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第二章 彼女が欲しい皐月君 編

気が付いちゃった。

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今更ながら、大変な事に気づいてしまった。
そしてそれを確認する為に俺はじっと放課後を待った。

「HR終わり、気を付けて帰れよー。」

先生のいつものセリフ。
俺はすぐさま隣の席の三橋に声をかけた。

「なあ、三橋ぃ。」

「どした。」

「ちょっと聞きたいことあるんだけどさ。」

「ん?まあ、勉強以外だったら、何でも聞いてやる。」
そりゃ、そっちは俺とドングリの背比べって知ってるから、聞くつもりは無いけど。

「三橋さ、か、彼女…とかって、いる?」

三橋が目むいて俺をガン見している。

「さ、皐月が色気づいた―!!」

何だよそれ!!

「何、どうした?」

「皐月が何だって?」

見る間に俺の周りには、何人もの野郎共が集まって来た。
何だよ、
俺は単に、高校の3年生って恋愛経験がいるかどうか知りたかっただけだい。
自慢じゃないけど、俺だって初恋ぐらいしたことはあるんだぜ。
ただここ何年かは、ゲームと勉強ばかりに気を取られて…、いえ、勉強は余計でした。
とにかく話のネタで、彼女がほしいと言った事は有るけど、
実際は女の子と付き合った事は無いし、
本気で恋愛をしたいと、思った事すら無いって気付いてしまったんだ。
でも、みんなはどうなんだろう?
実はみんなも口ばかりで、彼女なんて本当はいないんじゃないの?
そう思ったんだけど、
それは一人で考えても分からない事だから、三橋に聞いてみただけなんだ。

「さっち、もしかして彼女が欲しいとか?」

「いや、欲しいっちゃ、欲しい。(かも)でも、他のみんなは彼女とかいるのかなーって思ってさ。」

すると三橋が、

「俺はいないな。」

ほらな、やっぱりいないんだ。

「つい最近別れたから。」

いたんかい!

「俺、いるぜ、この間OKもらったんだ。すっげかわいい子。」

「何だよ、羨ましい。そう言えば、加藤お前も最近彼女と別れたって言ってたよな。」

「いったいいつの話だよ。今の俺には琴音という可愛い女がいるんだ。」

「はえぇな。」

結局みんなこの手の話好きなんだな。
じゃなくて!みんなけっこう恋愛してるじゃん。

「なあ、過去と現在を含めて、彼女いない奴って……いる?」

結論から言おう、今ここにいる奴ら全員、恋愛経験有りだった。

「じゃぁ、皐月は?」

「……いない。というか、いなかった。」

「「「「「「だよね――。」」」」」」

何で皆でハモるんだよ。

「でもさ、もしかして、セッ……エ…エッチとかって……、経験ある?」

やっぱり野郎はこの話が好きなんだな。
皆経験談も含め、しっかり答えてくれた。
何と、そっちの話は半数以上が経験者で、それ以外でもキスぐらいはしているって。
完全においてかれてるよ、俺。

「よし!俺も彼女をつくる!」

「本気か?」

「皐月に彼女。」

「まあ、反対はせんが。
だけど、俺の予想が間違ってなければ、お前“久遠”の紗月だろ?」

「え?マジ?」

「本当かよ。」

「ハイ。いかにも紗月ですけど、どうかしましたか?」

「どうかしましたかって、お前が紗月ならば、サリューはいいのかよ?」

「サリューに何の関係が有るんだ?」

と言うか、みんな“久遠の大陸”知ってるんだ。でもよく俺の事まで知ってたな。

「だって、お前有名人だから。サリューとセットで。」

「セットでかい!」

「なあ、今度あっちで声かけてもいいか。できればフレンド登録してほしいし。」

「あ、いいねぇ。今度一緒に狩ろうよ。」

俺、あっちで友達あまりいないから、大歓迎だよん。

「ばかかお前。」

「ホント、命知らずだな。」

「なぜ東野が命知らずなんだ?
みんなだって、俺のこと知ってるなら、声かけてくれよ。」

「だって、下手に声かけると、サリューに殺されるって噂だぜ。」

「そんな事ないよ。アバターはあんなかもしれないけど、諒太は昔からいい奴だから。」

「え、なに、リアルで知合い?」

「うん、こっちに引っ越してくる前からのね。
あいつとは幼馴染でさ、年だって俺達と一緒だよ。」

「それじゃあなおさら、彼女は諦めた方がいいと思う。」

何故だ?

「ちょっと確認。
こっちに引っ越してから、リアルでも会ったことある?」

「ああ、この夏休みにも会ったよ。
その時色々あってさぁ、前から過保護気味だったのが、
あれから度を超すようになっちゃったみたいで、
この間の連休だって俺が風邪ひいて寝込んだって言ったら、
看病するってわざわざ東京まで来たんだぜ。
お袋だってちゃんといるのに、まったく何考えているんだか。」

「リアルもゲーム内もか…悪い事は言わん、彼女は諦めろ。」

何で諦めなくちゃならないんだよぉ。

「だけど、もし本気で彼女を作るとしたら、
お前リアルで、彼女との時間作れるの?」

「………。
確かに今までの俺は、ゲーム三昧でした。
だけど、彼女が出来たらきっと変わる。変われる……と思う。」

「彼女が出来たらって、彼女は湧いて来るもんじゃないんだぜ、
彼女を作るなら努力しなくちゃダメなんだ。
その為にはゲームだって我慢してだな………。
皐月お前、好きな子と言うか、好みの子っているの?」

「好きな子なんていないよ。いないとダメなの?」

「「「「「「…………。」」」」」」

「皐月、お前はまず、気になる女子を探せ。
話はそれからだ。」

「お前に彼女は早すぎる。」

「何でさ、皆だって恋愛経験あるんだろ。
俺だって恋愛したっていいじゃん。なあ、三橋。」

「お前、恋愛するってこと自体理解してねえんじゃないか?」

「え―恋愛ってさぁ、一目会ってすぐ胸がときめいて、それから。」

「それから?」

「それから…。どうなるの?」

「まあ、そりゃあ、恋愛してみなきゃ分からない事だからな。」

「でもなー、リアルでもサリューが皐月を囲い込んでいるとなると、女子と恋愛なんて無理なんじゃないか。」

「「「「「「だよね――。」」」」」」
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