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全ては起こるべくして起こり、収まる所に納まる 6
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「エリック坊ちゃま、良くお戻り下さいました。」
涙をポロポロ流しながら僕の頬を撫でるマーガレットの手は、相変わらず暖かい。
屋敷で一番心配症だったマーガレットだから、きっと僕の事をずいぶん心配したんだろうな。
「心配かけてごめんね、マーガレット。」
「いえいえ、ご無事でお戻り下さったんですもの。それだけでもう……。」
「積もる話も有るでしょう。良かったらこちらでお茶をしながらいかが?マーガレット貴方も一緒に。
ギランさん、お時間は大丈夫ですか?」
「ええ、実は明日ノルディスカスを離れる予定で、
マシューが最後に屋敷を訪れたいと言っていたので、
元々挨拶ついでにここに来る予定だったのです。」
「まあ、では結果的に此処に来て正解だったのね。」
「思わぬ結果にはなりましたがね。」
なぜか笑い合っているお二人ですが、最終的に僕は来たいところに来れたので、良かったです。
「では、私はお茶の用意をして参りましょう。」
そう言ってマーガレットは部屋を出ようとする。
「マーガレット、まだ話したいことが有るんだ。ちゃんと戻ってきて一緒にお茶をしてね。」
「いえ、私など…。こうしてエリック坊ちゃまの無事な姿を見れたんですもの、また後でゆっくりお時間が有る時にでもお話下さればいいですよ。」
そう言って笑ってくれるけど、僕にはあまり時間が無いんだ。
「ダメなんだ。僕はもうこの家にはいないんだから。」
「え!何故なんですか?また何処かに行かれるのですか?」
「マーガレット、話は長くなるから詳細は私が後でゆっくり話すけれど、実はエリックは結婚したのよ。」
「えっ!エリック様もですか?」
多分、お姉さまが結婚したことは聞いたんでしょう。
最初は驚いていたマーガレットだけど、とても素敵なほほえみで僕を祝福してくれた。
「まあまあ、おめでたい事が続いて。ようございました。
おめでとうございますエリック坊ちゃま。
いえ、もう坊ちゃまではおかしいですね。」
「そう、そうだよ。坊ちゃまはやめてね。」
「それなら…、こちらの方が旦那様ですね。」
そう言ってアダム様に目を向けた。
良く分かったね。
「そりゃあ、分かりますとも。
何と言っても大事なエリック坊ちゃまの旦那様ですもの。
何てお似合いのお二方でしょう。」
やっぱり坊ちゃまなんだ…。
そう言えば、会うのは少し怖いけど、お父様達にも報告しなくては。
「お姉さま、お父様達はいらっしゃいますか?」
するとお姉さまは、少し困ったような顔をしてアダム様の方に目をやった。
それを受けたアダム様が、
「マシュー、実は…。」
「いえ、お父様達は仕事が忙しくて出かけているの。
お戻りはいつになるのか分からないわ。
エリックの、いえ、マシューの事は私からちゃんと話しておくから、心配しなくても大丈夫よ。」
「そうなんですか…。
ではよろしくお伝え下さい、お姉さま。」
なぜか少しホッとする僕。
それから僕たちは居間に移動し、椅子に腰かけた。
そしてアダム様は一通の封筒を取り出し、お姉さまの隣に腰かけたイアン様の前に置く。
「あなたの件で一応姉に連絡を取ってみた。案の定これを受け取る気はないとの事だ。」
それってイアン様の辞表ですか?
「受け取ってもらわなくとも、私に戻る気は有りません。」
「だが、姉もあなたを解雇する気は無いと言っていたぞ。
だがその代わり1年の休暇をやるからその間に野暮用は片付けるようにと、
もし必要であれば力も貸すとも言っていたが。」
「そんな訳には…。」
「姉も結構計算高いから、あなたをまだ離したくないのだろう。
だからこそ、必要とあらば、あなたも姉を利用してやればいい。
この件に関しては、私にも色々責任がある。
相談が有れば乗るが、いかがかなシルビア嬢。」
「是非とも、お願いしますわ。」
お仕事の話は僕にはよく分からないけど、うまくいきそうで良かった。
話をしていると、マーガレット達がお茶やお菓子などを運んできてくれた。
ルビーやアントニーもいる。庭師のカルタナまでが、何故かサンドイッチを乗せたトレーを運んで来ていた。
そして代わる代わる僕たちにお祝いの言葉をかけてくれる。
ありがとう。僕は此処を離れてもみんなの事を忘れない。
みんな大好き。
「そうでした。お友達のベンジャミン様が、何度も訪ねていらっしゃいました。
ワロキエ様との破談の件で、ずいぶん坊ちゃまの事を心配していらっしゃいましたよ。」
「ベンジャミン?」
すぐには思い出せなかったけれど、たしか同じクラスの子だったはず。
「マシュー、誰だい?」
「確か同じクラスだった…、えーと、
あっ、ベンジャミン・ソニエールだ。
αなのにとても僕に良くしてくれたんですよ。」
「なに。」
アダム様、眉間にしわがよっていますよ。どうかなさったんですか?
横でジーク兄様が面白そうに笑っている。
ほら、アダム様も笑って?
「ただのお友達ですよ。
私も何度か見かけたことが有ります。
彼はどう思っているか分からないけれど、この子は全然…。
今度訪ねてきたら、私からうまく言っておきますわ。」
そうだ、僕に良くしてくれた数少ない友達だった。
心配してくれた事のお礼と、今回の一件の説明をしなくちゃいけないけど、
今は時間が無いですね。
「今度彼が来たら、僕からちゃんと手紙か、電話をすると伝えて下さい。
あ、連絡先覚えていない。お姉さま、ベンジャミンから聞いておいて頂けますか?」
「そんな事はしなくていい。」
いきなりそう言うアダム様。
見るとアダム様、眉間のしわが更に深くなっていいる気がする。
ムニッと押してみたくなって、伸ばした僕の手を取り、アダム様はその指先にキスをする。
皆がいるのに、恥ずかしいじゃないですか!
「まったく、大人げない方ね。」
お姉さまは、カップを片手に笑いながらこちらを見ている。
皆も笑っている。
なぜかとても幸せです。
涙をポロポロ流しながら僕の頬を撫でるマーガレットの手は、相変わらず暖かい。
屋敷で一番心配症だったマーガレットだから、きっと僕の事をずいぶん心配したんだろうな。
「心配かけてごめんね、マーガレット。」
「いえいえ、ご無事でお戻り下さったんですもの。それだけでもう……。」
「積もる話も有るでしょう。良かったらこちらでお茶をしながらいかが?マーガレット貴方も一緒に。
ギランさん、お時間は大丈夫ですか?」
「ええ、実は明日ノルディスカスを離れる予定で、
マシューが最後に屋敷を訪れたいと言っていたので、
元々挨拶ついでにここに来る予定だったのです。」
「まあ、では結果的に此処に来て正解だったのね。」
「思わぬ結果にはなりましたがね。」
なぜか笑い合っているお二人ですが、最終的に僕は来たいところに来れたので、良かったです。
「では、私はお茶の用意をして参りましょう。」
そう言ってマーガレットは部屋を出ようとする。
「マーガレット、まだ話したいことが有るんだ。ちゃんと戻ってきて一緒にお茶をしてね。」
「いえ、私など…。こうしてエリック坊ちゃまの無事な姿を見れたんですもの、また後でゆっくりお時間が有る時にでもお話下さればいいですよ。」
そう言って笑ってくれるけど、僕にはあまり時間が無いんだ。
「ダメなんだ。僕はもうこの家にはいないんだから。」
「え!何故なんですか?また何処かに行かれるのですか?」
「マーガレット、話は長くなるから詳細は私が後でゆっくり話すけれど、実はエリックは結婚したのよ。」
「えっ!エリック様もですか?」
多分、お姉さまが結婚したことは聞いたんでしょう。
最初は驚いていたマーガレットだけど、とても素敵なほほえみで僕を祝福してくれた。
「まあまあ、おめでたい事が続いて。ようございました。
おめでとうございますエリック坊ちゃま。
いえ、もう坊ちゃまではおかしいですね。」
「そう、そうだよ。坊ちゃまはやめてね。」
「それなら…、こちらの方が旦那様ですね。」
そう言ってアダム様に目を向けた。
良く分かったね。
「そりゃあ、分かりますとも。
何と言っても大事なエリック坊ちゃまの旦那様ですもの。
何てお似合いのお二方でしょう。」
やっぱり坊ちゃまなんだ…。
そう言えば、会うのは少し怖いけど、お父様達にも報告しなくては。
「お姉さま、お父様達はいらっしゃいますか?」
するとお姉さまは、少し困ったような顔をしてアダム様の方に目をやった。
それを受けたアダム様が、
「マシュー、実は…。」
「いえ、お父様達は仕事が忙しくて出かけているの。
お戻りはいつになるのか分からないわ。
エリックの、いえ、マシューの事は私からちゃんと話しておくから、心配しなくても大丈夫よ。」
「そうなんですか…。
ではよろしくお伝え下さい、お姉さま。」
なぜか少しホッとする僕。
それから僕たちは居間に移動し、椅子に腰かけた。
そしてアダム様は一通の封筒を取り出し、お姉さまの隣に腰かけたイアン様の前に置く。
「あなたの件で一応姉に連絡を取ってみた。案の定これを受け取る気はないとの事だ。」
それってイアン様の辞表ですか?
「受け取ってもらわなくとも、私に戻る気は有りません。」
「だが、姉もあなたを解雇する気は無いと言っていたぞ。
だがその代わり1年の休暇をやるからその間に野暮用は片付けるようにと、
もし必要であれば力も貸すとも言っていたが。」
「そんな訳には…。」
「姉も結構計算高いから、あなたをまだ離したくないのだろう。
だからこそ、必要とあらば、あなたも姉を利用してやればいい。
この件に関しては、私にも色々責任がある。
相談が有れば乗るが、いかがかなシルビア嬢。」
「是非とも、お願いしますわ。」
お仕事の話は僕にはよく分からないけど、うまくいきそうで良かった。
話をしていると、マーガレット達がお茶やお菓子などを運んできてくれた。
ルビーやアントニーもいる。庭師のカルタナまでが、何故かサンドイッチを乗せたトレーを運んで来ていた。
そして代わる代わる僕たちにお祝いの言葉をかけてくれる。
ありがとう。僕は此処を離れてもみんなの事を忘れない。
みんな大好き。
「そうでした。お友達のベンジャミン様が、何度も訪ねていらっしゃいました。
ワロキエ様との破談の件で、ずいぶん坊ちゃまの事を心配していらっしゃいましたよ。」
「ベンジャミン?」
すぐには思い出せなかったけれど、たしか同じクラスの子だったはず。
「マシュー、誰だい?」
「確か同じクラスだった…、えーと、
あっ、ベンジャミン・ソニエールだ。
αなのにとても僕に良くしてくれたんですよ。」
「なに。」
アダム様、眉間にしわがよっていますよ。どうかなさったんですか?
横でジーク兄様が面白そうに笑っている。
ほら、アダム様も笑って?
「ただのお友達ですよ。
私も何度か見かけたことが有ります。
彼はどう思っているか分からないけれど、この子は全然…。
今度訪ねてきたら、私からうまく言っておきますわ。」
そうだ、僕に良くしてくれた数少ない友達だった。
心配してくれた事のお礼と、今回の一件の説明をしなくちゃいけないけど、
今は時間が無いですね。
「今度彼が来たら、僕からちゃんと手紙か、電話をすると伝えて下さい。
あ、連絡先覚えていない。お姉さま、ベンジャミンから聞いておいて頂けますか?」
「そんな事はしなくていい。」
いきなりそう言うアダム様。
見るとアダム様、眉間のしわが更に深くなっていいる気がする。
ムニッと押してみたくなって、伸ばした僕の手を取り、アダム様はその指先にキスをする。
皆がいるのに、恥ずかしいじゃないですか!
「まったく、大人げない方ね。」
お姉さまは、カップを片手に笑いながらこちらを見ている。
皆も笑っている。
なぜかとても幸せです。
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