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二刑
しおりを挟むえ? ちょっと待って?
理解できないわ。
死んだ侯爵の遺産?
それってつまり、父様のお金でリアの婚約パーティーをするって事? 私は何も聞いていないのですが?!
「それってどこ情報?」
「どこも何も本人だよ。執事長様に、王族を招くパーティーだから貧相にならないように盛大にやれって。金は侯爵家の遺産がまだあるからって」
もしかして、グンター公爵が大嫌いな兄の子どもを養女に向かい入れたのは、最初から父様のお金が目的だったという事?
父様の死の直後、父の様部屋の片付けをしていた時、私は机の鍵付きの引き出しから、父様の遺言書を見つけた。
『侯爵』という身分の高い立場であるが故、その命が脅かされる危険はいつも付きまとう。医師は食中毒と処理されたものの、周囲の者達は皆、殺されたのでは無いかと疑いを止めなかった。
父様はもしもの時に備え、遺言書を書き残していたのだ。それも遺言書に書き記されていた日付は、ちょうど私が生まれた年だった。
遺言書には、全財産を私に相続すると書かれていた。父の遺言通り、私は遺産を相続し公爵家の養女となったのだ。
***
「いやいや、これは殿下! この度は娘との婚約にご快諾していただき、有難うございます!! これで私も、安心して老後を過ごせるというもの!! どうかこれからも娘をよろしく頼みます」
パーティーでのアルノルト公爵は、主役の二人よりも身体中から幸せオーラを出していた。
結局、パーティーでかかった費用は、公爵は本当に父様の遺産から全額出していた。
私は下男として参加し、パーティー内での彼らの様子をじっと観察し続けた。殿下に媚び諂う公爵の態度に、罪悪感なんてものは全く感じられない。無知なリアは与えられる宝飾品で粧し込み、すっかり皇子にご心酔。その皇子はと言うと、たかが10歳ですでに王様気取りの礼儀知らずな上から口調で大人と話している。
父様の遺産で屋敷を飾り、父様の遺産で娘を飾り、父様の遺産で高級ワインを飲み、父様の遺産で他の貴族とのコネクティングを広げる彼等を見て、私は今にも気が狂いそうだった。
『たとえ、私が娘の花嫁姿を見届けられずとも
娘が人生を切り拓けられるよう
私の形見が彼女の支えとなる事を願う』
父様は、こいつらを遊ばせるためにお金を私にあげたのではないわ!
これにはさすがの私も我慢ならなかった。世の為に使うならまだしも、自らの懐を肥やす為に使うなぞ、父様の死を彼はどう思っているのか! 仮にも血の繋がった兄弟であるというのに!!
「許せない……!」
たかが公爵如きが……!! ここまで侯爵家を愚弄するとはいい度胸じゃない!
私も彼等のような空っぽな頭で、何も深く考えず飄々と生きていけたらどんなに気楽だった事か。私には、彼等ほどの無神経な度胸を持ち合わせていないから、彼等のように侯爵家のお金に無闇に手を付けられないわ。
——死刑執行人を家督とする、あの侯爵家の財産を!
オスカー・アルノルト死刑人
その名はマテーウス皇国の人間であれば誰もが知らぬ名。
アルノルト侯爵家は代々死刑執行人を家督とする唯一の貴族である。
マテーウス皇国では、死刑判決は帝王にのみに認められた権限。その死刑を実行する死刑執行人を、この国では『名誉』と称えた。何故なら、死刑執行人は帝王直々の選抜であり、尚且つその称号は王室御用達の特殊技能の持ち主である事を示していた。
中でもオスカー・アルノルト……父様の技術は歴代でも群を抜いていた。王族の信頼と認められた実力を兼ね備えていた父様は、帝王の右腕とも謳われていた。
「公爵家がその気なら……侯爵令嬢も受けて立ってやろうじゃない」
怒りに身を震わせながら、私は心に決めた。
——家督を継いで、侯爵家を再興してやる……!!
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