101 / 109
そして
しおりを挟む
一体どこまでこの自然を直せたのか分からない。
まだダメージがどれほど残っているのか分からない。
ただ今は地道にやって行くしかないのだろう。
とは言え、あとどれほどの時間が残されているかすら分からないのだ。
仕方が無い。
私は現状を確認をするため、残された魔力を振り絞り、辺りが見渡せるほどの上空まで登った。
「良かった……」
見れば、人の立ち入らない山深い場所は、あまり崩壊が進んでいないようだ。
逆を返せば、人が手を付けた所ほど被害が酷かったようで、そのほとんどは私や皆がある程度修復し終わているようだ。
これならあと少し頑張れば、きっと緑の御方は助かるに違いない。
そして後の整備は人間達がゆっくりやって行けばいい。
「おっしゃーー!」
皆がこれ以上疲れない為にも、この私が残りを引き受けようじゃないか。
そう思い、油断し切っていたエレオノーラです。
「ようっし!そこ!!」
そう叫びながら、崩れた崖を、元の姿であっただろう山肌へと形作る。
「次っ、そこ!」
深い亀裂の入った所を、引っ張る要領でつなぎ合わせる。
「それからそこ!」
上から流れて出ていた大量の土砂を、広く平らに均す。
うん、なかなかいいじゃない。
そうだ、今均した所一面に小麦を植えよう。
きっと初夏になれば、見渡す限りの小麦が風になびき、とても素敵な景色になるだろう。
そしてそれを収穫すれば一石二鳥。
実用性も考えているエレオノーラですぅ。
ならばそこに続く道もつけなくちゃな、そう思った時、私の限界が来たようだ。
まず最初に考えた事。
あぁ、空がとっても青くて綺麗だ。
スピードを増し落ちていくのに、のんびりとそんな事を感じた。
まだまだやりたい事が有ったんだけどな。
あちらこちらに私の大好きなチューリップも植えたかったな。
そう言えば小麦もまだ手を付けていない。
私の我儘に突き合せちゃった皆は疲れているだろうな。
ごめんね。
私はまた眠る事になるのかな。
いや、落下している状態なら多分助からないだろう。
向こうでまたミシェルにこっぴどく怒られるだろうな。
絶交されたら嫌だな。
私がいなくなったら、悲しむ人は少なからずいると思う。
母様、父様、イカルス兄様、シルベスタ兄様、ごめんなさい。
私を助けてくれた人達みんなも。
それからこれを途中で投げ出す事になってしまってごめんなさい。
どうか私がいなくなっても、皆で力を合わせ、この地を素晴らしいものにして下さい。
そして私の心の中にずっと居て、それでも恥ずかしくて目を背け続けていたアレクシス様。
せっかく告白しようと決心したけれど、結局できなかったな……。
今となってはそれで良かったと思う。
どうかアレクシス様、今度こそは本当に好きな人と巡り会って、幸せになって下さい。
リンデンさん、ピーポちゃん、ハルちゃん、そして短い付き合いだったけれどサラちゃん。
わたしから解放されても私の事を忘れないでいてくれるかなぁ。
ありがとう。
感謝してもし切れないよ。
気が薄れかけ、落ちていくわずかな時間の間に、ありとあらゆる事が頭の中を駆け巡って行った。
今はまるであの天変地異が無かったようなこの地。
私の心には、人々の恨むような気持は何一つ伝わってこない。
皆この自然を蔑ろにしてしまったことを後悔し、元の姿を取り戻そうと必死になっている。
そんな心をねぎらうように、海は、空は、地は、光り輝き穏やかな風が吹き渡って行いった。
きっと緑の御方は助かったのだろう。
そうで無ければ世界はこんなに素晴らしい訳がない……。
『この愚か者が!』
ゴォッと風が吹き、気が付けば私はリンデンさんの掌の中でした。
『お主は何度同じ事を繰り返すのだ。もう少し周りの者の気を思いやったらどうだ!』
うん、確かにそうだね。
だけど後悔はしちゃった後に思う事なんだよ。
何かを夢中になってやっている時には気が付かないものなのだよ。
指一本動かせず、声の一言も発せない状態でも、反論だけは考えられるんだな。
わたし。
でもリンデンさん、あんただって人の事言えない状態でしょう?
とても飛んでいるとは言えない、ほとんど自由落下に近い状況で、私達はあの山の頂上に降り立った。
取り敢えず外傷は免れたけれど、このまま助かるようにはとても思えない。
しだいに暗闇に落ちていくような中で、私はかすかな声を聴いた。
”礼を言う人の子よ”
”後の事は私達に任せて下さい”
地の神、緑の御方、良かった、本当に良かった。
お礼を言うのは私の方だよ。
この世界を壊さないでくれてありがとう。
人間達を見捨てないでくれてありがとう。
まだダメージがどれほど残っているのか分からない。
ただ今は地道にやって行くしかないのだろう。
とは言え、あとどれほどの時間が残されているかすら分からないのだ。
仕方が無い。
私は現状を確認をするため、残された魔力を振り絞り、辺りが見渡せるほどの上空まで登った。
「良かった……」
見れば、人の立ち入らない山深い場所は、あまり崩壊が進んでいないようだ。
逆を返せば、人が手を付けた所ほど被害が酷かったようで、そのほとんどは私や皆がある程度修復し終わているようだ。
これならあと少し頑張れば、きっと緑の御方は助かるに違いない。
そして後の整備は人間達がゆっくりやって行けばいい。
「おっしゃーー!」
皆がこれ以上疲れない為にも、この私が残りを引き受けようじゃないか。
そう思い、油断し切っていたエレオノーラです。
「ようっし!そこ!!」
そう叫びながら、崩れた崖を、元の姿であっただろう山肌へと形作る。
「次っ、そこ!」
深い亀裂の入った所を、引っ張る要領でつなぎ合わせる。
「それからそこ!」
上から流れて出ていた大量の土砂を、広く平らに均す。
うん、なかなかいいじゃない。
そうだ、今均した所一面に小麦を植えよう。
きっと初夏になれば、見渡す限りの小麦が風になびき、とても素敵な景色になるだろう。
そしてそれを収穫すれば一石二鳥。
実用性も考えているエレオノーラですぅ。
ならばそこに続く道もつけなくちゃな、そう思った時、私の限界が来たようだ。
まず最初に考えた事。
あぁ、空がとっても青くて綺麗だ。
スピードを増し落ちていくのに、のんびりとそんな事を感じた。
まだまだやりたい事が有ったんだけどな。
あちらこちらに私の大好きなチューリップも植えたかったな。
そう言えば小麦もまだ手を付けていない。
私の我儘に突き合せちゃった皆は疲れているだろうな。
ごめんね。
私はまた眠る事になるのかな。
いや、落下している状態なら多分助からないだろう。
向こうでまたミシェルにこっぴどく怒られるだろうな。
絶交されたら嫌だな。
私がいなくなったら、悲しむ人は少なからずいると思う。
母様、父様、イカルス兄様、シルベスタ兄様、ごめんなさい。
私を助けてくれた人達みんなも。
それからこれを途中で投げ出す事になってしまってごめんなさい。
どうか私がいなくなっても、皆で力を合わせ、この地を素晴らしいものにして下さい。
そして私の心の中にずっと居て、それでも恥ずかしくて目を背け続けていたアレクシス様。
せっかく告白しようと決心したけれど、結局できなかったな……。
今となってはそれで良かったと思う。
どうかアレクシス様、今度こそは本当に好きな人と巡り会って、幸せになって下さい。
リンデンさん、ピーポちゃん、ハルちゃん、そして短い付き合いだったけれどサラちゃん。
わたしから解放されても私の事を忘れないでいてくれるかなぁ。
ありがとう。
感謝してもし切れないよ。
気が薄れかけ、落ちていくわずかな時間の間に、ありとあらゆる事が頭の中を駆け巡って行った。
今はまるであの天変地異が無かったようなこの地。
私の心には、人々の恨むような気持は何一つ伝わってこない。
皆この自然を蔑ろにしてしまったことを後悔し、元の姿を取り戻そうと必死になっている。
そんな心をねぎらうように、海は、空は、地は、光り輝き穏やかな風が吹き渡って行いった。
きっと緑の御方は助かったのだろう。
そうで無ければ世界はこんなに素晴らしい訳がない……。
『この愚か者が!』
ゴォッと風が吹き、気が付けば私はリンデンさんの掌の中でした。
『お主は何度同じ事を繰り返すのだ。もう少し周りの者の気を思いやったらどうだ!』
うん、確かにそうだね。
だけど後悔はしちゃった後に思う事なんだよ。
何かを夢中になってやっている時には気が付かないものなのだよ。
指一本動かせず、声の一言も発せない状態でも、反論だけは考えられるんだな。
わたし。
でもリンデンさん、あんただって人の事言えない状態でしょう?
とても飛んでいるとは言えない、ほとんど自由落下に近い状況で、私達はあの山の頂上に降り立った。
取り敢えず外傷は免れたけれど、このまま助かるようにはとても思えない。
しだいに暗闇に落ちていくような中で、私はかすかな声を聴いた。
”礼を言う人の子よ”
”後の事は私達に任せて下さい”
地の神、緑の御方、良かった、本当に良かった。
お礼を言うのは私の方だよ。
この世界を壊さないでくれてありがとう。
人間達を見捨てないでくれてありがとう。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる