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27.※ キスしていい?

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街に出て、2人でふらふら服とか見て歩く。


家にいた方がべたべたできるから、特に目的無く2人で出歩くことって、つき合いだしてからはあんまりなかったな・・・・・

それなのに外に出たのは、あきらは2人で家にいたくなかったから・・・・?

でも、それはオレも同じかもしれない・・・・・・



「コレ、レイキ似合いそう」

あきらがショーウィンドウに飾られている服を指して言う。


淡いピンク色のシャツ。


「ピンク? オレ、似合うかな・・・・」

どうしてもピンクって女のコのイメージだから、着たことないな。


「レイキ、優しい感じだから、こういう色も似合うと思う」

あきらはオレをみて微笑んだ。



どきんっ



あきらの微笑みに、心臓が跳ねる。


「そ、かな・・・・・」

カオが赤くなりそうで、恥ずかしくて、視線を逸らす。


不意に、あきらに腕を掴まれた。


「試着してみろよ。 きっと似合うから」

「え、でも」

「オレ、これ着てるレイキが見たい」


あきらに言われて、オレは試着してみることにした。



試着室に入って、着替えてみる。


「・・・・・うーん・・・・」

鏡に映った自分を見て唸る。


まあ、思ったより、悪くはない・・・・・かな・・・・・



「レイキ、どう?」

試着室の外からあきらの声がする。


「んー・・・・・ どう、かなあ・・・・・・」

でも、あきらに見せる自信はない。

「やっぱ、やめる」

脱ごうとボタンに手をかけると、


「見せろよ」


そう言って、あきらがカーテンを割って首を突っ込んできた。


「わっ! ちょ、あきら!」

いきなり覗かれて、あわててしまう。


「お、やっぱいーじゃん」

あきらはオレを見て、口角を持ち上げた。

「似合ってる」


「え、そ、そう・・・・・?」

「うん。 すげえ似合ってる。 レイキ、かわいい」


あきらに褒められて、嬉しくて、照れくさくて、カオが赤くなるのが分かった。


「レイキ」

あきらが、試着室の中に入ってくる。


「えっ? ちょっと、あきら・・・・!」

な、なんで入ってきてんだよ!?


狭い試着室の中で、あきらとの距離が、すげえ近くなる。


「ゴメン。 レイキ」

ぎゅうって、あきらに抱きしめられた。


あきらの、香水の香りにも、包まれる。



「・・・・・キス、したい」


耳元で、ささやかれて。


オレの腰に、甘いしびれが走る。


「で、でも」

「・・・少しだけ、だから。 ・・・・・いい・・・・・・?」


あきらの囁きに、ぞくぞくしてしまう。


・・・・普段は、『キスしていい?』なんて、聞いてこない。

強引に、キス、してくるのに・・・・・・・



やっぱり、昨日のことがあるから・・・・?

あきら、遠慮してるのかな・・・・・・・

今日家でも全然、キスしてこなかったし・・・・・・・・


「・・・・オレ、レイキに、キス、したいよ・・・・・」

あきらの吐息が、耳にかかる。


オレはそれだけで反応してしまいそうになる。



オレだって、あきらと、キス、したい・・・・・・



オレはあきらの首に腕を回した。

そのまま、黙ってあきらの唇に自分からキスをする。


触れるだけの、キス。


でも、オレが唇を離すと、すぐにあきらは深く唇を重ねてきた。



「ん、んんッ・・・・・・」



舌が、絡め取られて。



「は、ふぅ・・・ん」



くちゅ、ぴちゃっ。



お互いの息遣いと、舌を絡める水音が、響く。



「レイキ・・・・すげえ、やらしーカオ・・・・・」


あきらが口角を持ち上げてオレを見る。


「んんっ・・・・・」


その手は、服の裾から中に入ってきて、オレの腰を撫でている。



「好き・・・・・ 好きだよ・・・・・」


耳元で、甘く、囁かれる。


「や、ぁ・・・・・っ」


撫でられる腰が、揺れてしまう。





「お客様ー。 いかがですか?」

試着室の外から、声をかけられる。


オレはびくっと、全身を震わせた。


返事をしようと開いた口を、あきらの手に塞がれる。


「イイみたいです」

口を塞がれたオレの代わりに、あきらが返事をする。


「そうですか。 そのシャツに合う、おススメのパンツがあるんですが、御試着されませんか?」

「じゃあ、持って来てもらえますか?」

「少々お待ちください」


あきらの答えに、店員が遠ざかって行った。


「あ、きら! こんなとこで・・・・!」

口を塞いでいたあきらの手を払いのけると、あきらに抗議する。


「ゴメン。 レイキがかわいかったから」

フッて笑って言うあきら。

「レイキ、このシャツ、買おうぜ。 オレ、着て欲しい」


あきらにそう言われたら、オレだって嬉しいし・・・・・


「・・・・わかった・・・・・」




あきらが試着室の外に出て、オレが着替えていると、店員がパンツを持って戻ってきた。

パンツは買うつもりはなかったから、あきらがやんわり断ってくれていた。





「ありがとうございました。 またお越しくださいませ」


店員に見送られて、店を後にする。



「あきら、ありがとな。 勧めてくれて。 自分じゃ、選ばない色だからさ」

「すげえ似合ってたよ。 かわいかった」


カッコいいあきらにそうやって褒められて、恥ずかしくなってくる。


・・・・・・他の人にかわいいって言われても、あまり嬉しくないけど。

あきらに言われると、すげえうれしい。


なんでだろう。

オレは男なんだし、かわいいって言われても・・・・・・嬉しくないはず・・・・なのに



あきらにとっては、かわいいって思われる自分でいたいのか・・・・・・?


女じゃ、ないのに。



オレは今買ったシャツの入った袋を、ぎゅっと握りしめた。


・・・・だいたい、料理をちゃんとやろうって思ったのだって、発想が、女みてーだったし・・・・・・・



「・・・・・あきら」

「うん?」


「オレ、さ・・・・ 男、だよ・・・・・?」


あきらはオレの言葉に少し首を傾げる。


「・・・・・わかってるぜ?」


うん・・・・ そりゃ、そーだよ、な。


不思議そうなカオでオレを見るあきら。

「どうしたんだ?
・・・・・・また、何か、考えてる?」

少し、心配そうな声色になる。


「い、いやさ。 大学生の男に、かわいーってのもどうかと思って」


かわいいって言われるのが嬉しいなんて。

恥ずかしくて、気付かれたくなくて、オレは慌てて言った。


あきらはフッて笑って、

「・・・・ゴメン。 かわいいなんて言われんのやだった・・・・?」


あきらの微笑みにどきどきする。


オレ、どんだけ乙女みたいなんだよ・・・・・


「いやって、いうかさ・・・・・」

「だってさ、すげーかわいいんだ」

あきらはどきどきしてるオレの耳元に、口を寄せてきた。


「・・・・欲を言えば、そういうかわいいとこ見せんの、オレの前だけにしてほしいんだけど」


あきらの言葉に、さらに心臓の動きが早くなって、カオが赤くなるのが分かる。



・・・・って言うか、あきら、どんだけ甘いこと言ってんだ・・・・・


言葉だけで、蕩けそうになる・・・・・・・



「・・・・・そう。 そういう表情とか・・・・な?」

あきらは口角を持ち上げて、オレを見ていた。


急に恥ずかしくなって、オレはうつむく。

「ど、どんな表情だよ! っていうか、あきらのせいだろ!」


慌てるオレの手を、あきらは取った。


「レイキ。 2人きりに、なりたい」


真っ直ぐに、熱を持った瞳で見つめられて、オレの心臓が跳ねる。




そのとき。



♪~~


オレのスマホが鳴りだす。


「ゴ、ゴメン」

あきらは手を放してくれた。


オレは慌ててスマホを取り出して、電話に出る。

「もしもし?」

『あ、玲紀?』


電話の相手は、ねーちゃん。


「何? どしたんだよ?」

『うん・・・・ 玲紀、この間、ホント、ゴメンね』


ねーちゃんにしては、しおらしい。

・・・・まあ、あれからまだそんなに経ってないし、立ち直ってはいないだろうな・・・・・・


「うん・・・いいよ、別に。 大丈夫なのか?」

『うん。 ・・・・・それでね、今日玲紀、どーせヒマなんでしょ?』


ぴきっ。

・・・・せっかく心配してやったのに。


「どーせって、なんだよ」

『玲紀のコトだから、彼女とかまだできてないんだろうと思って』


むかつく。

・・・・・・少ししおらしいとか思ったけど、全然だ。


「うるせーな」

『今日とか、夜、ヒマなんじゃない?』

「うるせーって。 ヒマじゃねーよっ」

『またまたー、ムリしちゃって』

だから、ムリじゃねーっての。


『この間のお詫びにね、ゴハン作ってあげようかと思って』


え、ゴハン?


『ほら、晃くんと男2人だし、ちゃんと食べてるかなって、お母さんも心配してるしね。
たまには作ってあげようかと思って。 この間のお詫びに』

「ふーん。 たまにはいいこと言ってくれんだな」

『たまには、って、何よ!
・・・・・まあそういう事だから、今日ゴハン作りに行っていい?』

「んー。 ちょっと待って」


オレは一旦スマホを離して、あきらにねーちゃんのことを説明した。


「・・・・どうかな?」

あきらはフッて笑って、

「せっかくお姉さんが言ってくれてんだから。 甘えようぜ」

「わかった」


もう一度スマホを耳に当てて、

「ねーちゃん、ありがと。 じゃあ今日よろしく」

『わかった。 買い物して、夕方行くね』

「あ! ・・・・あきらも、いるからな」

『え、晃くんも? ・・・・デートとかじゃないの?』

「いいだろ別に。 あきらの分も、よろしくな」

『わかった。 じゃあ、あとでねー』


電話を切って、あきらを見る。

「何かゴメンな。 ねーちゃん、強引で」

「いいって。 この間のこと、気にしてるんだろ?
それに、夕飯作ってくれるなら、オレ、今日楽できるし」

「そっか。 今日はあきらが当番だったな」


「・・・レイキ」


あきらがオレの腰に手を回す。


「なっ・・・・ なにやってんだよ!」

ココは街の中で人も多いのに!


あきらは気にする様子もなく、そのままオレの腰を引き寄せた。


「・・・・夜、お姉さんが来るんだろ?
だったら・・・・ その前に、2人きりになりたい」


ほとんどオレを抱きしめるような格好で、耳元で囁く。


耳元での声や、その内容にぞくぞくするけど。

オレは周りの視線が気になってしょうがない。


だって、男同士で、ほとんど抱きしめるみたいに密着して・・・・


じろじろ見られて、当然だ。


「わかった。 わかったから!」

オレはあきらの胸を押して、自分から離させた。


恥ずかしすぎる・・・・・・!


あきらは満足したように笑うと、

「じゃあ、帰ろうぜ」

オレの手を取って、歩き出した。


「あきら! 手・・・・・!」

「いいだろ。別に」


あきらはオレの手を握ったまま、どんどん歩いてく。

オレは恥ずかしいけど、あきらが触れてくれるのが嬉しくて、そのままついて行った。






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