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第三章 七人の赤い悪魔
第57話 マモルVSレッドキャップ(ナイフ)
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嵐山火焔とキーリア、オーガとアビナがそれぞれ赤い魔物を倒している時、オレは未だに誰にも会わずにいて不安を感じていた。
大きな古城だが、この場所に連れて来られたのはオレ一人ではないかと孤独感を感じる。もう、赤い魔物でも良いから出て来てくれと思っていると、オレのナイフを装備した赤い魔物と遭遇した。
赤い魔物はオレのメイド服姿に戸惑っているようだったが、オレを敵と認識し襲ってきた。
オレはナイフで応戦するが、魔物の攻撃を止めた所でお腹が空いている事に気付いた。
このまま戦い続けては、お腹のすき具合の差で負けてしまう。
昔の日本人は腹が減っては戦が出来ぬと言っていたが、オレはそれに身を持って痛感する。どうにかご飯が食べたい。
オレの手元にあるのは、キーリアの作ったトラップ用の毒弁当だけであり、とてもじゃないが食えた物ではない。
食べた瞬間に勝敗が決まってしまうかもしれない。
オレがそう考えながら戦っていると、食事ができるかもしれない方法を思い付く。
オレと赤い魔物はナイフを使って戦っているのだ。
それを利用すれば食堂に行くことも出来る。
いかに赤い魔物の住処といえども食べる物くらいはあるはずだ。
近くで赤い魔物を見ると、赤色のフード服は鮮やかな赤色をしている。
返り血で赤くなったにしては綺麗な色だった。こいつ、まさか……。
オレは重大な事実に気付き、勝負の場所を変えるようにこう提案する。
「ふっ、お前はナイフの使い方が間違っている。付いて来い。
オレ達にふさわしい場所で決着を付けてやるよ!」
赤い魔物は静かに頷き、オレの後に従った。
食堂はどこかと尋ねると、赤い魔物は指をさして教えてくれる。
なかなか気の良い奴だ。
魔物に案内され、オレは食堂に辿り着いた。ここの厨房で赤い魔物と真剣勝負をする。
オレはメイド服を着ているし、食糧も見付けた。
この状況でナイフ対決と言えば、みんなも経験のある皮むき対決だ。
より長く剥いた方の勝ちというシンプルかつ純粋なナイフの技量が問われる勝負だ。
オレはいつもシルビアさんの指導の元でこの作業をしているから得意だった。
果たして、赤い魔物はどうだろうか?
オレは皮むき対決のついでに、カレーを作ってしまおうと考えていた。
お米を水に付けておき、しばらくしたら炊くつもりだ。
全ての準備が整い、ついに二人の戦いが開始される。
最初は互角の勝負だった。まず、ジャガイモを洗い、皮を剥き始める。
さすがに赤い魔物は一人暮らしをしているだけあって、オレの華麗なナイフさばきに付いて来る。
あまりの接戦にオレの指も震え始める。
いくらナイフで長く切ろうとも、指で千切ってしまっては勝負に負けてしまう。
オレはナイフとジャガイモを置き、深呼吸をする。
この勝負はナイフの技術も重要だが、最も大切なのは平常心だ。
赤い魔物もオレの心を落ち着かせる動作を見て、強敵と判断した。
二人の間に火花が散る。一瞬の静寂の後、二人の皮を剥く音だけが聞こえる。
音だけでもお互いの技量が感じ取られる。
シュルシュルと順調に剥ける音が聞こえるだけで、オレが敗北したかというような錯覚に陥る。
しかし、オレはシルビアさんの笑顔を思い浮かべ、負けるはずがないと思い直す。
気持ちで負けた時点で敗北なのだ。
どんな逆境だろうと、自分の作業を一つ一つ丁寧に行うことが肝心だ。
焦り、不安、あきらめ、これらを克服した先に勝利という栄冠が待っているのだ。
オレと赤い魔物は、ほぼ同時に作業を終えた。
どちらが長く皮を剥けたかを確認する。
ジャガイモは、オレの方が長く剥けた。
リンゴは、赤い魔物が勝っていた。
ニンジンで勝負に出るが、どちらも同じ大きさのニンジンを使っていたため、勝負が付かなかった。
こういう事は好くある事だ。
お互いが最高レベルであるなら、勝負によっては決着が付かない場合はある。
赤い魔物はできたカレーを見ると満足したような表情をする。
お互いの健闘を讃えるかのような硬い握手が交わされた。
赤い魔物はオレに敗北した事を認めたのか、光る牙をメダルのように掛けてくれた。
思わぬ友情に涙が出る。
赤い魔物はナイフをオレに返し、できたカレーをタッパーに入れて、どこかへ持って行った。
赤い魔物がいなくなってから考えると、オレが勝負に負けていたのかもしれない。
オレは使い慣れたナイフを使っていたが、赤い魔物は使い慣れないオレのナイフを使っていたからだ。
できたカレーを見て、改めて赤い魔物に感謝を感じた。これで腹が満たせると……。
しばらく食堂でカレーを食べていると、匂いをかぎ取ったのか知らないが、飢えたオオカミのような目をした嵐山とキーリアが現れた。
二人は鍋のカレーごと、ぺろりと平らげてしまった。
腹が満たされた後で、オレの存在に気が付いた。
二人の飢えた姿を思い出してオレは思う。
赤い魔物より、飢えたこいつらの方が危険な魔物だと……。
大きな古城だが、この場所に連れて来られたのはオレ一人ではないかと孤独感を感じる。もう、赤い魔物でも良いから出て来てくれと思っていると、オレのナイフを装備した赤い魔物と遭遇した。
赤い魔物はオレのメイド服姿に戸惑っているようだったが、オレを敵と認識し襲ってきた。
オレはナイフで応戦するが、魔物の攻撃を止めた所でお腹が空いている事に気付いた。
このまま戦い続けては、お腹のすき具合の差で負けてしまう。
昔の日本人は腹が減っては戦が出来ぬと言っていたが、オレはそれに身を持って痛感する。どうにかご飯が食べたい。
オレの手元にあるのは、キーリアの作ったトラップ用の毒弁当だけであり、とてもじゃないが食えた物ではない。
食べた瞬間に勝敗が決まってしまうかもしれない。
オレがそう考えながら戦っていると、食事ができるかもしれない方法を思い付く。
オレと赤い魔物はナイフを使って戦っているのだ。
それを利用すれば食堂に行くことも出来る。
いかに赤い魔物の住処といえども食べる物くらいはあるはずだ。
近くで赤い魔物を見ると、赤色のフード服は鮮やかな赤色をしている。
返り血で赤くなったにしては綺麗な色だった。こいつ、まさか……。
オレは重大な事実に気付き、勝負の場所を変えるようにこう提案する。
「ふっ、お前はナイフの使い方が間違っている。付いて来い。
オレ達にふさわしい場所で決着を付けてやるよ!」
赤い魔物は静かに頷き、オレの後に従った。
食堂はどこかと尋ねると、赤い魔物は指をさして教えてくれる。
なかなか気の良い奴だ。
魔物に案内され、オレは食堂に辿り着いた。ここの厨房で赤い魔物と真剣勝負をする。
オレはメイド服を着ているし、食糧も見付けた。
この状況でナイフ対決と言えば、みんなも経験のある皮むき対決だ。
より長く剥いた方の勝ちというシンプルかつ純粋なナイフの技量が問われる勝負だ。
オレはいつもシルビアさんの指導の元でこの作業をしているから得意だった。
果たして、赤い魔物はどうだろうか?
オレは皮むき対決のついでに、カレーを作ってしまおうと考えていた。
お米を水に付けておき、しばらくしたら炊くつもりだ。
全ての準備が整い、ついに二人の戦いが開始される。
最初は互角の勝負だった。まず、ジャガイモを洗い、皮を剥き始める。
さすがに赤い魔物は一人暮らしをしているだけあって、オレの華麗なナイフさばきに付いて来る。
あまりの接戦にオレの指も震え始める。
いくらナイフで長く切ろうとも、指で千切ってしまっては勝負に負けてしまう。
オレはナイフとジャガイモを置き、深呼吸をする。
この勝負はナイフの技術も重要だが、最も大切なのは平常心だ。
赤い魔物もオレの心を落ち着かせる動作を見て、強敵と判断した。
二人の間に火花が散る。一瞬の静寂の後、二人の皮を剥く音だけが聞こえる。
音だけでもお互いの技量が感じ取られる。
シュルシュルと順調に剥ける音が聞こえるだけで、オレが敗北したかというような錯覚に陥る。
しかし、オレはシルビアさんの笑顔を思い浮かべ、負けるはずがないと思い直す。
気持ちで負けた時点で敗北なのだ。
どんな逆境だろうと、自分の作業を一つ一つ丁寧に行うことが肝心だ。
焦り、不安、あきらめ、これらを克服した先に勝利という栄冠が待っているのだ。
オレと赤い魔物は、ほぼ同時に作業を終えた。
どちらが長く皮を剥けたかを確認する。
ジャガイモは、オレの方が長く剥けた。
リンゴは、赤い魔物が勝っていた。
ニンジンで勝負に出るが、どちらも同じ大きさのニンジンを使っていたため、勝負が付かなかった。
こういう事は好くある事だ。
お互いが最高レベルであるなら、勝負によっては決着が付かない場合はある。
赤い魔物はできたカレーを見ると満足したような表情をする。
お互いの健闘を讃えるかのような硬い握手が交わされた。
赤い魔物はオレに敗北した事を認めたのか、光る牙をメダルのように掛けてくれた。
思わぬ友情に涙が出る。
赤い魔物はナイフをオレに返し、できたカレーをタッパーに入れて、どこかへ持って行った。
赤い魔物がいなくなってから考えると、オレが勝負に負けていたのかもしれない。
オレは使い慣れたナイフを使っていたが、赤い魔物は使い慣れないオレのナイフを使っていたからだ。
できたカレーを見て、改めて赤い魔物に感謝を感じた。これで腹が満たせると……。
しばらく食堂でカレーを食べていると、匂いをかぎ取ったのか知らないが、飢えたオオカミのような目をした嵐山とキーリアが現れた。
二人は鍋のカレーごと、ぺろりと平らげてしまった。
腹が満たされた後で、オレの存在に気が付いた。
二人の飢えた姿を思い出してオレは思う。
赤い魔物より、飢えたこいつらの方が危険な魔物だと……。
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