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ジークフリード偏

罰せられる者 1

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「ロシニョール?
今更あそこに何の用が有るんだ?」

「いえ、ちょっとあの者を潰してやろうと思いまして。」

「ふーん……、番に対しての私怨と言うやつか。
君はもっと、クールな奴だと思っていたが、
成程ね……、怖い怖い。」

「別に断られても構いませんよ、
他をあたるだけですから。」

「何も、やらないとは言ってないだろう?
なかなか面白そうだし、暇つぶしになりそうだ。
実は私も、あの男が気に食わなかったんだよ。」

そう言って、私の叔父であるオズワルドがにやりと笑う。

「あの男は自分以外の人間を道具としか考えていない。
それが子供や、年老いた女性だろうが、お構いなしだ。
あの男はこの世にとって、害悪だよ。」

叔父がそう言うならば、協力を肯定したと思ってもいいだろう。
私としては、この件は誰の力も借りず、一人でやり遂げたかったのだが、
汚れ仕事が明るみに出れば、アルヴィンに嫌われる可能性がある。
それは困る。
役者を雇う事も考えたが、寝返る可能性を考えれば、叔父上が一番の適任者だ。

「で、君にはプランが有るのかい?
その辺の知恵も貸した方がいいのかな。」

そう言う叔父は、ずいぶんと楽しそうだ。

「人の不幸は蜜の味ってね。
あの男のゲスな笑い顔が、早く苦痛で歪むところを見て見たいね。」

「そうなりますとも。」

「君がそう言うのであれば、そうなんだろう。
さて、君の計画を聞かせてもらおうか。」

そう言って叔父は、書斎の椅子に深く腰掛け直した。




「さて、今日ここにロシニョールと、その婚約者が来ている筈なんだが……、
君、本当にこんなお願を聞いてくれるのかい?
まあ、私の周りで一番魅力的で、口の堅い女性は君が一番なのだから声を掛けたが、
もし不安であるなら、今から断ってくれてもいいんだよ。
勿論引き受けてもらえたのだから、成功、不成功を問わず、お礼は十分させていただくが。」

私は隣に佇むキャシディーに確認をする。

「いやだわ、私はお礼なんていりません。
おじさまの力になりたいだけです。
でも、おじさまを一週間独占させていただく約束は、ちゃんと守っていただきますけど。」

「分っているよ、子猫ちゃん。
もし、うまく行ったなら一週間でも、二週間でもお気に召すままに。」

「本当に?では、2週間おじさまを独占できるように、わたし頑張ります!」

「はは、それではよろしくお願いします。」

そう言って、彼女のピンク色の唇に、
ちゅっとリップ音をたててキスをした。
キャシディーは真っ赤になりながらも、しっかりと頷く。
やはり女性とは可愛いなぁ。
なぜあの男は、女性を自分の道具としてしか見れないのかなぁ。
もったいない。

それから私は彼女の腰を抱き、店の中を物色して歩いた。



やがて、カウンターに女と一緒に座り、酒を飲んでいる
ロシニョールを見つけた。

にやにやと、厭らしそうな顔で女を見つめている。
だが、連れの女もそう悪い気ではなさそうだ。

「これはロシニョール殿、久しぶりですね。
今日はお嬢様とデートですか?」

「これはこれは、オズワルド様、
ご無沙汰しております。
いえ、今日は……知り合いと、ちょっと飲みに来ただけです。」

キャシディーに目をやってから、少し言い澱んだ様にそう続けた。
彼女が婚約者と言う事が、恥ずかしくなったのだろう。
何せ私の連れは、とびっきりの美人で、その上とても上品な人だ。

自分の連れは、どう見ても水商売の女と間違われそうな姿形をしてますからね。
しかし、どうやら女の方は気分を害したようで、ロシニョールの脇腹をつねっている。
可愛い事をしているな。
私はそんな姿も可愛いと思うのに、どうやらロシニョールの方も、女に腹を立てたようだ。

「これは大変失礼をした。
申し訳ありませんレディ。」

私は、取って置きの笑顔を彼女に送る。

「いえ、そんな…お気になさらないで下さい。」

頬を染め、はにかみながらそう言う姿はやはり可愛い者だ。

「オズワルド様、あまりお邪魔をしてはいけませんわ。
そろそろ行きませんと……。」

そうかい?ではこれで失礼します。と断り、
私とキャシディーは、その場を後にした。



「さて、種まきは終わった。
だが、この後は君大丈夫かい?
もし何だったら、君抜きでも何とかするけど……。」

「大丈夫ですわ。
ただ私は、あのガマガエルを誘惑するだけ。
気持ち悪いけど、おじさまの為ですもの。
それに、もしあいつが厭らしい事をしてきた時は……。」

そう言いかけて、キャシディーは自分のバックを少し開いて見せた。
中には小型の銃が入っている。

「ね、お守りが有りますから大丈夫です。
正当防衛に持ち込む事は簡単ですわ。
何と言っても、私はか弱い女性ですから。」

「おお、何て怖い私の子猫ちゃんだろう。
余り爪は出さないようにして、なるべく穏便にね。
例え正当防衛でも、君に銃は似合わないから。」

「嬉しい、おじさま!」

ん~かわいい、いい子、愛しているよ。

「さて、名残惜しいけど、次、行くよ。」

「はい、おじさま!」

そう返事をし、私の可愛い戦士は店の中に入っていった。


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