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第三章 七人の赤い悪魔
第56話 オーガVS赤い魔物(アーチャー)
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赤い魔物は矢を構え、まだ気付いていないオーガに標準を合わせる。
赤い魔物はアビナのようにコントロールを失うことなく、確実にオーガの頭を狙って矢を放った。
しかし、オーガの頭に当たる事は無く、矢はオーガの手に吸い寄せられるようにして受け止められた。
魔物の攻撃が悪いわけではなく、これには理由がある。
アビナと付き合い始めてからオーガは、様々な方法でエルフからの攻撃を受けて来た。魔法による攻撃はもちろん、弓矢、剣、ナイフ、槍、数え切れないほどの奇襲を受けて来たのだ。
最初の内はアビナが全てを処理していたが、次第にオーガが感覚で分かるようになってしまった。
敵の殺気、衣擦れの音、咄嗟の時の対処法を考える頭脳、アビナと付き合うようになって得た技術だ。
アビナは他のエルフと問題を起こす事が多く、その影響はオーガにも及んでいた。
オーガが仲裁に入り、誤解を解く事によって次第に問題は減っていったが、極限の状況まで追い込まれたオーガに命を守るための技術が刻み込まれていた。
そのため、嵐山同様にオーガも奇襲攻撃は効かないのだ。
研ぎ澄まされた動体視力と動物的勘が、赤い魔物の矢を受け止める。
数多くあった矢のストックも次第に無くなっていき、弓だけとなった。
こうなってしまえば赤い魔物に武器は無くなり、強人的な肉体のみで戦わなければならない。
相手がオーガ以外ならまだ勝ち目はあるが、オーガには赤い魔物と互角以上の筋力がある。
普通に考えれば二対一となり、勝利が確定していた。
オーガは魔物の正体がある程度分かっていた。
アルスター王国は今では平和で、平等を目指して統治しているが、オーガが生まれた当時は習慣によって恐ろしい事が平気で行われていた。
オーガやオークのように醜い子供が生まれた時は、ある一か所に捨てられ、運が良かった子供だけが生き残るのだ。
オーク達は成長して、自分達も生活できる集団を作り上げたが、オーガは完全に捨てられ、力があったのでどうにか生き延びたのだ。
オーガと同じく孤児で捨てられた子供がいて、二人で協力したからこそ生き延びたのだ。
オーガが捨てられた理由は、身体が大きく、腹が異常だったため、養う事ができないと感じた親が山奥に捨てたのだった。
もう一人は体が小さいが、力が異常にあり、親を怪我させてしまった事が原因だった。
しばらくはオーガと一緒に成長していたが、十代後半くらいにどこかへ行ってしまったのだ。
オーガは数年ほどその人物を捜していたが、オーク達の境遇に同情し、グループを組んで攻めて来たのだ。
マモルに倒された後は、アルスター王国の人々とも打ち解け、今の状況に至る。
オーガはかなり賢い部類の人物で、今までの事を責めても何も解決しない事を知っていた。
そのため、オークが幸せな生活を送っているならば、自分がそれを壊してはいけない事を悟っていた。
自分もようやく幸せな生活を送り始め、最後に解決したいと思っていた事は、自分と一緒にいた人物の安否を知ることだった。
もしその人物がいなければ、オーガは生きている事も無かった事であろう。
会って、生活の手助けをしたいとずっと思っていたのだ。
その人物の特徴は、話を聞き取る事は出来るが、自分では喋れないという点だ。
生まれつきか事故かは知らないが、オーガには声を聞いた記憶が無かった。
筆談やジェスチャーでなんとか会話していたのだ。
オーガは自分の推理通りかと、目前の魔物に名前を呼びかける。
「お前、レッドキャップか?」
レッドキャップとは本来妖精の名前であるが、力が強く赤い服を好んで着ていたため、オーガが名付けた名前だった。
二人で悪い事もしていたので、格好を付けるためにそう呼んでいた。
オーガの名前は、人々が勝手にそう呼び始めて逃げ出したことから、自然とそう呼ばれるようになった。
オーガがかつての相棒の名前を呼ぶが、レッドキャップは気にするそぶりも見えない。
武器が次々に無くなり焦っているのだろうか。
最後の武器である弓も、オーガの剛腕によって折られてしまった。
なすすべがなく逃げ出そうとする。
オーガは魔物の腕を捉まえて、相撲勝負を挑む。
一度、レッドキャップと勝負したいと思っていたが、勝負をする前にどこかへ消えてしまったのだ。
そのため、こういう機会を待っていた。
お互い十歳の身体で勝負できるのなら、念願の夢も親友も勝つ事によって同時に手に入るのである。
武器の無い魔物にもチャンスが回って来たので、勝負を引き受けると考えていた。
しかし、魔物は勝負の内容を理解した後、首を激しく横に振って拒否をする。
オーガが不思議に思っている隙を突き、逃げ出そうとする。
レッドキャップが部屋を出ようとした瞬間、部屋の中が明るくなった。
アビナがレッドキャップに向かって、火炎の魔法攻撃を仕掛けたのだ。
レッドキャップは激しい叫び声を上げて燃え尽きた。
後には、あの光る牙が残されていた。アビナは魔法を放って言う。
「やっぱり魔力が落ちているわ……」
オーガはレッドキャップが燃え尽きた痕を呆然と眺めていた。
赤い魔物はアビナのようにコントロールを失うことなく、確実にオーガの頭を狙って矢を放った。
しかし、オーガの頭に当たる事は無く、矢はオーガの手に吸い寄せられるようにして受け止められた。
魔物の攻撃が悪いわけではなく、これには理由がある。
アビナと付き合い始めてからオーガは、様々な方法でエルフからの攻撃を受けて来た。魔法による攻撃はもちろん、弓矢、剣、ナイフ、槍、数え切れないほどの奇襲を受けて来たのだ。
最初の内はアビナが全てを処理していたが、次第にオーガが感覚で分かるようになってしまった。
敵の殺気、衣擦れの音、咄嗟の時の対処法を考える頭脳、アビナと付き合うようになって得た技術だ。
アビナは他のエルフと問題を起こす事が多く、その影響はオーガにも及んでいた。
オーガが仲裁に入り、誤解を解く事によって次第に問題は減っていったが、極限の状況まで追い込まれたオーガに命を守るための技術が刻み込まれていた。
そのため、嵐山同様にオーガも奇襲攻撃は効かないのだ。
研ぎ澄まされた動体視力と動物的勘が、赤い魔物の矢を受け止める。
数多くあった矢のストックも次第に無くなっていき、弓だけとなった。
こうなってしまえば赤い魔物に武器は無くなり、強人的な肉体のみで戦わなければならない。
相手がオーガ以外ならまだ勝ち目はあるが、オーガには赤い魔物と互角以上の筋力がある。
普通に考えれば二対一となり、勝利が確定していた。
オーガは魔物の正体がある程度分かっていた。
アルスター王国は今では平和で、平等を目指して統治しているが、オーガが生まれた当時は習慣によって恐ろしい事が平気で行われていた。
オーガやオークのように醜い子供が生まれた時は、ある一か所に捨てられ、運が良かった子供だけが生き残るのだ。
オーク達は成長して、自分達も生活できる集団を作り上げたが、オーガは完全に捨てられ、力があったのでどうにか生き延びたのだ。
オーガと同じく孤児で捨てられた子供がいて、二人で協力したからこそ生き延びたのだ。
オーガが捨てられた理由は、身体が大きく、腹が異常だったため、養う事ができないと感じた親が山奥に捨てたのだった。
もう一人は体が小さいが、力が異常にあり、親を怪我させてしまった事が原因だった。
しばらくはオーガと一緒に成長していたが、十代後半くらいにどこかへ行ってしまったのだ。
オーガは数年ほどその人物を捜していたが、オーク達の境遇に同情し、グループを組んで攻めて来たのだ。
マモルに倒された後は、アルスター王国の人々とも打ち解け、今の状況に至る。
オーガはかなり賢い部類の人物で、今までの事を責めても何も解決しない事を知っていた。
そのため、オークが幸せな生活を送っているならば、自分がそれを壊してはいけない事を悟っていた。
自分もようやく幸せな生活を送り始め、最後に解決したいと思っていた事は、自分と一緒にいた人物の安否を知ることだった。
もしその人物がいなければ、オーガは生きている事も無かった事であろう。
会って、生活の手助けをしたいとずっと思っていたのだ。
その人物の特徴は、話を聞き取る事は出来るが、自分では喋れないという点だ。
生まれつきか事故かは知らないが、オーガには声を聞いた記憶が無かった。
筆談やジェスチャーでなんとか会話していたのだ。
オーガは自分の推理通りかと、目前の魔物に名前を呼びかける。
「お前、レッドキャップか?」
レッドキャップとは本来妖精の名前であるが、力が強く赤い服を好んで着ていたため、オーガが名付けた名前だった。
二人で悪い事もしていたので、格好を付けるためにそう呼んでいた。
オーガの名前は、人々が勝手にそう呼び始めて逃げ出したことから、自然とそう呼ばれるようになった。
オーガがかつての相棒の名前を呼ぶが、レッドキャップは気にするそぶりも見えない。
武器が次々に無くなり焦っているのだろうか。
最後の武器である弓も、オーガの剛腕によって折られてしまった。
なすすべがなく逃げ出そうとする。
オーガは魔物の腕を捉まえて、相撲勝負を挑む。
一度、レッドキャップと勝負したいと思っていたが、勝負をする前にどこかへ消えてしまったのだ。
そのため、こういう機会を待っていた。
お互い十歳の身体で勝負できるのなら、念願の夢も親友も勝つ事によって同時に手に入るのである。
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しかし、魔物は勝負の内容を理解した後、首を激しく横に振って拒否をする。
オーガが不思議に思っている隙を突き、逃げ出そうとする。
レッドキャップが部屋を出ようとした瞬間、部屋の中が明るくなった。
アビナがレッドキャップに向かって、火炎の魔法攻撃を仕掛けたのだ。
レッドキャップは激しい叫び声を上げて燃え尽きた。
後には、あの光る牙が残されていた。アビナは魔法を放って言う。
「やっぱり魔力が落ちているわ……」
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