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第一章 『秘められた異次元(シークレットディメンション)』への扉!
第20話 日本への帰還
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オレ達が日本に帰国の準備をしていると、突然にお城を訪れる人がいた。
オレより先に異次元に来て、黄金のドラゴンを退治する目的で旅に出かけた英雄である。
しかし、彼の軍隊は見当たらない。彼一人で、この城に来ていたのである。
シルビアさんの妹も一緒に行動しているはずだが、その少女も見当たらない。
シルビアさんとオレは、城の伝令から彼が来た報告を受け、応接室へ向かう。
オレも彼が気になり話し合いに参加する事にした。
伝令に招かれて、英雄と呼ばれる人物は応接室で待っていた。
応接室で出会った人物は、オレが思っているような風貌ではなく、しっかりとした服を着た軍人であった。
オレは、モンスターにやられたのかと思い心配したが、彼の表情からは敗北や失敗の様子は読み取れない。
モンスターにやられたというような格好でも、幼女好きそうな変態の様でも無かった。
これで幼女が趣味だとすると、おぞましい物を感じる気がした。
彼は五十代半ばで、軍人らしい鍛え上げられた素晴らしい身体つきと、礼儀正しさを纏っていた。変態の要素はかけらも見当たらない。
むしろ、オレの方がどちらかと言えば、変態気質を持っているとさえ感じるほどだ。
男はみんな変態だ、と思っていたオレは、とてつもないほどの衝撃を受けていた。
オレは、話し合うシルビアさんと彼の方を見て不安を拭い去る。
まあ、結婚の対象にはならないだろうな、良くて孫くらいの差だと思い、ホッとした。
シルビアさんは、肝心の内容を話し始めた。
オレは、静かに耳を傾ける。
「今日はどうなさいましたか?
私の妹やあなたの軍隊は無事でしょうか?
黄金のドラゴンは倒せたのでしょうか?」
シルビアさんが慌てるようにそう言うと、その男性はシルビアさんを落ち着かせるようにこう言った。
「ははは、まあまあ、妹さんも軍隊も無事ですよ。
黄金のドラゴンの方は順調に退治する段階に入っています。
奴の居場所を捜索し、確実に倒せる武器を準備しています。
倒した後は、すぐにこの国にも連絡が届くでしょう。
期待して待っていてくださいよ。
今日は、ここに日本から来た優秀な若者がいると聞いて、私個人が興味を持って来たに過ぎません。
私の軍隊も、軍人とはいえ若い者が頼りない感じがしているので、もしも戦力になりそうなら、スカウトしたいと考えているのです。
そうすることにより、軍全体の士気も上がりますからな」
シルビアさんは笑って答える。
「はい、このマモルさんは異次元から来られたというのに、この国のためにいろいろと尽力してくださいました。
凶暴だったオークやオーガを和睦させたり、剣王のドワーフと戦って勝ったり、異次元との懸け橋となるギンロウを命がけで助けてくれたりもしました。
本当に夫としてほこりに思います!」
「ほう、かなりの功績ですな。どうか一度手合わせしてみたい。
うわさでマモル君はナイフ使いと聞いたが、私もナイフを扱うのが得意でしてね。
何、簡単な興味本意ですよ。軍人として、強者と戦うのは良い訓練になりますから……」
「そうですか。じゃあ、この城にも闘技場がありますから、そこへご案内いたします。
まあ、マモルさんが納得したらですけど……」
シルビアさんがオレの方を見て微笑む。
それに対し、オレは少し戸惑いながら言う。
「あ、いや……」
オレは、この軍人に異様な雰囲気を感じ取っていた。
日本人だが、異世界で見た誰よりも遠くにいるような感じがする。
オークやオーガも力は強いが、こいつはそれだけではない。
はっきりとは分からない得体の知れない恐怖を感じ取っていた。
オレが戸惑っていると、軍人の彼から話かけて来た。
「ははは、怪我をするかもしれないと、恐れているのかね?
それとも、こんな老人を相手に怪我させてはいけないと、恐がっているのかね?
よし、ならばこうしよう!
君は私に向かって攻撃して来なさい。
もしも、私が君のすべての攻撃を受けなければ、私の勝ち。
逆に、私が少しでも傷を負ったら、君の勝ちというのは……。
それならば、お互いに余計な怪我をしなくて済むだろう。
どうかね?
大丈夫、君の身体には、傷一つ負わせるような事はしないよ!」
彼はオレに握手を求めて来る。
相当の訓練に裏打ちされた自信だろう。
オレとは違うタイプの強さに、オレは引き下がりたくなくなった。
少なからず対抗意識を燃やしているのだろう。
「はあ、それなら戦いましょう」
オレはそれに握手で応えた。
さすがに、軍人だけあって握力も強い。
オレも負けじと強く握り返した。
城の闘技場に移動し、各自戦いの準備をする。
剣の修行や魔法の練習はここでするのだ。
その部屋への移動中の廊下で、オレは彼に尋ねる。
「お前の名前は何と言うのだ?」
それに対し、彼は答える。
「嵐山火焔(あらしやまかえん)と申す。
軍人としては、なかなか良い名前だろう。
それなりに気に入っているよ。
若い人からしたら、ちょっと古臭い名前かもしれないがね……」
「いえ、カッコいい名前かと……」
オレは心にもない事を言う。
確かに、カッコいい名前だが、古臭くも感じる。
オレの年代では、アニメのヒーローの名前を無理矢理つけている親もいるから仕方ない。
外国人の名前なのに、日本語でありえない名前をつけているのだ。
(例:ルフィ=海賊王、フェアリー=天使など)
それに対し、火焔はお礼を言う。
「ははは、どうもありがとうな」
火焔は自分の戦闘服に着替えるため、控室に入って行った。
オレも自分の戦闘服に着替えるため、控室に入る。
火焔の顔は、遊びで戦うような表情では無く、真剣そのものだった。
果たして、この戦いは無事に終わるのだろうか?
お互いに戦いの準備が終わり、闘技場に入る。
火焔は軽装備であり、手に何もないように思われる。
どうやら、自慢のナイフはまだ鞘に入ったままだった。
オレは火焔がナイフを抜くのを待っているが、抜く気配もない。
武器を構えようともしないので、オレは警告する。
「どうした? ナイフで防御しないのか? このままだと、素手で戦う事になるぞ!」
「ふっ、いつでもどうぞ! 私が必要と思った時にのみ抜くようにしている。
もしも君の攻撃が私に当たるようならば、君の勝ちで良いぞ! 手加減はいらんよ!」
「それなら……」
オレはナイフを投げて攻撃する。
そのナイフは、火焔により素手で止められてしまった。
ナイフを指で挟む事によって、全く動かずに止められたのだ。
いままで戦った相手は、避けるか、武器を使い薙ぎ払うかのどちらかだった。
全く無駄のない動きで止められたのは初めてだった。
これが達人のレベルかという驚きを感じていた。
火焔はオレを睨みつけて言う。
「やれやれ、本気で来いと言ったのだ! この程度、武器を必要ともしないな」
火焔の恐怖がオレを包み込む。闘技場には、不穏な空気が流れ始めていた。
この空気を祓い去らなければ、オレは一気に負けてしまう。
攻撃力を上げて攻撃する決意ができた。
「だったら、これならどうだ!」
オレは大きさの違うナイフを、同時に投げて攻撃する。
さすがの剣王アルシャードもこの攻撃により、軽い傷を受けていた。
しかし、火焔はその攻撃さえもナイフを抜いて、全て受け切ってしまった。
傷はおろか、場所を変えさせることも出来ない。
「ふーむ、やるな! 遠距離法による錯覚を利用した攻撃か……。
思わずナイフを抜いてしまったわ。これが君の最高の攻撃かね?
もしも他にあるなら、さっさと出しなさい。遠慮はいらんよ!」
火焔はそう言ってオレを挑発し、構える。
オレは考え始めていた。
仮に、アルシャードを追い詰めた火薬の爆発を利用したナイフ攻撃ならば、火焔にダメージを与えられる可能性はある。
しかし、より確実にダメージを与えるのならば、さっきにナイフ攻撃と併用した攻撃にした方が良いと……。
あのアルシャードも、ナイフの大きさを変えた高速スピードのナイフなら、避けることも防ぐことも出来ないと言っていた。
オレはその助言に従い、高速ナイフの技に、錯覚させる攻撃を組み合わせた技を完成させていた。
さすがの火焔も、いきなりオレの最終奥義を出せば、対応する事は出来ないはずだ。
オレはそう考え、全力で攻撃する事にした。
超高速の大小大きさの違ったナイフが、火焔に襲いかかる。
火焔はオレに突撃し、自分に当たるであろうナイフをうまくさばいて防御する。
そのままの勢いで、オレの方まで突進して来た。
そして、オレの首にナイフを突き立て止まった。
火焔のナイフは、オレの首に当たってはいないものの、火焔の殺意と迫力により、刺されたと感じるほどだった。
確かに、オレの身体は傷付けていないが、精神力を容赦なく攻撃された。
オレと自分との実力差を感じされるかのような攻撃に、オレは恐怖を感じていた。
オレは、ショックでしりもちをつき、動けなくなっていた。
火焔はそのまま自分のナイフを納めて言う。
さっきまでと違い、満面の笑顔だった。
「おっと、頬にかすり傷が付いてしまったようだ。君の勝ちだな!
もう一度、私と会うことができたのならば、味方になる事をお願いしよう!」
火焔の頰には、確かにオレの攻撃が当たっていた。
おそらくワザと一つ取りこぼしたのだろう。
側から見れば、互角の戦いだったが、オレには圧倒的な敗北に感じていた。
初見にも関わらず、オレの攻撃を全て見透かすような強さだった。
まともに戦えば、火焔は無傷でオレに勝つだろう。
火焔は去り際に言う。
「明日、日本に帰るのだろう。
お母様も君の帰りを待ちわびているはずだ。
そこでゆっくりと休養すると良い。
ゆっくりとな……。
では、失礼するとしよう!」
こうして、火焔は城から出ていき、どこかへと戻って行く。
闘技場で座り込んでいたオレに、シルビアさんが話しかけて来た。
どうやら、オレの表情には気付いていない。
それもそうだろう。
シルビアさんから見たら、オレと火焔が互角に戦い、わずかにオレが強かったと認識したのだろう。
火焔から期待されていると興奮してもおかしくない。
「どうやら英雄様は本当にすごい方のようですね。
数年前にこの国を襲って来た黄金のドラゴンも倒せそうですし、あの方の近くにいるならば、妹のキーリアも無事でしょう。私達は日本に帰って……」
シルビアさんがそう話していると、オレは倒れてしまった。
どうやら火焔の殺気が凄過ぎて、訓練していないオレには耐えられなかったようだ。
火焔の目は明らかにオレを殺すほどの悪意を持っていたのだ。
それは対峙したオレにしか分からない。
シルビアさんの看病により、なんとか一晩で回復する事は出来たが、火焔の恐怖だけは消え去ることができなかった。
翌日になり、オレ達は日本に帰るため、ギンロウの所に来る。
ギンロウは全てを準備しており、もうジェットコースターに乗るだけになっていた。
「じゃあ、シルビアは麻酔で眠らせて、マモルが行き先を思い浮かべてくれ。
俺は何も考えないようにするからな!」
こうして、オレ達は、ギンロウの指示通りにしていく。
オレは一心に日本に帰る事を考えていた。
そして、ジェットコースターが発射し、オレとシルビアさん、ギンロウが異次元空間に入って行き、アルスター王国から消え去った。
オレは無事、日本の自分の家に戻っていた。
可愛いお姫様と狼男を連れて……。
その頃、火焔は軍隊と合流していた。
そして、ある人物にオレとシルビアさんの事を報告する予定だ。
その人物は火焔に尋ねる。
「日本から来た若者とお姉様はどうだった?
ゲートの事故で思いがけず来させてしまって、いろいろと強いと噂だったから焦っていたけど……。
私達の計画を邪魔をするような奴か、あなたに試してもらったんだけど……。
味方になりそう? それとも敵になりそう? どっちかしら?」
「キーリア、あの若者は我々の脅威になるだろうな。
おそらく我々の味方にはならんよ。
なので、少々脅しを加えておいた。
もう異次元を超えてこの国に戻って来ることもあるまいな。
私なりの方法で、若い芽を摘んでおいた。
もう少し戦闘訓練があったら、私の誘導にも気付いただろうが……」
「そう、残念ね……。
私のペットにして上げても良かったのに。
まあ、戦闘訓練が少ないうちに現実を教えて上げて正解よね。
シルビアお姉様、せいぜい日本で一時の幸福感を味わって頂戴ね。
この国も、異世界の日本とやらも、いずれは私達が手に入れるのよ!」
キーリアは不気味な笑顔をしていた。
十二歳くらいなのに、ビールを開けて祝杯をあげている。
(ちなみに作者は五歳でビールを飲んでいました。あ、これは秘密にしてね!)
嵐山火焔
年齢 五十五歳 男 日本人
職業: 異次元侵略軍隊のリーダー
称号: 戦地に行けば、一人で敵の首を取って来る化け物
HP(体力):100
MP(スキルポイント):80
攻撃力:100 (やる気が出る時:120)
防御力:100 (精神的強さ100)
スピード: 100
知力:70(戦闘においては徐々に上がって行く傾向にある。やる気になると100になる。今のところ負け無し)
得意技:ナイフによる絶対防御・敵の急所を突く心理トリック・ナイフを使った様々な攻撃・投げナイフも得意だが、スタイル的に接近戦を重視している。そのため、ナイフを投げる事はきわめてまれであり、隙ができる弱点でもある。戦闘時遠距離を攻撃して来た相手もいるが、防御と回避技でくぐり抜けて、接近戦に持ち込むことで勝利した。異次元世界のアルスター王国内では最強の実力!
注意:シルビアの妹キーリアとは、協力関係である。残念ながら独身であるが、幼いキーリアに恋愛関係を持つ事はない。しかし、キーリアの頭脳と精神力には敬意を抱いており、協力している。彼の目的は、日本を含む世界を手中に収めることであり、そのために異次元世界を利用している。異次元世界を手に入れたら、キーリアに任せる事にし、自分は日本で戦争に着手するのが狙い。かなりの危険人物とも言えるが、行動に移すまでは一人で戦略を練るタイプ。すでに異次元世界では、戦争に備えるための戦力を整えつつある。主人公であるオレはこの強敵に勝てるのだろうか?
まあ、第一章のボスです。
実力的には、作中最強クラスですけど。
オレより先に異次元に来て、黄金のドラゴンを退治する目的で旅に出かけた英雄である。
しかし、彼の軍隊は見当たらない。彼一人で、この城に来ていたのである。
シルビアさんの妹も一緒に行動しているはずだが、その少女も見当たらない。
シルビアさんとオレは、城の伝令から彼が来た報告を受け、応接室へ向かう。
オレも彼が気になり話し合いに参加する事にした。
伝令に招かれて、英雄と呼ばれる人物は応接室で待っていた。
応接室で出会った人物は、オレが思っているような風貌ではなく、しっかりとした服を着た軍人であった。
オレは、モンスターにやられたのかと思い心配したが、彼の表情からは敗北や失敗の様子は読み取れない。
モンスターにやられたというような格好でも、幼女好きそうな変態の様でも無かった。
これで幼女が趣味だとすると、おぞましい物を感じる気がした。
彼は五十代半ばで、軍人らしい鍛え上げられた素晴らしい身体つきと、礼儀正しさを纏っていた。変態の要素はかけらも見当たらない。
むしろ、オレの方がどちらかと言えば、変態気質を持っているとさえ感じるほどだ。
男はみんな変態だ、と思っていたオレは、とてつもないほどの衝撃を受けていた。
オレは、話し合うシルビアさんと彼の方を見て不安を拭い去る。
まあ、結婚の対象にはならないだろうな、良くて孫くらいの差だと思い、ホッとした。
シルビアさんは、肝心の内容を話し始めた。
オレは、静かに耳を傾ける。
「今日はどうなさいましたか?
私の妹やあなたの軍隊は無事でしょうか?
黄金のドラゴンは倒せたのでしょうか?」
シルビアさんが慌てるようにそう言うと、その男性はシルビアさんを落ち着かせるようにこう言った。
「ははは、まあまあ、妹さんも軍隊も無事ですよ。
黄金のドラゴンの方は順調に退治する段階に入っています。
奴の居場所を捜索し、確実に倒せる武器を準備しています。
倒した後は、すぐにこの国にも連絡が届くでしょう。
期待して待っていてくださいよ。
今日は、ここに日本から来た優秀な若者がいると聞いて、私個人が興味を持って来たに過ぎません。
私の軍隊も、軍人とはいえ若い者が頼りない感じがしているので、もしも戦力になりそうなら、スカウトしたいと考えているのです。
そうすることにより、軍全体の士気も上がりますからな」
シルビアさんは笑って答える。
「はい、このマモルさんは異次元から来られたというのに、この国のためにいろいろと尽力してくださいました。
凶暴だったオークやオーガを和睦させたり、剣王のドワーフと戦って勝ったり、異次元との懸け橋となるギンロウを命がけで助けてくれたりもしました。
本当に夫としてほこりに思います!」
「ほう、かなりの功績ですな。どうか一度手合わせしてみたい。
うわさでマモル君はナイフ使いと聞いたが、私もナイフを扱うのが得意でしてね。
何、簡単な興味本意ですよ。軍人として、強者と戦うのは良い訓練になりますから……」
「そうですか。じゃあ、この城にも闘技場がありますから、そこへご案内いたします。
まあ、マモルさんが納得したらですけど……」
シルビアさんがオレの方を見て微笑む。
それに対し、オレは少し戸惑いながら言う。
「あ、いや……」
オレは、この軍人に異様な雰囲気を感じ取っていた。
日本人だが、異世界で見た誰よりも遠くにいるような感じがする。
オークやオーガも力は強いが、こいつはそれだけではない。
はっきりとは分からない得体の知れない恐怖を感じ取っていた。
オレが戸惑っていると、軍人の彼から話かけて来た。
「ははは、怪我をするかもしれないと、恐れているのかね?
それとも、こんな老人を相手に怪我させてはいけないと、恐がっているのかね?
よし、ならばこうしよう!
君は私に向かって攻撃して来なさい。
もしも、私が君のすべての攻撃を受けなければ、私の勝ち。
逆に、私が少しでも傷を負ったら、君の勝ちというのは……。
それならば、お互いに余計な怪我をしなくて済むだろう。
どうかね?
大丈夫、君の身体には、傷一つ負わせるような事はしないよ!」
彼はオレに握手を求めて来る。
相当の訓練に裏打ちされた自信だろう。
オレとは違うタイプの強さに、オレは引き下がりたくなくなった。
少なからず対抗意識を燃やしているのだろう。
「はあ、それなら戦いましょう」
オレはそれに握手で応えた。
さすがに、軍人だけあって握力も強い。
オレも負けじと強く握り返した。
城の闘技場に移動し、各自戦いの準備をする。
剣の修行や魔法の練習はここでするのだ。
その部屋への移動中の廊下で、オレは彼に尋ねる。
「お前の名前は何と言うのだ?」
それに対し、彼は答える。
「嵐山火焔(あらしやまかえん)と申す。
軍人としては、なかなか良い名前だろう。
それなりに気に入っているよ。
若い人からしたら、ちょっと古臭い名前かもしれないがね……」
「いえ、カッコいい名前かと……」
オレは心にもない事を言う。
確かに、カッコいい名前だが、古臭くも感じる。
オレの年代では、アニメのヒーローの名前を無理矢理つけている親もいるから仕方ない。
外国人の名前なのに、日本語でありえない名前をつけているのだ。
(例:ルフィ=海賊王、フェアリー=天使など)
それに対し、火焔はお礼を言う。
「ははは、どうもありがとうな」
火焔は自分の戦闘服に着替えるため、控室に入って行った。
オレも自分の戦闘服に着替えるため、控室に入る。
火焔の顔は、遊びで戦うような表情では無く、真剣そのものだった。
果たして、この戦いは無事に終わるのだろうか?
お互いに戦いの準備が終わり、闘技場に入る。
火焔は軽装備であり、手に何もないように思われる。
どうやら、自慢のナイフはまだ鞘に入ったままだった。
オレは火焔がナイフを抜くのを待っているが、抜く気配もない。
武器を構えようともしないので、オレは警告する。
「どうした? ナイフで防御しないのか? このままだと、素手で戦う事になるぞ!」
「ふっ、いつでもどうぞ! 私が必要と思った時にのみ抜くようにしている。
もしも君の攻撃が私に当たるようならば、君の勝ちで良いぞ! 手加減はいらんよ!」
「それなら……」
オレはナイフを投げて攻撃する。
そのナイフは、火焔により素手で止められてしまった。
ナイフを指で挟む事によって、全く動かずに止められたのだ。
いままで戦った相手は、避けるか、武器を使い薙ぎ払うかのどちらかだった。
全く無駄のない動きで止められたのは初めてだった。
これが達人のレベルかという驚きを感じていた。
火焔はオレを睨みつけて言う。
「やれやれ、本気で来いと言ったのだ! この程度、武器を必要ともしないな」
火焔の恐怖がオレを包み込む。闘技場には、不穏な空気が流れ始めていた。
この空気を祓い去らなければ、オレは一気に負けてしまう。
攻撃力を上げて攻撃する決意ができた。
「だったら、これならどうだ!」
オレは大きさの違うナイフを、同時に投げて攻撃する。
さすがの剣王アルシャードもこの攻撃により、軽い傷を受けていた。
しかし、火焔はその攻撃さえもナイフを抜いて、全て受け切ってしまった。
傷はおろか、場所を変えさせることも出来ない。
「ふーむ、やるな! 遠距離法による錯覚を利用した攻撃か……。
思わずナイフを抜いてしまったわ。これが君の最高の攻撃かね?
もしも他にあるなら、さっさと出しなさい。遠慮はいらんよ!」
火焔はそう言ってオレを挑発し、構える。
オレは考え始めていた。
仮に、アルシャードを追い詰めた火薬の爆発を利用したナイフ攻撃ならば、火焔にダメージを与えられる可能性はある。
しかし、より確実にダメージを与えるのならば、さっきにナイフ攻撃と併用した攻撃にした方が良いと……。
あのアルシャードも、ナイフの大きさを変えた高速スピードのナイフなら、避けることも防ぐことも出来ないと言っていた。
オレはその助言に従い、高速ナイフの技に、錯覚させる攻撃を組み合わせた技を完成させていた。
さすがの火焔も、いきなりオレの最終奥義を出せば、対応する事は出来ないはずだ。
オレはそう考え、全力で攻撃する事にした。
超高速の大小大きさの違ったナイフが、火焔に襲いかかる。
火焔はオレに突撃し、自分に当たるであろうナイフをうまくさばいて防御する。
そのままの勢いで、オレの方まで突進して来た。
そして、オレの首にナイフを突き立て止まった。
火焔のナイフは、オレの首に当たってはいないものの、火焔の殺意と迫力により、刺されたと感じるほどだった。
確かに、オレの身体は傷付けていないが、精神力を容赦なく攻撃された。
オレと自分との実力差を感じされるかのような攻撃に、オレは恐怖を感じていた。
オレは、ショックでしりもちをつき、動けなくなっていた。
火焔はそのまま自分のナイフを納めて言う。
さっきまでと違い、満面の笑顔だった。
「おっと、頬にかすり傷が付いてしまったようだ。君の勝ちだな!
もう一度、私と会うことができたのならば、味方になる事をお願いしよう!」
火焔の頰には、確かにオレの攻撃が当たっていた。
おそらくワザと一つ取りこぼしたのだろう。
側から見れば、互角の戦いだったが、オレには圧倒的な敗北に感じていた。
初見にも関わらず、オレの攻撃を全て見透かすような強さだった。
まともに戦えば、火焔は無傷でオレに勝つだろう。
火焔は去り際に言う。
「明日、日本に帰るのだろう。
お母様も君の帰りを待ちわびているはずだ。
そこでゆっくりと休養すると良い。
ゆっくりとな……。
では、失礼するとしよう!」
こうして、火焔は城から出ていき、どこかへと戻って行く。
闘技場で座り込んでいたオレに、シルビアさんが話しかけて来た。
どうやら、オレの表情には気付いていない。
それもそうだろう。
シルビアさんから見たら、オレと火焔が互角に戦い、わずかにオレが強かったと認識したのだろう。
火焔から期待されていると興奮してもおかしくない。
「どうやら英雄様は本当にすごい方のようですね。
数年前にこの国を襲って来た黄金のドラゴンも倒せそうですし、あの方の近くにいるならば、妹のキーリアも無事でしょう。私達は日本に帰って……」
シルビアさんがそう話していると、オレは倒れてしまった。
どうやら火焔の殺気が凄過ぎて、訓練していないオレには耐えられなかったようだ。
火焔の目は明らかにオレを殺すほどの悪意を持っていたのだ。
それは対峙したオレにしか分からない。
シルビアさんの看病により、なんとか一晩で回復する事は出来たが、火焔の恐怖だけは消え去ることができなかった。
翌日になり、オレ達は日本に帰るため、ギンロウの所に来る。
ギンロウは全てを準備しており、もうジェットコースターに乗るだけになっていた。
「じゃあ、シルビアは麻酔で眠らせて、マモルが行き先を思い浮かべてくれ。
俺は何も考えないようにするからな!」
こうして、オレ達は、ギンロウの指示通りにしていく。
オレは一心に日本に帰る事を考えていた。
そして、ジェットコースターが発射し、オレとシルビアさん、ギンロウが異次元空間に入って行き、アルスター王国から消え去った。
オレは無事、日本の自分の家に戻っていた。
可愛いお姫様と狼男を連れて……。
その頃、火焔は軍隊と合流していた。
そして、ある人物にオレとシルビアさんの事を報告する予定だ。
その人物は火焔に尋ねる。
「日本から来た若者とお姉様はどうだった?
ゲートの事故で思いがけず来させてしまって、いろいろと強いと噂だったから焦っていたけど……。
私達の計画を邪魔をするような奴か、あなたに試してもらったんだけど……。
味方になりそう? それとも敵になりそう? どっちかしら?」
「キーリア、あの若者は我々の脅威になるだろうな。
おそらく我々の味方にはならんよ。
なので、少々脅しを加えておいた。
もう異次元を超えてこの国に戻って来ることもあるまいな。
私なりの方法で、若い芽を摘んでおいた。
もう少し戦闘訓練があったら、私の誘導にも気付いただろうが……」
「そう、残念ね……。
私のペットにして上げても良かったのに。
まあ、戦闘訓練が少ないうちに現実を教えて上げて正解よね。
シルビアお姉様、せいぜい日本で一時の幸福感を味わって頂戴ね。
この国も、異世界の日本とやらも、いずれは私達が手に入れるのよ!」
キーリアは不気味な笑顔をしていた。
十二歳くらいなのに、ビールを開けて祝杯をあげている。
(ちなみに作者は五歳でビールを飲んでいました。あ、これは秘密にしてね!)
嵐山火焔
年齢 五十五歳 男 日本人
職業: 異次元侵略軍隊のリーダー
称号: 戦地に行けば、一人で敵の首を取って来る化け物
HP(体力):100
MP(スキルポイント):80
攻撃力:100 (やる気が出る時:120)
防御力:100 (精神的強さ100)
スピード: 100
知力:70(戦闘においては徐々に上がって行く傾向にある。やる気になると100になる。今のところ負け無し)
得意技:ナイフによる絶対防御・敵の急所を突く心理トリック・ナイフを使った様々な攻撃・投げナイフも得意だが、スタイル的に接近戦を重視している。そのため、ナイフを投げる事はきわめてまれであり、隙ができる弱点でもある。戦闘時遠距離を攻撃して来た相手もいるが、防御と回避技でくぐり抜けて、接近戦に持ち込むことで勝利した。異次元世界のアルスター王国内では最強の実力!
注意:シルビアの妹キーリアとは、協力関係である。残念ながら独身であるが、幼いキーリアに恋愛関係を持つ事はない。しかし、キーリアの頭脳と精神力には敬意を抱いており、協力している。彼の目的は、日本を含む世界を手中に収めることであり、そのために異次元世界を利用している。異次元世界を手に入れたら、キーリアに任せる事にし、自分は日本で戦争に着手するのが狙い。かなりの危険人物とも言えるが、行動に移すまでは一人で戦略を練るタイプ。すでに異次元世界では、戦争に備えるための戦力を整えつつある。主人公であるオレはこの強敵に勝てるのだろうか?
まあ、第一章のボスです。
実力的には、作中最強クラスですけど。
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「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
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