黒頭巾は異世界で…

雪城 いぶき

文字の大きさ
80 / 82

76話 朝

しおりを挟む
翌朝まだ暗いうちから起きたメイジー。

"いつもの時間だ~。"と思いながら、ベッドから上体を起こし背伸びをする。

《アディス、ライアス、エヴァドネ?メイジーだけど、おはよう。》

……返事が無い、そりゃあね、朝起きるには少し早いものね。

《アディス?ライアス?エヴァドネ?》

《…メイジー?》

最初に念話で話しかけてきたのはアディスだった。

《うん。おはよう。また、後でね。》

《ああ。》

後はライアス達か…。

《ライアス?エヴァドネ?》

《…メイジーか?》

《うん。おはようライアス。》

《ああ、おはよう。いつも、こんなに朝が早いのか?》

眠そうな声でライアスが念話で問い掛ける。

《うん。この時間に起きて目が冴えちゃって…。これから支度して裏庭に向かうよ。アディスも起きて、多分、今支度してる所。》

《わかった。エヴァドネを起こして、向かうよ。》

《お願い。また、後でね。》

念話を切り、運動が出来る服に着替えて、顔にクリーンの魔法をかけたメイジーは裏庭に向かったのだった。



裏庭に出ると、まだアディスも来ていない。
薄暗い中庭にライトの魔法で淡い光を発動させる。

後ろからアディスが現れメイジーに声を掛ける。

「メイジー、ライトの魔法か?」

「?うん。すぐ明るくなると思うけど、昨日は暗いな~っと思ったから、私一人なら点けなくてもいいけど、今日はメンバーと一緒だから。」

アディスが口を開きかけて、後ろからライアス達がやって来た。

「ふあ~~ぁ。おはよ~。」

エヴァドネはあくびをしながら目を擦りライアスと一緒に現れた。

「エヴァドネおはよう。」

「ん。…メイジー?ホント朝早いのね~。」

「私もそう思う。」

頰を掻きながら応えるメイジー。


「アディスは昨日やったから覚えていると思うけど、鍛錬をする前に怪我をしないよう体をほぐす運動、準備運動とも言うんだけど、私が見本でやるから、見ながら同じ動きをしてね。」

メイジーはライアスとエヴァドネの顔を見て説明をする。頷いたのを確認して、体を動かしていった。

深呼吸から始まり、手首、足首、肩、首を回し、脇の下の筋や太ももの内側の筋など次々とほぐしながら運動をする。

「どう?目も冷めてきたかと思うけど…。」

「そうだね。なんだか、清々しい気分になってきたよ。」

「すぐ動けそうだな。」

準備運動を終えメイジーがエヴァドネとライアスに尋ねると、体を軽く動かしながら応えてくれる。


「今日はどうしようか?四人だから、二人に別れて組手をするか。それとも混戦を想定した、武器ありにするかだと思うけど…。」

「今日は二人に別れてやろう。俺とエヴァドネ、ライアスとメイジーで別れてやる。」

私達はアディスの提案に頷いて、それぞれ別れて少し離れた位置で始める事にした。




「なっ!?くはっ!」

ライアスは今、何が起きたのか、仰向けの状態で驚いていた。

「ライアスもやられたか?」

片方の口角を上げて笑うアディスがエヴァドネの組手に一段落つき、ちょうどライアスの投げ飛ばされている場面を目撃してライアスに声を掛けた。
アディスの横でエヴァドネは口を開け瞠目していた。

「アディスもか?」

「ああ。」

上体を起こしアディスに聞くライアス。

アディスから手を差し出されライアスは手を掴み立ち上がる。

「今のどうやったか教えてくれ。」

「あっ、私も!」

ライアスから頼まれ、またエヴァドネも右手を上げ挙手をし賛同する。


ここからは、昨日アディスにも口で説明したが、それを実演し、受け身も同時に教える事にしたのだった。



「アディスもライアスもメイジーに投げ飛ばされたなんて…。あの光景をみたら、驚きよね~。」

今は朝食を皆んなと食べながら、朝の鍛錬中の事を思い出しエヴァドネが話し出す。

「それに、この私でも出来るんだから、凄い技よ~。」

「多分、すぐには出来ないよ。格闘、戦闘経験もあるエヴァドネだから出来る事で。素人なら月単位で習う技よ。」

「しかし、初めて見る型で戸惑った。」

「私も初めて見たよ。あの動きは読みづらい。」

ライアスもエヴァドネもアディスと同じ事を言い、食事を口にする。

「故郷の技をいろいろと覚えて自分流にアレンジしたのを組み合わせているだけだよ…、ははは。」

メイジーは頰を掻きながら乾いた笑いを漏らす。

そう、戦闘術は自分流にアレンジを加えている。
護身術から始まり、空手、柔道、合気道、少林寺拳法、太極拳、古武術など、あとは武器の扱いをマスターした事。
武術や武器は、ゲーム時代にアシストがある。レベルが上がるにつれ、今はアシスト無しでも扱えるようになった。

今や、この世界ではチート並みである。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...