底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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サラマンダー

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その場に集まった人達は、武器を捨て皆その場に膝ま付く。
そんなに絶望してしまったのか。
でも大丈夫だよ、私がきっと何とかするから、気をしっかり持ってね。
そう思ったけれど、どうやらみんなの思惑は違ったようだ。

「大いなる神似者様!」

人々の先頭を切っていた、身分の高そうな人が叫ぶ。
そしてその言葉と共に、皆が両手を地に付け頭を下げた。
いわゆる土下座って言うやつだな……。

「そ、そんな事しないで下さい。私そんなに大そうな者じゃありません、偉そうにしたのは只の張ったりで、私自身は普通の人間ですから」
「そんなはずがありません、あなたの行っている数々の奇跡が物語っています。お願いいたします神似者様、どうか我々をお救い下さい」

私は緑の御方が助けるために一連の事をしているつもりだけれど、その結果はこの人達を救う事にもなるんだよね……。
取り敢えず話をするため地上に降りようか。

「「「この地にようこそ、神似者様」」」

そう言い、再び地に額を付ける人達。
だから私はただの人間だってば。
だけど今までの経験上、いくら言っても無駄だって分かっているから、この場はあえて無視をしておこうか。

「皆様、ご丁寧な挨拶痛み入ります。私にとって初めて訪れしこの地、出来ればゆっくりしたい所ですが、残念な事に緑の御方を救うため私には時間が無いのです。ですが、よろしければあなた達にお願いが有ります。それはこの自然を蔑ろにせず、共存し大切にして下さい。それがこの地、この世界を救う事になると私は確信しております」
「畏まりました。その言葉を心に刻み、この先、子々孫々まで伝えさせていただきます」

そんなに大げさなつもりでは無かったんだけど。
でも、そうやって伝えてもらえば、この先ずっと緑の御方が憂う事は無いだろう。

「それと私は今、オルガからここまで道を敷き、沿線の崩れや壊れてしまった所を整えながら来ました。でも私のした事はただそれだけです。まだ人が行き来するには不完全な所が沢山有ります。本来でしたらそれも私がやり遂げるべきなのでしょうが、先ほどお伝えした通り私にはまだやらなければならない事が有り時間が有りません。だからどうか、その道を人が行き来しやすくなるよう、最終的な工事をお願いしてもよろしいでしょうか」
「もちろんでございます。その命しかと承りました」

いや、命令では無くお願いなんですけれど。
まあいいか。

「神似者様、真に勝手なお願いでは有りますが、あなた様のご用が全て終わられたなら、もう一度この町においでいただけないでしょうか。改めてこの町を挙げて歓迎させていただきたいのです」

多分それは叶わないとは思う。
でももし全てが無事終わったならば………。

「お約束はできません。でももしそれが叶うのであれば、必ずまたこの地を訪れましょう」

そう言い、私は何とか笑顔を作り、その地に別れを告げた。
これを全て無事にやり遂げる自信がない以上、確約など出来ないのだ。
ただ別れ際、町の人が言っていた言葉が気になる。
”この天災のせいか分かりませんが、どうやら手負いの魔獣がうろついているようです。どうかお気を付けて……”
いやだなぁ…。ただでさえ魔力を使い過ぎているのに、そんな奴に会ったらひとたまりも無いだろうなぁ。

だが嫌な予感は当たる物。
手負いの魔獣はサラマンダー?だったらしい。
そしてそのターゲットは……。

「ハルちゃん?」

ほー、魔獣が私のハルちゃんに挑むとは、いい度胸じゃないか。
でもハルちゃん、どうやらこのサラマンダーに委縮しちゃっているみたいだ。
まあ相手は手負いでメチャクチャ興奮してるし、大きさもハルちゃんよりかなりでかいからなー。

「ちょっとあんた!私のハルちゃんに何してるのよ!」
『ご、ご主人様ぁ~!』
「ハルちゃん、私が来たからにはもう大丈夫だからね!」
『ありがとうございますぅ、ご主人様~』
「この怪物が!私の妖精のように可愛いハルちゃんになに狼藉を働いておる!このエレオノーラが成敗してくれるわ!」

まあ殺す事は避けるつもりだけどさ。
取り敢えずケガを治してあげて、それから相手がどう出るかだね。

『ご主人様、あれは精霊だよ。怪物は私の方』
「そんな細かい事は気にしないの」

そうなんだ。
ハルピュイアは怪物で、サラマンダーって精霊の部類なんだ?
逆でしょ!
私のハルちゃんの方がよっぽど可愛いわよ。

じゃなくて、このサラマンダーはかなりの深手を負っているようだし、なりはでかくて狂暴だろうが、殺すには忍びない。
まずは治療だな。
そう思い立ち私はいつも通りに治療開始をする。
かなり魔力を使うみたいだけど、気にしない気にしない。

最初は息も荒く、興奮していたサラマンダーも、傷が良くなるに従い次第に落ち着きを取り戻していく。
そして傷が完治した時点で、私の目の前にいたのは赤い髪に赤い瞳の、楚々とした絶世の美人だった。
これならばサラマンダーが精霊だと納得できるかも。

『この度は命を助けてもらい感謝する』
「いえ、もとはと言えば人間が引き起こした事に巻き込まれたのでしょう?当然の事だよ」
『それも一理あるが、私的にはお前に恩義が出来てしまった。何か望みが有れば言うがいい』

いつもだったら断る所だが、とにかく私は時間が惜しい。
だからこの申し出を受ける事にした。

「私は地の神の許しを得るために、この壊れてしまった自然を元に戻そうとしているんだ。かなり元に戻せたとは思うんだけど、きっとまだ取り戻せていない所が有ると思うの。だからサラちゃん、あなたが出来る範囲でいいんだけれど、手伝ってもらえると嬉しいんだ……けど……?」

一瞬目の前がブレたような気がして、ヤバ、眩暈か?と思ったけれど、原因はどうやらサラちゃんにあったようだ。

『しかと承りました。このサラマンダー…いえサラ、主様と共にこの自然を取り戻す事に尽力を尽くしましょう』
「サラちゃん………?」
『ご主人様ったら!どこまで愛想振りまくつもりなの!?』

横には何やら不機嫌そうなハルちゃんが。
別に私は愛想を振りまいているつもりなんて無いんだけれど?


==========

体たらくの中の祝!?100話目。
自分でもこんなに続くとは思いませんでした。
お付き合いいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。orz
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