【完結】愛しの魔王様~魔王(依存・執着)×勇者(積極的わんこ)~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
5 / 38

5

しおりを挟む
ルーシアは玉座に座り直すとため息をついて、勇者から目をそらす。
グリードは魔王の言葉に一瞬寂しそうな顔をするも「照れ隠しですね、わかってますよ」とすぐに明るく笑った。「魔王様の目が合わないのも可愛いです。恥ずかしがり屋さんなんですね」
グリードに掛かれば全てが彼の都合の良い解釈になる。
「でも魔王様、僕がいない時間が落ち着くなんて」少し考え込むグリードを見て、言いすぎたかと感じたが杞憂だった。「それって“いる時間”は心臓がドキドキするってことですよね? 僕も同じです」
「お前がいると本当に頭が痛い」
ため息をつき、腕と足を組む。言葉に棘を含むがその棘を全て抜かれてしまう。
グリードはくすりと笑った。
「それって、魔王様の“好き”の表現方法ですよね」自信満々に話す。「魔王様が僕に頭痛になるのは、きっと僕への気持ちが強すぎて混乱しているからです。理解していますよ」
目を離さず、愛情たっぷりの視線を向けられルーシアは眉を潜める。

そんなに見られると答えたくなってしまう……。

深呼吸をして話題を変える事にした。
「お前、国王から魔王討伐任務の依頼がきたんじゃないのか?」
魔王討伐依頼は国からの依頼だ。拒否はできない。
依頼を受けているなら、魔王城と呼ばれるここにいるのは良くない。グリードが制裁を受ける可能性がある。
「アハハ」楽しそうにグリードは笑う。「国王からの依頼は受けましたよ。でも僕、いつも『魔王様を改心させます』って返事してるんです」
グリードは真っ青な瞳を向け真剣な表情をする。
「僕は魔王様を倒したくありません。魔王様の悪事を止めて、一緒に良い道を歩みたいんです」
「悪事ねぇ」
人間から見れば『そうか』と納得する。人間から侵略をうけたのは500年前の話だ。知っている者は人間にいないだろうし、都合が良くないから記録も残っていないだろう。
「なんのことだろうな」クッククックと悪役の様に笑った。
「王様の笑顔、素敵です。もっと見せてください」
嬉しそうな表情でグリードは言った。
「僕は魔王様も民の平和もどちらも手に入れてみせます。民にも魔王様の本当の良さを分かってもらえば、きっと!!」自信満々に宣言をする。
グリードはルーシアに近づきながら「魔王様、本当は優しいんですよね?僕、知ってるんです。幼い頃助けてもらった時から……」
「ん?」ルーシアは眉間にシワを寄せる。
たまたま、お攻撃を仕掛けた場所が、人身売買市場だった。そこでボロボロになっていたグリードを見つけた。
大きな怪我をして瀕死だったがグリードは美しく、ルーシアの心をつかんだ。
ルーシアの血を与え、怪我を直すと孤児院の前に置いた。幼子であったため、覚えているとは思えない。
「あの時魔王様が助けてくれなかったら、僕は死んでいました。その日から、魔王様のことが忘れられなくて」
ルーシアは眉を潜めた。覚えているわけがない。その時、グリードは歩くのがやっとな赤ん坊だ。
「孤児だったから誰も探してくれなかったけど、魔王様の姿をずっと覚えていました。だから強くなって、必ず会いに来ると決めたんです」
ルーシアの血は、細胞を活性化させる力がある。それが作用しているのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

処理中です...