神がおわすのか!」
私はその言葉に返す事もせず、海に向かい飛び出した。
この災害を止める方法など考えている暇など無い。
ただ、今は当たって砕けろだ!
「お待ちください!!!」
海の神と思しき方の前で、大きく手を広げ思い切り叫ぶ。
差し迫った巨大な水の壁が、その形状を維持したままその場に停止した。
こんな事も有るのだろうか?
遮る物も無いのに、水がその場に、まるで大きな山並みのように留まるなんて………。
『私の姿が見えておるのか?一体お前は何者だ』
「おおそれながら、海の神様、および精霊様とお見受けします。私はこの国に生まれしガルディア男爵家が長女、エレオノーラと申します。この度の事はパンシー様達からお聞きしました。私の言葉一つでは何の罪滅ぼしになどならぬことは重々承知しております。しかし人間とし、あえて謝罪申し上げます。私に出来る事は何でも致します。この命を差し出せと仰るなら喜んで差し出しましょう。ですので、何とぞ此処に居る者たちの命をお救い下さい」
深く深く頭を下げ、心からそう願う。
私と引き換えなど、それが受け止めてくれる筈も無いと思うが、今はそれしか差し出す物が無い。
『男爵?それは人間が勝手に定めたものだろう。そんな物は我々には何の関係も無い。ただお前には少々興味がわいた。ただな、これはわが友、大地の神に対する私の気持ちだ。彼の愛する緑の精霊はわが友でもある。それが瀕死の状態で苦しみ、明日をも知れない状態だ。あれが死ねば新しい緑の精霊の長が誕生するまでの何百年は、ここら一帯は砂漠と化す。我らは愚かな人間どもの犯した事に怒り、罰する事にした。しかしこれはお前個人が命じた事でもないし、手を貸した事ではない。お前の命を奪った所で解決する事ではない』
「海の神様、あなたのおっしゃることは尤もです。しかし私はこの事を引き起こした人間と同じ種族。無責任に関係など無いと言う訳にはいかないのです。どうか、この怒りが少しでも鎮める事が出来ないか、その糸口だけでも構いません。教えていただけないでしょうか」
『そう言われても………はっははは、いや、私はこんなにもちっぽけな人間と何を真剣に話をしているのだろう。何とも面白い奴だ。分った。私は当事者ではない。お前、直接大地の神に頼んでみるがいい』
「大地の神!!」
精霊…は最近慣れた気がするけれど、海の神と対峙して、更に大地の神と会えと……私の神経、いつまで持つのかしら………。
「………ご主人様ーーーー!!!」
その声と共にドーンと衝撃が有り、気が付けばハルちゃんが私に抱き着いていました。
「ハルちゃん、どうしたの一体?」
『それはこちらのセリフですー!ご主人様がピンチだと感じたので、急ぎ参上しました。私は”誰よりも早く駆ける者”と異名を持つ者ですから一番乗りできたんです。リンデン様達もじきに到着します。一体何が有ったんですか!?』
「いや、この惨状を何とかできないかと、今海の神様と話をしていたんだけど」
そう言い、私は陸地を指さした。
ハルちゃんはその様子に驚き、目を移した先にいた海の神や精霊たちに驚愕した。
『何やっちゃったんですかご主人様ーー!』
私はハルちゃんに首根っこを掴まれ、ガクガクと振り回される。
まあ、いろいろ有ったんだけど、それされると説明も出来ないから。
「ギブギブ、ハルちゃんちょっと落ち着いて」
ハァ、ハァ。
だけど身内だけでこそこそ話をしているのは海の神に対して失礼だし、時間も無い。
『お前はあの下品なハルピュイアか?いや、少し違う気もするが』
『ち、違います。違くないけど違います。私はご主人様にハルと言う名をいただいたハルピュイアです』
『名を。成程お前は神似者か。これは面白い、以前会った神似者は確か200年ほど前で、そ奴はドラゴンであったな』
『お恐れながら海の神様、それは今リンデンと申し、私と同じくご主人様の眷属となっております』
『なんと、神似者のドラゴンを眷属にするとはな。これは愉快だ。ますます大地の神に会わせたくなった』
それを聞いた途端、ハルちゃんの顔色が変わったような気がした。
『大地の神に会う!?ご主人様!一体……一体!?』
うん、言葉にするのも烏滸がましい事だよね。
あなたの気持ち、よ~く分かるとも。
でも成り行き上会わなきゃならなくなったみたいだよ。
『はぁ~~。しょうがないなぁ………』
そう言うとハルちゃんは、私の唇にぶちゅっとキスをする。
それもいつもと違って念入りに。
いつもだったら魔力をつまみ食いされるはずなのに、今回はどうも違う。
魔力は抜けもせず、かえって増えたような気がする。
『ご主人様ちょっと疲れているみたいだから…。あまり足しにならないかもしれないけど、少しは力になれたかな?ご主人様、ヘマしたらダメだよ…………』
「ハルちゃん!」
微笑みながら海へと落ちていくハルちゃん。
慌ててその後を追おうとすると、一人の精霊がハルちゃんを受け止め、岸へと運んでいく。
良かった…、ありがとうハルちゃん………。
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