【完結】愛しの魔王様～魔王（依存・執着）×勇者(積極的わんこ)～

36

民の差別的な態度に皮肉な笑みを浮かべルーシアを守る姿勢をより強く示した。
「可愛いなグリード」
ルーシアが手をかざすと、グリードにツノと牙が現れた
「貴様」ルドルフが大声をあげ剣を向け、走ってきた。
民がルーシアに向かうが、グリードの決意が固まったので、無抵抗はやめ、民の攻撃を避けた。
グリードはツノと牙の出現に歓喜し、変化を誇らしく感じた。
ルーシアからの贈り物として大切に受け取りルドルフの攻撃を片手で受け止め弾き返した。
グリードは不敵な笑みを浮かべ、ルーシアの期待に応えるべく、ルドルフや民の攻撃を軽々とかわした。
「グリード」
ルーシアに口づけされた。その瞬間、力が湧いてきた。
「貴様は魔王の手先になったのか。裏切り者め」ルドルフは怒鳴るとルーシアは穏やかに笑った。
「裏切っていない。元々私のだ」
民の攻撃は魔王に届かない。しかし、ルーシアは民を攻撃しない。
ルーシアはグリードの方を見た。
「グリード」ルーシアは空から見守る部下たちに視線を送る「俺は家族しかいらないよ」
空を見上げると、レッドやレオリオなど多くの者がいた。皆、心配そうな顔をしているが手を出さない。
ルーシアを信じているようだ。

家族と言う言葉に、目に涙が浮かび感情が溢れ出した。

「だけど、グリードはこれらいる？」ルーシアが民を指さした。
ルーシアが動きを止め瞬間を逃さなかった民が好機とばかりにルーシアの腕を刺した。腕から出血した。

グリードの中で民への怒りが爆発した。二度も民に攻撃を向けていない彼を傷つけた罪は重い。
目が赤く光り双剣を握る手に力が入った。

「必要ありません」怒りに震えルーシアを傷つけた民を容赦なく切り捨てた。
「そうか」
ルーシアは微笑むと、指を動かした。すると、ポンポンと3人の民が消えた。
「き、消えた」
「なんだ、今のは」
「これが魔王の力か」
民は驚き恐れた。

「クソ、魔王め。大切な民」ルドルフはグリードから魔王に標的を変えた。
ルドルフの変化に即座に反応しルーシアの前に立ち）
双剣でルドルフの剣を迎え撃つ。
「近づくな」
「グリード」ルーシアが甘えた声で名前を呼んだ。「消すのって疲れるんだ。もう、帰りたいね」
ルーシアの優しい視線を感じた。
「早くグリードを抱きしめたいな」
彼の言葉に心が高鳴り頬を紅潮させた。
嬉々として頷き「かしこまりました」返事をした。

双剣を構え、ルドルフに向かって猛烈な速さで突進し容赦なく斬りつけ周囲にいた民にも刃を向ける
「流石、勇者様」皮肉を言いながらルドルフはグリードの攻撃を避けた。
しかし、まわりの民は避けきれずに次々と倒れていった。あっという間に民の死体の山が出来上がる。
「貴様、なんでこんなことを。貴様は民を守る勇者だろ」ルドルフが泣き出した。
彼の言葉に一瞬立ち止まったが迷いはなく双剣を構え直した。
「勇者？　笑わせる」冷たく言い放った。「僕はルーシア様の家族だ」
双剣を振りかざしルドルフに襲いかかった。
空にいたルーシアの部下、レッドやレオリオたちが降りて、心配そうにグリードを見守る。
誰もグリードとルドルフに戦いに介入しようとはしない。
「グリード……」レオが心配そうに首をひねるとリオは彼の頭をなぜながら「大丈夫だろ」と笑った。一つの身体に二つの蛇の頭を持つ二人が寄り添う姿をグリードは始めてみた。

「卑怯者め。僕が一人になったら降りてきたな」ルドルフは見当違いな事をいう。ルーシアを集団で襲ったのは人間だ。彼らは一人を集団で襲ったりはしない。
自分の事を棚に上げ、他者ばかり責める人間に嫌気がした。
「もう、聞きたくない」グリードはルドルフの首に双剣の刃を向けた。

ルドルフの首が飛んだ。

グリードの剣のよって、ルドルフの首が身体から離れ地面に転がった。
真っ赤な血が噴き出る。

レッドは長い髪を、後ろで束ねると真剣な顔をしてルーシアの前に跪いた。いつも、ルーシアに軽口を叩く彼が、ルーシアを『王』するのを見て驚いた。

「我が王、人間全滅を我にお任せください」レッドは悲痛な顔でルーシアの腕の怪我を見た。
グリードは血まみれの双剣を服で軽くふくと、仕舞いルーシアの元に走った。
「ルーシア様」震える声で、彼の腕の傷にそっと手を伸ばした。しかし、触れることもできず自分のせいだと罪悪感に苛まれた。
「愛しのグリード」ルーシアがグリードに口づけをした。何かあると彼はすぐにキスをしたがる。彼の口づけに全身が震え頬を赤らめながら深い幸福感に包まれた。
「お前も、レッドと同じ意見か？」
「はい、ルーシア様」強い決意を込め彼の瞳を見つめた。
ルーシアを傷つけた者たちを許せなかった。強い怒りが身体を支配する。

次々と、家族たちがルーシアに跪いた。
「これらだけではなく、家族全員の意見です」レオは『家族』という言葉を強調した。
血が繋がっていないが強い絆で結ばれた家族だ。
「そうか。まかせる」ルーシアが穏やかに微笑むと家族たちは各地に飛び立っていた。