【完結】愛しの魔王様~魔王(依存・執着)×勇者(積極的わんこ)~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
15 / 38

15

しおりを挟む
応接の室。
隣国の王子を招くだけあり、豪華な家具や置物がある。
王女が座ったその後に団長とグリードが立った。ローテーブルを挟み、隣国の王子その後ろに王子の護衛騎士がいた。
「お久しぶりですね」王女は丁寧な話し方をしているが、どこか威圧的であった。それに対し王子は「ご無沙汰しております」と頭を下げる。力関係ははっきりしている。
王女は、王位継承者であるが隣国の王子の王位は第3位。王女と結婚できれば王配となれる。
「カナリア様、後ろ騎士は新任ですか?」
王子はグリードを睨みつけるように見た。グリードは王子の視線を感じ、落ち着いた表情で周囲を観察し警戒していた。
「あぁ、勇者グリードですよ」はうっとりとした目でグリードを舐めるように見た。
その視線に寒気がしたが、表情に出さない様に注意した。
王子はそれが不満な様で「はぁ」と言いながらグリードを睨み「お気に入りですか」と刺ある言い方をした。
『お気に入り』という王子の言葉に複雑な思いをしながら、魔王の事を考えた。会えないと余計に会いたくなる。
王子は立ち上がると、「私は気に入りません」と言いグリードの近くにきた。王子はグリードより身長が低いため、見下ろす形になるが、威圧的な態度は取らず、敬意を示す表情を作った。
王子は不快感を表にし「王子の私を見下ろすのか?」と怒鳴った。
王子は「跪けよ」とグリードの横にある壁を蹴った。
その様子を王女は楽しそうに見ている。団長は微動だにせず、まるで置物のようだ。
王子の目を見つめ、静かに膝をつく。
「カナリア様、コイツは平民ですか? 礼がなっていませんよ」王子はグリードの顔を蹴った。
突然の蹴りに顔を背けるが、必死で耐える。痛みを感じながらも表情を崩さず、ただ静かに膝をついたまま動かない。
「そうですね。しつけがまだなのですよ。次までに、靴を舐めるくらいできるようしますね」王女が笑うと、王子は頷き同じように笑う。
グリードは王子と王女の会話を耳にし、心に怒りを感じるが表には出さない様に耐えた。
頬の痛みを感じ、こんな人たちのために戦う価値があるのか疑問に感じた。

目を伏せ、自分の立場と使命を思い出そうとするが、王子と王女の笑い声を聞くと揺らぐ。
屈辱を感じつつも、冷静さを失わないよう自分を制御した。

「勇者グリードと言えば、有名ですよね。隣国まで、話が来ます」王子は王女に話し掛けながら、グリードの頬を足で軽く叩く。
「それくらいでなくては私の側にはおきません」王子の行動を止める事なく、まるでアクセサリーの様に言う王女に苛立ちが止まらない。
「まぁ、そうですね」王子がグリードの胸ぐらを掴む。「お前は幸運だな。お優しいカナリア様の側にいれて」
グリードは王子の手の感触に嫌悪感を覚え、顔の痛みと屈辱感で全身が震えそうになるのを、必死に抑え込み表面上は従順な態度を保つ。

ずっと沈黙を綱抜いていた団長が王女の近くと跪き耳打ちした。
王女は嬉しそうに微笑み「そうですね。お前は気が利く」団長の頬に口づけをする。「王子。あの話を」
「そうでした」王子はハンカチを出すとグリードに触れた手を拭いた。まるで汚いものを触った後の態度だ。
王子は元の席に戻る。

魔王が遠隔透視魔法の水晶をのぞく。
「どうしたのですか? 顔が怖いですよ」レッドが魔王に近づくと頷く。「あぁ、グリードの頬ですか」
「心配などしてない。奴を傷つけていいのは私だけだ」苛立った様子で目を細める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

処理中です...