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第十四章 過去と現在の対決!
第百三話 恐怖の幻獣VS光宮冷菓
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二人の研究員が扉を開けると、二匹の狼がオレ達を襲ってくる。
研究所の実験動物達だったが、実験中に逃げ出した様で、オレ達を無差別に襲ってきた。オレは、ナイフの柄で狼の腹を殴り、冷菓は狼の体を凍らせていた。
咄嗟の出来事だったが、オレと冷菓は手加減する事ができた。
研究員の方を睨みつけるが、悪意はなかったらしい。
「いやー、さすがですね。
この研究所の用心棒に成る以上、このくらいは退治してもらわないといけません。
このように狼などの凶暴な獣が暴れ回るのは日常茶飯事なのですよ。
いつもは我々が処理している事でしたが、丁度あなた方の力量が見られて良かった。
もちろん用心棒としては合格ラインでしたよ!」
「ええ、咄嗟の判断力はもちろん、狼を生け捕りにしたというのもポイントが高い。
我々では、手加減できずに殺してしまいますからね。おっと、動物虐待ではありませんよ。勘違いされたらごめんなさいね、ふふ」
二人の研究員は怪しく笑う。不穏な空気が流れ始めていた。
冷菓もその異様な空気を感じ取っていたらしい。
目の前にいるのは、人間ではなく化け物なのだという事を……。
「では、そろそろ幻想世界に貴方達を案内しましょう!
ここでは、現代の最先端技術を駆使し、超有名な幻獣達を作り出しているのです!」
「うふふ、貴方達の様な一般人でも分かる怪物『ヴァンパイア』や『ハーピー』なんかを作り出しているのです。もちろん、そう簡単にできる生物ではありません。
失敗に失敗を重ね、ようやく生み出された素晴らしい幻想世界の住人達なのです!」
「まずは、失敗作を発表していき、どれだけ貴重で素晴らしい功績であるかを教えて行きましょう。これを見てください!」
男性研究員は、写真を見せる。
どうやら狼と人間を合成した怪物らしい。
「これは、『ヴァンパイア』の元になる狼男です。
本来の理想は、戦闘時に狼男となり、普段は人間化するという物です。
それが完成すれば、武器も持たない人間だと思わせておき、国家間の重要な人物を暗殺することも可能になります。
更に理想を言えば、狼の様になって逃走する事ができるまでにしたかったのですが、未だに上手くいっていません。
この写真の男は、初期の作品で、狼男にはなりましたが人間形態に戻らず、ずっと狼男のままでした。
本来は、我々の研究員だったわけですが、一時的に暴走し出すという欠陥が見つかり、殺処分と決定しました。残念ながら話を聞かれていたようで、自力で逃走した模様です。
まあ、他の町に逃げようとも、殺処分されている事でしょう。
全く使えない奴でしたよ。
せめて死体となって、失敗の原因でも究明出来たら良かったのですが……」
「その後も研究を続けたけど、役立たずばかりしかできなかったわ。
無駄な研究に労力を費やして、本当に私達は可愛そう……。
中でもひどい失敗作は、インプとかいう化け物ですよ。
自分でエネルギーを作る事が出来ないから、他の生物からエネルギーを分けてもらうとかいう良く分からない怪物もできましたからね。まあ、速攻で捨てましたけど……」
「全く、我々という貴重な成功例が完成したから良かったが、失敗の連続では、失敗は成功の母という言葉も疑わしくなりましたよ」
二人の研究員は、オレと冷菓の表情を観察する。
オレはそれほど表情に出さなかったが、冷菓は涙を流して震えていた。
二人の研究員は、子供をあやすように冷菓に語りかける。
「あらあら怖くなってしまったかしら?
でも、良い幻想生物もちゃんといるのよ?」
「はっはっは、もうお気づきとは思いますが、我々も自分自身を幻想世界の住人になっているのですよ」
「ふふ、研究者としては当然ですよね。
ただ、いくつもの成功例が実証された後に、信頼できる科学者によって生まれ変わらせてもらったんですけどね。
おかげで、美しい容姿とスタイルはそのままに、最強の生物へと変化したのです。
寿命もかなり長く、まさに人類と生物界の頂点に立った気分ですよ!」
「そう、ゆくゆくは我々エリートが、世界の頂点を取るのです。
地球も、異次元世界もね!」
二人の研究員は、自分の体の一部を変化させる。
女性の研究員は、自分の腕が翼に変化していた。
部分的に変化させる事も可能らしい。
男性研究員は、自分の顔を狼に変化させる。
オレ達の知っているギンロウに瓜二つだった。
おそらくギンロウは、ここの元研究員だった事だろう。
オレがそんな事を考えていると、冷菓が銃を取り出した。
銃を構えて小刻みに震え、小声でこう言う。
「どうやらギンロウちゃんを銀の弾丸(シルバーブレット)で止めたのは正解だったようですね。村人は、射殺命令を出していましたが、私の独断で生かしておく事にしたのです。
でも、この企業は間違っている!」
銃を構えて攻撃態勢を見せる冷菓に、男性研究員とオレが止めに入る。
ただの威嚇行為であり、戦闘する気ではなさそうだった。
しかし、男性研究員が、冷菓の言葉を聞いていたようで、ため息を吐きながら言う。
「ふー、どうやら我々の考えが理解できなかったようですね。
確かに、生物を人体実験して、失敗したから殺したり捨てたりは抵抗があるでしょう。
しかし、我々も慈善団体ではない。
利益優先の企業なんです。使えない生物は、殺すか、捨てるかしかないでしょう?
維持コストもかなりかかります。
貴女の様な安い道徳観で判断してもらっては困りますな!」
睨み合う男性研究員と冷菓に対し、女性研究員が割り込みに入る。
冷菓にやさしく接しながら、諭す様に言う。
「まあまあ、いきなり理解しろと言っても無理がありますよ。
徐々に我々の研究の素晴らしさを知ってもらうのも目的なんですから」
女性研究員は、そう言って冷菓を見るが、冷菓の戦う意思を感じ取り、眼つきが鋭くなってこう提案し始めた。
笑顔で接しているが、もはや女性研究員に、やさしい面影は残っていない。
本気で冷菓を潰す気だ。
「そう、世界を裏から支配するという私達の素晴らしさが分かりませんか?
なら、私と実戦で戦ってみますか?
最強だと自覚している私達の実力を見せ付ければ、あなた達も従い易くなるでしょう?
我々も実験データーが取れるし、問題は無いはずです。
貴女達が怖がらなければの話ですけどね!」
冷菓は、冷静さを取り戻し、怒りを抑えて、こう返答する。
「ええ、手加減しませんけどね!」
すると、男性研究員は、勝手にアンドロイドの姫状瑠璃と連絡を取る。
どうやら悟と瑠璃も監視下に置くようだ。
オレ達の気を散らし、戦闘を有利に持っていく算段だろう。
彼らの目的は、用心棒としてオレ達を雇う事から変更し、モルモットとしてオレ達を殺す事になったようだ。人間とは思えない冷たい目でオレ達を見始めた。
態度や仕草は変わらないように接しているが、内に滲み出る邪悪さが感じ取れた。
何十何百という人間と生物を殺してきた恐るべき怪物の姿だった。
こいつらをこのまま野放しにして置いたら、また多くの悲劇を呼ぶだろう。
オレは、ナイフを握りしめ、決戦上のある実験室へと移動していく。
オレは、冷菓と悟と瑠璃を守り、こいつらを殺さずに止める事が出来るのだろうか?
改心させる事がほぼ不可能なレベルの為、捕えて監視させるしかない。
とりあえずキメラカンパニーが崩壊すれば、自分達の能力を別の方向で使うようになるだろう。そう信じて戦いに挑む。
研究所の実験施設には、すでに悟と瑠璃がいた。
冷菓と女性研究員が戦闘するが、状況が不利に傾き始めれば、彼らが何をし始めるか分からない。オレは、冷菓を応援しつつ、悟と瑠璃を守っていた。
男性研究員も、オレを監視するかのように隣へ座る。
強化ガラスで守られた観客席から、冷菓と女性研究員の闘いを見守る。
「ふふ、私は格闘タイプの幻獣ではありません。
もちろん、戦闘はある程度得意ですけどね!」
女性研究員が着ている白衣を脱ぐと、水着の様な戦闘服を着ていた。
セクシーだが、重要な部分は守られているようだ。
堅い繊維で体全体を覆っており、動き易さと防御を両立しているような格好だった。
そして、彼女の両腕が変化し、脚も鳥類の脚に成っていた。
脚には、体を簡単に引き裂く恐るべき爪がついている。
全身の毛は羽毛に変わり、美しい瑠璃色をしている。
冷菓は、彼女の体を観察し、こう言う。
「ほう、なるほど。ハーピーとは、あなたでしたか。
自ら醜い老婆になった様に、人間を捨てるとは愚かさの極みですね!」
「あら、この鳥類の美しさが分からないなんて悲しい生き物ね。
それに、鳥類の幻獣だからと言って、必ずしもハーピーとは限りませんよ。
私の美声に平伏しなさい!」
「なるほど、セイレーンという幻獣ですか。
歌で相手を惑わすという怪物ですね。でも、そんな歌声で私は……」
冷菓がセイレーンの歌声を聴き、バランスを崩した。
まるで、歌声によって平伏したかのようだ。
冷菓の言葉に重ねるようにセイレーンが言葉をつなげる。
「倒せませんよ! ですか?
残念ですが、歌声を聴いた時点で貴女の負けは確定ですよ」
冷菓は、無理矢理体を起こし、攻撃し始める。
しかし、無情にも氷の散弾は、虚空を攻撃していた。
まるで狙いを定める事が出来ない。
「くははは、無駄ですよ、氷のお姫様!
貴女は、今三半規管をもろに攻撃され、一時的にバランス感覚が鈍っているのです。
そんな状況では、ご自慢の氷攻撃も使えませんし、立つ事もままならないでしょう?」
冷菓は、セイレーンの言う通り、膝から崩れ落ちた。
立とうと懸命に踏ん張っているが、立ち上げる事が出来ない。
「なぜ……」
疑問を抱く冷菓に、セイレーンが答える。
「ふふ、カメリアの科学兵器の中に、クジラやイルカを壊滅状態に追い込んだ兵器が存在したのですよ。超音波を使い、彼らの回遊を乱して殺す兵器通称『セイレーン』がね。
彼らも最初はなぜクジラやイルカが大量に死ぬのか分からなかった。
ただの魚群探知機や地形探査に超音波を用いていたので、クジラやイルカを直接攻撃しているとは思わなかった。
そして原因が分かった時には、クジラやイルカはすでに絶滅危惧種に指定されていた。
彼らも焦ったでしょうね。自分達が彼らを壊滅に追い込んだなんて……。
その罪悪感からか、それ以降は日本や世界各国の政府に、クジラやイルカを捕獲しないように圧力をかけているわけです。
この私は、その兵器を研究し、自分の歌声で生物の平行バランスを崩す事に成功したのです。なので、貴女がどんなに頑張ってもこうなってはかないませんよ。
私の爪で、セクシー且つ憐れな姿になって、許しを請い求めなさい!
実験動物兼研究員として迎え入れるわ! 万が一にもキメラ化が失敗しなければの話だけどね!」
セイレーンが爪を使い、無抵抗に近い冷菓を攻撃し始めた。
冷菓は、氷の壁を作り出し、なんとか爪の攻撃を避けようとする。
直撃はしないものの、氷の壁が崩され、冷菓が徐々に傷付いていく。
服が切り裂かれ、細かい傷が付き始めた。
オレは、冷菓を助けようと立ち上がるが、男性研究員に剣を突き付けられて、救助を妨害される。
「はっはっは、実験の邪魔はご遠慮願いますな。
貴方の相手は、私がじっくりとするつもりですから、黙って彼女がボロボロになるのを見ていなさい!」
「くっそ、悟と姫状瑠璃を人質にするのではなく、オレを拘束する為に近付いていたというわけか!」
「くっくっく、その通りだ! 自分の愛する妻が傷付くのを黙って見ていてもらおうか?」
研究所の実験動物達だったが、実験中に逃げ出した様で、オレ達を無差別に襲ってきた。オレは、ナイフの柄で狼の腹を殴り、冷菓は狼の体を凍らせていた。
咄嗟の出来事だったが、オレと冷菓は手加減する事ができた。
研究員の方を睨みつけるが、悪意はなかったらしい。
「いやー、さすがですね。
この研究所の用心棒に成る以上、このくらいは退治してもらわないといけません。
このように狼などの凶暴な獣が暴れ回るのは日常茶飯事なのですよ。
いつもは我々が処理している事でしたが、丁度あなた方の力量が見られて良かった。
もちろん用心棒としては合格ラインでしたよ!」
「ええ、咄嗟の判断力はもちろん、狼を生け捕りにしたというのもポイントが高い。
我々では、手加減できずに殺してしまいますからね。おっと、動物虐待ではありませんよ。勘違いされたらごめんなさいね、ふふ」
二人の研究員は怪しく笑う。不穏な空気が流れ始めていた。
冷菓もその異様な空気を感じ取っていたらしい。
目の前にいるのは、人間ではなく化け物なのだという事を……。
「では、そろそろ幻想世界に貴方達を案内しましょう!
ここでは、現代の最先端技術を駆使し、超有名な幻獣達を作り出しているのです!」
「うふふ、貴方達の様な一般人でも分かる怪物『ヴァンパイア』や『ハーピー』なんかを作り出しているのです。もちろん、そう簡単にできる生物ではありません。
失敗に失敗を重ね、ようやく生み出された素晴らしい幻想世界の住人達なのです!」
「まずは、失敗作を発表していき、どれだけ貴重で素晴らしい功績であるかを教えて行きましょう。これを見てください!」
男性研究員は、写真を見せる。
どうやら狼と人間を合成した怪物らしい。
「これは、『ヴァンパイア』の元になる狼男です。
本来の理想は、戦闘時に狼男となり、普段は人間化するという物です。
それが完成すれば、武器も持たない人間だと思わせておき、国家間の重要な人物を暗殺することも可能になります。
更に理想を言えば、狼の様になって逃走する事ができるまでにしたかったのですが、未だに上手くいっていません。
この写真の男は、初期の作品で、狼男にはなりましたが人間形態に戻らず、ずっと狼男のままでした。
本来は、我々の研究員だったわけですが、一時的に暴走し出すという欠陥が見つかり、殺処分と決定しました。残念ながら話を聞かれていたようで、自力で逃走した模様です。
まあ、他の町に逃げようとも、殺処分されている事でしょう。
全く使えない奴でしたよ。
せめて死体となって、失敗の原因でも究明出来たら良かったのですが……」
「その後も研究を続けたけど、役立たずばかりしかできなかったわ。
無駄な研究に労力を費やして、本当に私達は可愛そう……。
中でもひどい失敗作は、インプとかいう化け物ですよ。
自分でエネルギーを作る事が出来ないから、他の生物からエネルギーを分けてもらうとかいう良く分からない怪物もできましたからね。まあ、速攻で捨てましたけど……」
「全く、我々という貴重な成功例が完成したから良かったが、失敗の連続では、失敗は成功の母という言葉も疑わしくなりましたよ」
二人の研究員は、オレと冷菓の表情を観察する。
オレはそれほど表情に出さなかったが、冷菓は涙を流して震えていた。
二人の研究員は、子供をあやすように冷菓に語りかける。
「あらあら怖くなってしまったかしら?
でも、良い幻想生物もちゃんといるのよ?」
「はっはっは、もうお気づきとは思いますが、我々も自分自身を幻想世界の住人になっているのですよ」
「ふふ、研究者としては当然ですよね。
ただ、いくつもの成功例が実証された後に、信頼できる科学者によって生まれ変わらせてもらったんですけどね。
おかげで、美しい容姿とスタイルはそのままに、最強の生物へと変化したのです。
寿命もかなり長く、まさに人類と生物界の頂点に立った気分ですよ!」
「そう、ゆくゆくは我々エリートが、世界の頂点を取るのです。
地球も、異次元世界もね!」
二人の研究員は、自分の体の一部を変化させる。
女性の研究員は、自分の腕が翼に変化していた。
部分的に変化させる事も可能らしい。
男性研究員は、自分の顔を狼に変化させる。
オレ達の知っているギンロウに瓜二つだった。
おそらくギンロウは、ここの元研究員だった事だろう。
オレがそんな事を考えていると、冷菓が銃を取り出した。
銃を構えて小刻みに震え、小声でこう言う。
「どうやらギンロウちゃんを銀の弾丸(シルバーブレット)で止めたのは正解だったようですね。村人は、射殺命令を出していましたが、私の独断で生かしておく事にしたのです。
でも、この企業は間違っている!」
銃を構えて攻撃態勢を見せる冷菓に、男性研究員とオレが止めに入る。
ただの威嚇行為であり、戦闘する気ではなさそうだった。
しかし、男性研究員が、冷菓の言葉を聞いていたようで、ため息を吐きながら言う。
「ふー、どうやら我々の考えが理解できなかったようですね。
確かに、生物を人体実験して、失敗したから殺したり捨てたりは抵抗があるでしょう。
しかし、我々も慈善団体ではない。
利益優先の企業なんです。使えない生物は、殺すか、捨てるかしかないでしょう?
維持コストもかなりかかります。
貴女の様な安い道徳観で判断してもらっては困りますな!」
睨み合う男性研究員と冷菓に対し、女性研究員が割り込みに入る。
冷菓にやさしく接しながら、諭す様に言う。
「まあまあ、いきなり理解しろと言っても無理がありますよ。
徐々に我々の研究の素晴らしさを知ってもらうのも目的なんですから」
女性研究員は、そう言って冷菓を見るが、冷菓の戦う意思を感じ取り、眼つきが鋭くなってこう提案し始めた。
笑顔で接しているが、もはや女性研究員に、やさしい面影は残っていない。
本気で冷菓を潰す気だ。
「そう、世界を裏から支配するという私達の素晴らしさが分かりませんか?
なら、私と実戦で戦ってみますか?
最強だと自覚している私達の実力を見せ付ければ、あなた達も従い易くなるでしょう?
我々も実験データーが取れるし、問題は無いはずです。
貴女達が怖がらなければの話ですけどね!」
冷菓は、冷静さを取り戻し、怒りを抑えて、こう返答する。
「ええ、手加減しませんけどね!」
すると、男性研究員は、勝手にアンドロイドの姫状瑠璃と連絡を取る。
どうやら悟と瑠璃も監視下に置くようだ。
オレ達の気を散らし、戦闘を有利に持っていく算段だろう。
彼らの目的は、用心棒としてオレ達を雇う事から変更し、モルモットとしてオレ達を殺す事になったようだ。人間とは思えない冷たい目でオレ達を見始めた。
態度や仕草は変わらないように接しているが、内に滲み出る邪悪さが感じ取れた。
何十何百という人間と生物を殺してきた恐るべき怪物の姿だった。
こいつらをこのまま野放しにして置いたら、また多くの悲劇を呼ぶだろう。
オレは、ナイフを握りしめ、決戦上のある実験室へと移動していく。
オレは、冷菓と悟と瑠璃を守り、こいつらを殺さずに止める事が出来るのだろうか?
改心させる事がほぼ不可能なレベルの為、捕えて監視させるしかない。
とりあえずキメラカンパニーが崩壊すれば、自分達の能力を別の方向で使うようになるだろう。そう信じて戦いに挑む。
研究所の実験施設には、すでに悟と瑠璃がいた。
冷菓と女性研究員が戦闘するが、状況が不利に傾き始めれば、彼らが何をし始めるか分からない。オレは、冷菓を応援しつつ、悟と瑠璃を守っていた。
男性研究員も、オレを監視するかのように隣へ座る。
強化ガラスで守られた観客席から、冷菓と女性研究員の闘いを見守る。
「ふふ、私は格闘タイプの幻獣ではありません。
もちろん、戦闘はある程度得意ですけどね!」
女性研究員が着ている白衣を脱ぐと、水着の様な戦闘服を着ていた。
セクシーだが、重要な部分は守られているようだ。
堅い繊維で体全体を覆っており、動き易さと防御を両立しているような格好だった。
そして、彼女の両腕が変化し、脚も鳥類の脚に成っていた。
脚には、体を簡単に引き裂く恐るべき爪がついている。
全身の毛は羽毛に変わり、美しい瑠璃色をしている。
冷菓は、彼女の体を観察し、こう言う。
「ほう、なるほど。ハーピーとは、あなたでしたか。
自ら醜い老婆になった様に、人間を捨てるとは愚かさの極みですね!」
「あら、この鳥類の美しさが分からないなんて悲しい生き物ね。
それに、鳥類の幻獣だからと言って、必ずしもハーピーとは限りませんよ。
私の美声に平伏しなさい!」
「なるほど、セイレーンという幻獣ですか。
歌で相手を惑わすという怪物ですね。でも、そんな歌声で私は……」
冷菓がセイレーンの歌声を聴き、バランスを崩した。
まるで、歌声によって平伏したかのようだ。
冷菓の言葉に重ねるようにセイレーンが言葉をつなげる。
「倒せませんよ! ですか?
残念ですが、歌声を聴いた時点で貴女の負けは確定ですよ」
冷菓は、無理矢理体を起こし、攻撃し始める。
しかし、無情にも氷の散弾は、虚空を攻撃していた。
まるで狙いを定める事が出来ない。
「くははは、無駄ですよ、氷のお姫様!
貴女は、今三半規管をもろに攻撃され、一時的にバランス感覚が鈍っているのです。
そんな状況では、ご自慢の氷攻撃も使えませんし、立つ事もままならないでしょう?」
冷菓は、セイレーンの言う通り、膝から崩れ落ちた。
立とうと懸命に踏ん張っているが、立ち上げる事が出来ない。
「なぜ……」
疑問を抱く冷菓に、セイレーンが答える。
「ふふ、カメリアの科学兵器の中に、クジラやイルカを壊滅状態に追い込んだ兵器が存在したのですよ。超音波を使い、彼らの回遊を乱して殺す兵器通称『セイレーン』がね。
彼らも最初はなぜクジラやイルカが大量に死ぬのか分からなかった。
ただの魚群探知機や地形探査に超音波を用いていたので、クジラやイルカを直接攻撃しているとは思わなかった。
そして原因が分かった時には、クジラやイルカはすでに絶滅危惧種に指定されていた。
彼らも焦ったでしょうね。自分達が彼らを壊滅に追い込んだなんて……。
その罪悪感からか、それ以降は日本や世界各国の政府に、クジラやイルカを捕獲しないように圧力をかけているわけです。
この私は、その兵器を研究し、自分の歌声で生物の平行バランスを崩す事に成功したのです。なので、貴女がどんなに頑張ってもこうなってはかないませんよ。
私の爪で、セクシー且つ憐れな姿になって、許しを請い求めなさい!
実験動物兼研究員として迎え入れるわ! 万が一にもキメラ化が失敗しなければの話だけどね!」
セイレーンが爪を使い、無抵抗に近い冷菓を攻撃し始めた。
冷菓は、氷の壁を作り出し、なんとか爪の攻撃を避けようとする。
直撃はしないものの、氷の壁が崩され、冷菓が徐々に傷付いていく。
服が切り裂かれ、細かい傷が付き始めた。
オレは、冷菓を助けようと立ち上がるが、男性研究員に剣を突き付けられて、救助を妨害される。
「はっはっは、実験の邪魔はご遠慮願いますな。
貴方の相手は、私がじっくりとするつもりですから、黙って彼女がボロボロになるのを見ていなさい!」
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