底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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大地の神と緑の君

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本日二度目の投稿です。
いつの間に戻ったの!まだやるんだと思った方ごめんなさい。
どうぞ前話に戻り、お入りください。

========

何もない空間。
いや、目を凝らすとしだいに浮かび上がってくる色。
グリーン
ゴールド
ブロンズ
グレー
ありとあらゆる色が瞬き、光を増していく。

その中に浮かぶのは、白い布を纏ったたくましい男性と、その膝に抱かれた嫋やかな人。
いや、多分人ではない。
ほんのりと黄色味を帯びた白い肌。
萌黄色と言うのだろうか、まるで若い葉のような色をした、長くしなやかな髪。
それはとても長く、立ち上がれば床を這うほどの長さがあるだろう。
それに、かなりやつれたようにも見えるが、それでもあの美貌。
健康であればそれらは瑞々しく、光り輝く様に見えるに違いない。
しかし今はその潤いを失い、危うい様子がこちらにもひしひしと伝わってくる。
きっとこの方が緑の精霊の長なのだろう。
でも………。

この方は男性なのだろうか?
いやいやいや、胸だけで性別を判断するのは危険だ。
事実私だって………。
そっと見下ろした先には、最近少し隆起してきた山が二つ。
そんな事で優越感を持ってどうする。
今はやらなければならない使命が有るだろうに!

『精霊に性別など無い。好ましいと思う姿をその身に留めるだけだ……』

おぉ、思いもかけず神様からのお言葉をいただいてしまった。

「突然お訪ねし、大変失礼をしました。この度は私達が大変な事をしてしまい申し訳ありませんでした!!」

そう言い、いきなり土下座をする。

『お前にそうしてもらう意味など無い。私にはもう何も無い。ここにこうしている意味すら無くなってしまうのだ…』

そう言い震える背を見つめれば、その悲しみの渦に、私も飲み込まれてしまう様な気がする。

『我が神、どうか悲しまないで……。私はどれほど時間が掛かろうと、必ずあなたの下に帰って参りますから………』

掠れた声が聞こえる。
緑の君の力無き声が、切ないくらいに心に響く。
あぁ、私達は何という事をしてしまったのだろう。
何とかしてこの方を助けてあげたい、いや、助けねば……。

「私達は一体どうすれば良いのでしょう。どうすればその方を救えますか?山を元の様に戻せば緑の御方は助かりますか?」
『そんな事は私でも容易に出来る事だ。だがそれを直したところでこれは助からぬ』
「何故ですか。ああなる前の姿に戻しても、助からないのですか!?」
『……絶望してしまったからだ。自分が慈悲を掛け大事にしてきた人間が、自分を壊し、蔑ろにしていく。その姿に幻滅し、自分などこの人間達に必要ないと絶望してしまった……』
「……………」

物理的な問題ではないのか。
壊れてしまった物ならば、何かしらの手によって元に戻る。
しかし心はそうもいかない。
深く傷ついてしまった心は、容易な事では元には戻らない。

「私が!同じ人間である私が皆を何とかします!皆の忘れかけた事を思い起こすように説得します!」
『そう簡単にはいかんよ…』
「そうかもしれません。神様の言葉を聞き、神様の気持ちを代弁出来る者など僅かしかおりませんゆえ、なかなか伝わらない事は多々あります。しかし運よく私はその少数に含まれております。ですから私がその言葉を、今起こっている事を皆に伝え、何とかします!だから緑の君。もう少し、あと少しだけでも良いのです。人間を信じ頑張ってください、お願いします」
『ありがとう…あなたの言葉は私に力を与えます。いいでしょう、私も我が神から離れるのはとても辛い…。だからもう少しあなたを信じる事にしましょう…』

辛そうだった緑の君が、何とか微笑みを作ったような気がする。
多分今回は、私の命を掛けたとしても成し遂げられる事では無いかもしれない。
でも私も人間の端くれ、人間の仕出かした事は、人間である私が何とかしなくては。


と、思い、意気込んで此処まで帰してもらったはいいけれど、果たしてどこから手を付ければいいのだろう。
上空から見るこの地は、惨憺たる有様だ
まぁまずは人々に、今起きている事を伝えなければ。
そう思い、兄様のいる方へ急降下する。


「エレオノーラ!!良かった無事だったか!」
「ご心配をおかけしました」
「急にお前の姿が波に飲まれるように消えたから、生きた心地がしなかった」
「ごめんなさい、でも説明をしたいのは山々なのですが、時間が有りません。どうか私を信じて、私のやる事を黙ってお許しください」
「黙って許せだって!?まさかお前また………」

兄様のお小言は後でたんまり聞きます。
とにかく今は時間が惜しい。

再び空に舞い上がった私は、口で、心で、魂で、皆の心に直接響くよう、大きく叫ぶ。
この声がどこまで届くか分からないけれど、出来るだけ広範囲に広がってもらいたいものだ。

「皆の者よく聞け!私はエレオノーラ・ガルティア、神似者である!!」
「神似者だと、何を言っているんだ」
「罰が当たるぞ」
「いや、俺は西の方で、神似者が現れたと耳にした……」

”何だって” ”そんな馬鹿な”
がやがやと煩い声が行きかう。
そんな無駄口など叩かないで、私の話を聞け!

「私は聖女とも呼ばれている。その私がたった今、海の神、大地の神に会い話を聞いた。この災は人間が招いた結果だと!」

絶句する者、反論し声を上げる者。
それぞれの身勝手な反応を間近に見た限り、まさに人間は烏合の衆と言えるだろう。

「黙れ愚か者供!この災害はお前達が自分達の利益のため、他の生き物の事など考えず自然を破壊し、このあたり一帯を切り崩し、大地をこの様な無残な姿に変えた結果だ!お前達の行った事により、大地の神が愛される緑の御方、自然の精霊の長である緑の精霊が絶望し死にかけておられる。これはそれに怒った神の鉄槌である!」
「そ、そんな…俺達はそんなつもりじゃなかった」
「そうだ。俺達はただ上からの命令でやっただけだ!」
「ならばこの自然を破壊する行為に加担しなかったと言うのか。葉を一枚も散らさず、枝も折らず、小石一つも掘り出さなかったのか!反対の声を上げた者はいるのか!!」

今まで言い訳を口にしていた者も、言葉に詰まる。

「してしまった事の大小ではない。それに賛同し、加担したことを言っておる。大地の神は緑の君が死ぬ事により、ここはこの先何百年も砂漠となると言っていた。そうなればその責任はこれに加担した者全てである。きっとその者達の将来は明るくは無いだろうな」
「そんな……」
「神似者様、どうかお助け下さい!私には年を取った母や子供達が……」
「この年で、もうお先真っ暗なんて御免だ!どうか助けてくれ!!」

はぁ~~。

「呆れら奴らだ。お前達には先は暗くともまだ将来がある。ならば死に瀕している緑の御方はどうだ!殺されていった数々の小さい命はどうでもよかったのか。よく考えて見ろ!!」
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