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夜明け前、ベッドで水晶を見るとグリードはすでに走り出している。
「魔王様のところまで、一直線」グリードは信じられない速度で走りながら「村から魔王城まで数日で着きますよ。愛の力は偉大です」と叫んでいる。
恥ずかしい。
グリードは休まず走り続け、森や山、川を超えていく。知っていたが、改めて彼の体力に驚愕する。
「魔王様……。待っていてください」
声も変わらず大きい。
数日後、グリードが城に到着した。防壁魔法に気付いたようで「おお、新しい障害物ですね。魔王様の愛情表現、嬉しいです」大きな声で叫んでいる。
魔王城の前で叫ぶのは過去にグリードだけしかいない。大抵は気づかれないようにこっそりと侵入してくるが、全て家族たちが瞬殺する。
ルーシアが手を下す事はない。しかし、グリードは例外だ。ルーシアの家族が束になっても勝てない。
過去に、全員でグリードを止めたが気絶させられた。全員無傷だ。
彼が本気になったら『魔王討伐』はもう終了しているだろう。
グリードが体当たりや双剣で防壁に挑んでいる。
「魔王様。僕が来ましたよ。会いたかったです」
あっという間に、防壁にヒビが入りルーシアは頭を抱える。
家族を全員、魔王城の奥に下げた。基本的にグリードは傷つけないが念のためだ。人間はすぐに心変わりをする。
防壁に穴を開け、楽しそうに入って来る。
「魔王様。お待たせしました」
大声で挨拶をすると、玉座の間に向かってくる。数えきれないほど訪れているグリードは魔王城の間取りを覚えている。
何回も来る勇者はグリードしかいない。
全てが規格外の男だ。
「ただいま戻りました。魔王様の防壁、素敵でしたよ。でも愛の力には勝てませんね」玉座の間に響くくらい大きな声でグリードは挨拶をした。
「明日じゃないじゃないか」
ルーシアは玉座に座り、堂々と入室してきたグリードを見下ろした。
汗ひとつかかずに明るく笑うグリードに今更、驚く事はない。このくらいで驚くと心臓がいつか壊れる。
「“明日”は気持ちの問題です。魔王様に会いたい気持ちが僕を早くここに連れてきたんです」
どんなに否定してもめげないグリードに頭痛がした。
「そんな反応……可愛いです」頭を抱える魔王を見てグリードは喜ぶ。「僕に会えて嬉しいんですね」
家族の魔力を確認し、玉座の間から遠い所にいる事が分かると安心した。
「暇なのか?」大きなため息をつく。
それなりの功績がある勇者だ。様々な所から依頼が来ているはずであった。
「はい。魔王様に会うためなら、どんなに忙しくても時間を作ります」
グリードはキラキラした目でルーシアを見つめた。真っ直ぐで純粋な彼の瞳が眩しい。
「……?」グリードは首を傾げて辺りを見回した後、納得したように頷いた。
「みんなを下がらせたんですね。僕に気を使ってくれたのかな」
見当違いな事をいうグリードにルーシアにため息が出た。グリードのためではなく、家族を守るためだ。
「ふん。部下か……」
グリードに“部下”と言われたのがひっかかる。傍から見たら魔王軍の部下だと言う事は理解しているが寂しくなった。
グリードはルーシアの近くに座り込み「今日は何をして過ごしましょうか? 僕、魔王様の話なら何時間でも聞けますよ。好きな食べ物とか、趣味とか全部知りたいです」呑気な事を言う。
「お前がいない時間が落ち着く」
これは事実。グリードをあの時助けなればこんな思いをする事はなかった。
さっさと、『人間抹殺』を行い、領地を取り戻していた。しかし、グリードがいるから簡単に壊せない。
彼は良い子に育ってしまった。せめてもっと、人間らしく醜い姿があれば違っただろう。
頻繁に顔に見せに来るのも困る。親密になればなるほど情が沸く。その結果が、愛情が芽生えた。
「魔王様のところまで、一直線」グリードは信じられない速度で走りながら「村から魔王城まで数日で着きますよ。愛の力は偉大です」と叫んでいる。
恥ずかしい。
グリードは休まず走り続け、森や山、川を超えていく。知っていたが、改めて彼の体力に驚愕する。
「魔王様……。待っていてください」
声も変わらず大きい。
数日後、グリードが城に到着した。防壁魔法に気付いたようで「おお、新しい障害物ですね。魔王様の愛情表現、嬉しいです」大きな声で叫んでいる。
魔王城の前で叫ぶのは過去にグリードだけしかいない。大抵は気づかれないようにこっそりと侵入してくるが、全て家族たちが瞬殺する。
ルーシアが手を下す事はない。しかし、グリードは例外だ。ルーシアの家族が束になっても勝てない。
過去に、全員でグリードを止めたが気絶させられた。全員無傷だ。
彼が本気になったら『魔王討伐』はもう終了しているだろう。
グリードが体当たりや双剣で防壁に挑んでいる。
「魔王様。僕が来ましたよ。会いたかったです」
あっという間に、防壁にヒビが入りルーシアは頭を抱える。
家族を全員、魔王城の奥に下げた。基本的にグリードは傷つけないが念のためだ。人間はすぐに心変わりをする。
防壁に穴を開け、楽しそうに入って来る。
「魔王様。お待たせしました」
大声で挨拶をすると、玉座の間に向かってくる。数えきれないほど訪れているグリードは魔王城の間取りを覚えている。
何回も来る勇者はグリードしかいない。
全てが規格外の男だ。
「ただいま戻りました。魔王様の防壁、素敵でしたよ。でも愛の力には勝てませんね」玉座の間に響くくらい大きな声でグリードは挨拶をした。
「明日じゃないじゃないか」
ルーシアは玉座に座り、堂々と入室してきたグリードを見下ろした。
汗ひとつかかずに明るく笑うグリードに今更、驚く事はない。このくらいで驚くと心臓がいつか壊れる。
「“明日”は気持ちの問題です。魔王様に会いたい気持ちが僕を早くここに連れてきたんです」
どんなに否定してもめげないグリードに頭痛がした。
「そんな反応……可愛いです」頭を抱える魔王を見てグリードは喜ぶ。「僕に会えて嬉しいんですね」
家族の魔力を確認し、玉座の間から遠い所にいる事が分かると安心した。
「暇なのか?」大きなため息をつく。
それなりの功績がある勇者だ。様々な所から依頼が来ているはずであった。
「はい。魔王様に会うためなら、どんなに忙しくても時間を作ります」
グリードはキラキラした目でルーシアを見つめた。真っ直ぐで純粋な彼の瞳が眩しい。
「……?」グリードは首を傾げて辺りを見回した後、納得したように頷いた。
「みんなを下がらせたんですね。僕に気を使ってくれたのかな」
見当違いな事をいうグリードにルーシアにため息が出た。グリードのためではなく、家族を守るためだ。
「ふん。部下か……」
グリードに“部下”と言われたのがひっかかる。傍から見たら魔王軍の部下だと言う事は理解しているが寂しくなった。
グリードはルーシアの近くに座り込み「今日は何をして過ごしましょうか? 僕、魔王様の話なら何時間でも聞けますよ。好きな食べ物とか、趣味とか全部知りたいです」呑気な事を言う。
「お前がいない時間が落ち着く」
これは事実。グリードをあの時助けなればこんな思いをする事はなかった。
さっさと、『人間抹殺』を行い、領地を取り戻していた。しかし、グリードがいるから簡単に壊せない。
彼は良い子に育ってしまった。せめてもっと、人間らしく醜い姿があれば違っただろう。
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