緊急事態!VRMMO”久遠の大陸”に閉じ込められた俺

羽兎里

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第二章 彼女が欲しい皐月君 編

紗月の理想

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「と、言う訳なんだよね。」

俺は久遠のプレイ中、ゴッタニ亭でエイジさんに愚痴をこぼしていた。
だからエイジさん幾ら顔を背けても、その肩の震えが笑いを我慢しているのバレバレだって。
そんなにおかしいかなぁ、俺に彼女って。

「いや、すまん。プッ、ついな、頭に浮かんでしまったことが、離れなくて。」

そう言いながらも、異様にエイジさんの顔がゆがんでいるんですけど…。

「その、頭の中のものを、聞かせてもらってもいいですか。」

「ぜひ、聞いてもらいたいけど、聞いたら紗月は絶対に怒るだろう?」

まあ、多分怒るだろうけど、エイジさんが何考えているか、興味も有るんだよね。

「100歩譲って、怒らないので、聞かせて下さい。」

「本当に怒らないか?」

「多分。」

「多分かー、ま、いいや。
いや、紗月が女の子と一緒に居る姿を思い浮かべてみたら、
小川の辺で、園児服を着た女の子とお手々繋いでランランランって……。怒った?」

テーブルに突っ伏している俺に向かって、恐る恐る聞いてきたエイジさん。
いーえ、怒っていませんとも。
もうそんな事通り越して、脱力感と言うか、情けないと言うか……。
やっぱり俺のイメージって、そうなんだよね。

リアルで彼女を作るなら、ゲームの時間を割かなくちゃならない。
それならゲーム内で作ればいいじゃん。一石二鳥!
そう思って、顔の広そうなエイジさんを頼ってきたんだけれど、
この分じゃ望み薄かな?

「エイジさん、俺リアル17歳なんだけどなぁ……。
よし!貯金はたいて、アバターを変更する!」

幸い例の事件で稼いだバイト代がまだ残っている。
チョット惜しいけれど、あれを課金すれば、かなり理想的なアバターが作れるはずだ。

「まず身長だよな。サリュー程とは言わないけど、いや、有ってもいいか。
うん。マッチョはネコキャラには不似合いだけど、
戦闘力を上げるにはもう少し筋肉付けて、
そうだな…、シッポももうちょっとモフッて………。」

俺の頭の中には、背が高くて、かっこいい衣装を身に着けたネコキャラが、
モフモフの長い尻尾をなびかせて、さわやかに笑いながら佇んでいる姿を思い浮かべていた。
いい!絶対いいじゃん!

「ストップ、ストップ。頼むからやめろ。俺を殺す気か!」

「なぜ俺がキャラ変更すると、エイジさんを殺すことになるんですか?」

「だって、サリューとか、お前のスレの奴らとか、
俺がそそのかしたと思うかもしれないだろ。」

そう思われると、不味いんですか?

「とにかく、キャラ変はするな。
それにしても、そんなに彼女が欲しいのか?」

「はい。」

「紗月は何故、そんなに彼女が欲しいんだ?」

エイジさんが、可哀そうな者を見るような眼をして言った。

「え、だってみんな彼女います、もしくはいましたって言ってたし、
俺だけ経験無いってハズイじゃん。
それに此処だったら、ゲームしながらデートすればいいんだし、
ゲームの時間減らさなくていいし、一石二鳥でしょ。」

「ふーん、ただ自分だけ彼女がいないから作りたいだけなんだ。
それって女の子に対して失礼じゃない?」

「ぐっ。」

「お前さぁ、見栄の為に彼女を作るならやめとけ。
大体にして、彼女が出来たとしたら、その子と何するつもりなの?」

「えー、そうだなぁ。」

恋愛経験値0の俺は、持てる知識を総動員して考えた。

「そうだな…、デートをする。」

「具体的には?」

「まあ、ゲームの中だから、魔物狩りとか、」

「うん、それから?」

「あとは、出店を冷かしたり、飯を食ったり、情報交換?したり……。」

「後は?」

「後は…、後は何するもんなの?」

「お前なぁ……。それって、彼女じゃな似ても出来んじゃねぇ?」

そう言って、深くため息をつくエイジさん。
そう言われればそうかも。
そしてふと思い浮かんだのが、サリューっだった。

「そう言えば、俺が何かしたいって言うと、
サリューはいやな顔一つしないで、大抵の事に付き合ってくれたな。」

「少しはサリューの事、自覚してるのか。」

「え、何を?」

「無自覚かい!サリューも大変だよな。」

だ―かーらー、サリューに何の関係が有るんだよ。
みんなやたらサリューの事言うけど、奴は俺の保護者じゃありませんって。

「ま、何事も経験だ。お前がそんなにお付き合いとやらをしたければ、
店の常連さん紹介してやってもいいけど…。
おまえ好みのタイプってあるの?」

「好み?」

「例えば背は小さくて、細身とか。」

「いや、背は低いより高めが好みだな。
それに、細いよりはある程度ボリュームがある方が好み。」

「…ふーん、もしかして、髪の色は黒がいいとか。」

「お、分かってんじゃん。
そうだよね―、やっぱり日本人だし、黒っていいよねー。
サリューの黒髪なんて、すごっく似合ってるし、かっこいいと思わない?」

「お前は全然分かってないみたいだな。」

「何が?」

「もういいや、一度思い知るといいよ。」

エイジさんはそう不吉な事を言うと、何もない空間に、指を走らせ始めた。


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