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第十四章 過去と現在の対決!
第百九話 明らかにされた真実!
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黒沢勝昭は、オレと冷菓の関係を推理し、動揺し始めていた事で、戦いの活路を見出した。
一度は勝てないと悟ったオレに対し、一気に揺さ振りをかける。
「ふふ、悟が生まれる時間もこのアンドロイドが関係しているはずだ。
どうせ、お前達が子供を作り始めないから焦っていたのだろう。
今の世代は、そう簡単に子作りをしない風潮があるからな。
子供ができれば自分の好きな事をする時間も減るし、子供を育てられるか不安がある。
だから、自分達が子供を育てられると確信した時のみ、子作りを開始するのだ。
だが、それだとこのアンドロイドには都合が悪くなる事もある。
自分が定年し自由になる時間と人間の子供が自立する時間を丁度合わせなければ、同い年の男女に見えないからな。
悟くらいの年齢の男子は、自分と年の近い娘を好きになる傾向がある。
そこをねらっていたのだろう。
優秀で何でもこなせるアンドロイドを好きになるのは当たり前だからな。
しかし、人間がアンドロイドに恋をするのは一時的な物だ。
時間が経てば、自分と同じ人間を愛するようになり、アンドロイドは捨てられてしまう。それを防ぐ方法は、ただ一つ。
自分が親代わりに成り、小さい時からずっと面倒を見続ける事だ。
アンドロイドを人間の娘と勘違いさせ、ずっと一緒にいれば愛着が沸き、年頃にアンドロイドだと分かっても捨てられる事は無くなる。
悟にとっては、最愛のパートナーに等しい存在になっているからな。
どんな人間よりも愛情を持っている事だろう。
大方、悟が生まれる時を測る為に、このアンドロイドが子作りするように二人を焚き付けたのだろう?
どうかね、性行為をしたくなるような出来事は無かったかね?」
勝昭の言葉を聞き、動揺するオレ達に、瑠璃は諦めたように語り出した。
ここまで推理されては、どんな言い訳も通用しないと悟ったのだろう。
諦めて真実を語るのが得策なのだ。
「大体合っているわ。私がマモルと冷菓を引き合わせたの。
異世界への転移を使い、マモルを事故に見せかけて異次元世界に送ったわ。
冷菓も私に都合の良い年齢だったし、日本語を学ばせて誰かと結婚させようと計画した。
マモルは無職で落ち込んでいた時だし、冷菓は一人残されてショックを受けていた。
丁度良い二人だと思ったの。
それで、私と恋人に成れる息子を産んでもらう為に演出したのよ。
なのに、あなた達はなかなか子供を産まないし、そういう行為もしなかった。
だから、また異次元に送って生命の危機に遭わせるようにしたのよ。
人間って、自分達が危険にさらされると、本能で子供を作ろうとして性欲が強まるらしいから、それで……。
結果、私の思惑通りに悟は誕生した。
あなた達は、何の疑いもなく、私が悟を育てるようにさせてくれた。とても幸せだったわ。この幸福がずっと続けば良いと切実に願ったわ」
勝昭の推理力は底なしだった。
不安げに語る少女となり下がった瑠璃に、さらに追い打ちをかける。
確実にオレ達を潰す気の様だ。
「ふん、それだけではあるまい?
お前が次に計画しているのは、人間の悟を成長させずにずっと同じ若さで居るせる事だ。お前はアンドロイドだから年を取らないが、悟は人間だ。
悟が年を取り始めれば、姿形の変わっていく自分を見て、お前との違いを痛感する。
そうなれば自然と距離ができる可能性はあるよな。
三十くらいになれば、他の人間の娘に心を惹かれていくだろう。
だから、お前は人体の研究者を調べて、悟の成長と寿命がコントロールできるように研究所を調べ回っているはずだ。
俺の研究所に来た本当の理由もそれが狙いだろ。
どうかね、光宮マモルと冷菓。
自分の息子が化け物になるように仕向けられている気分は?
最悪、悟をアンドロイド化なんて恐ろしい事もする気かも知れないぞ。
全くアンドロイドというのは、知性ばかりあって道徳観が無いから恐ろしいな?」
姫状瑠璃は、崩れ落ちるように座り込んだ。
自分の計画がばらされた事を悟り、オレ達が怒り出すと思っているのだろう。
アンドロイドであるにもかかわらず、人間の様に絶望の表情を浮かべる。
「その通りですよ。
私は、悟に年を取らせないように一定の年齢で成長を止める気でいました。
私とずっと一緒にいて欲しい事を願って……。
でも、アンドロイドにする気は全くありません。
人間として、私を愛して欲しかったから、アンドロイド化は望みませんでした」
「ふん、今はそうかもしれぬが、いずれ不老不死が不可能と分かれば、何をするかは分からんぞ。
スクラップにする方が世の為、人の為、悟の為かもな!」
「ひいいい、それだけは……」
姫状瑠璃は、殺されそうになっている人間の様に命乞いを始めた。
もう凛々しい姿のアンドロイドではなく、人間らしい女の子だった。
オレと冷菓は、状況が吞み込めず、二人でお互いの顔を見合わせているばかりだった。
オレは冷菓を抱きしめて愛を表現したかったが、冷菓の複雑な顔から不安を感じ近付けないでいた。今手を握ろうとしても、拒否される事だろう。
勝昭は、オレの隙を確認し、攻撃を再開し始めた。
恐るべき怪物モロクとなり、オレを腕力で粉砕しようとする。
オレは攻撃を避けるが、気持ちの整理ができていなかった。
不安定な気持ちで勝昭と対峙しなければならない。
「ふん、さっきまでと表情が違うなあ。
そんなに不安な表情では、俺に勝つ事は出来ぬぞ。
まあ、冷菓は俺と結婚するのが正解だっただろうな。
俺と冷菓なら、もっと凄い発見ができるかもしれない。
そして、素晴らしい芸術品である生物をたくさん生みだしている事だろう。
結局は、俺の計画通りに落ち着くのさ。光宮マモル、お前が死ぬ事によってな!」
「ふん、出鱈目をほざくな! もう一度ただの人間の爺に戻してやる!
喰らえ、次元相殺(ディメンションオフセット)!」
オレは、ナイフの火薬を爆発させ、次元能力を発動しようとするが、次元能力は発動せず、火薬が爆発するだけだった。
ナイフは高速で勝昭を攻撃するが、勝昭はそれをなんなく受け止める。
勝利の笑みを浮かべてこう語る。
「ふふふ、次元能力は、人間の脳を極限まで使って発動できる能力だ。
ゆえに、心が不安になっている時は、次元能力を使う事は許されない。
俺は動揺する事は無いが、お前は酷く不安定な心を感じている。
これが俺とお前の勝敗を決する決定的な差だ!」
「な、何?」
勝昭は、容赦なくオレの下半身に強力な一撃を与えた。
剛腕によるパンチにより、オレの両足は完全に吹っ飛ぶ。
立ち上がる事も出来ず、強力な一撃によるダメージでオレは完全に気を失ってしまった。
「ふん、気絶をしたか。ショック死してもおかしくないほどのダメージだ。
だが、お前は生かしておいてやるぞ。
俺と冷菓の愛し合っているところを見て、絶望させる為にな。くっくっく、あははははは」
勝昭は、オレを倒し、勝利の高笑いをしていた。
姫状瑠璃は、オレの敗北を見て、泣き始める。
「マモル、私のせいで……、ごめんなさい」
勝昭は、冷菓を次のターゲットに狙いを定める。
ゆっくりと怪しい笑みを浮かべて近付きだした。
「ふふ、光宮マモルはもう終わりだ。冷菓、大人しく俺の物に成れ。
そうすれば人並みの幸せを味あわせてやる。ここで死んでは、光宮マモルも浮かばれまい。俺と子孫を残し、最高の芸術品をたくさん生み出そうではないか?
ふふ、楽しい研究ができそうだな」
怪しく近づく勝昭に、冷菓は恐れを感じて逃げようとする。
「いや、助けて、マモルさん」
「ふん、マモルは消えた。お前は、オレのモルモットだ。こっちへ来い!」
「いやああああ……」
無理矢理手を握り、拘束しようとする勝昭に、冷菓は嫌悪感と恐怖によって叫んだ。
叫び声は、研究所の中まで響くが、誰も助ける者は来ない。
姫状瑠璃も、冷菓がピンチなのを確認するも、助ける事ができないでいた。
冷静な分析から、自分一人では勝昭を足止めする事さえできない事を悟っていたのだ。
だが、立ちはだかる小さな影が動いていた。
「止めろ! 冷菓ママを放せ!」
勝昭に立ちはだかったのは、九歳の悟だった。
冷菓を救出しようと止めに入るが、勝昭との力の差は歴然だった。
悟では、勝昭のパンチ一撃でミンチにされてしまうだろう。
勝昭は、小さな勇者を見下ろしていた。
「ほう、なかなか勇気のある小僧だ。だが、必要のない勇気と言う物もある。
勝ち目が全くないのに、強者に立ちはだかる事だ。結果、無残にも微塵に砕け散る。
光宮マモルと冷菓の愛の結晶など、俺には何の価値もない。
ただの生ゴミに成り、ウジを沸かせるが良い!」
「いやああああ、悟、逃げて!」
冷菓と瑠璃は必死に叫ぶが、勝昭の無情なこぶしは確実に悟に迫っていた。
鈍い音とともに、研究所の床にクレーターができる。
本来は、悟の血飛沫が飛び散ることが予想されたが、飛んで来たのは石の瓦礫だけだった。
「ん? 確実にヒットしたはずだが……。身体が小さ過ぎて、血飛沫さえも出ないか?」
勝昭は攻撃を止め、悟のいた場所を確認する。
悟のいた場所より少し後ろに、十五歳ほどの子供が立っていた。
女の子の様な男の子の様な区別のつかない見かけだが、逞しい筋肉を見に付けていた。
勝昭のキメラ化した剛腕とは違い、鍛えられた人間の限界ともいうべき美しさを備えた筋肉だった。この素晴らしい筋肉によって、反射的に攻撃を避けていたのだ。
「ふん、この土壇場で次元能力を発現させたか。
確かに、感情によって次元能力が使えなくなるのが一般的だが、稀に逆の次元能力をさせる事もある。命の危機感によって、覚醒したという所か。
恐るべき小僧だったな、悟……」
勝昭は、十五歳の少年を見てそうつぶやいた。
一度は勝てないと悟ったオレに対し、一気に揺さ振りをかける。
「ふふ、悟が生まれる時間もこのアンドロイドが関係しているはずだ。
どうせ、お前達が子供を作り始めないから焦っていたのだろう。
今の世代は、そう簡単に子作りをしない風潮があるからな。
子供ができれば自分の好きな事をする時間も減るし、子供を育てられるか不安がある。
だから、自分達が子供を育てられると確信した時のみ、子作りを開始するのだ。
だが、それだとこのアンドロイドには都合が悪くなる事もある。
自分が定年し自由になる時間と人間の子供が自立する時間を丁度合わせなければ、同い年の男女に見えないからな。
悟くらいの年齢の男子は、自分と年の近い娘を好きになる傾向がある。
そこをねらっていたのだろう。
優秀で何でもこなせるアンドロイドを好きになるのは当たり前だからな。
しかし、人間がアンドロイドに恋をするのは一時的な物だ。
時間が経てば、自分と同じ人間を愛するようになり、アンドロイドは捨てられてしまう。それを防ぐ方法は、ただ一つ。
自分が親代わりに成り、小さい時からずっと面倒を見続ける事だ。
アンドロイドを人間の娘と勘違いさせ、ずっと一緒にいれば愛着が沸き、年頃にアンドロイドだと分かっても捨てられる事は無くなる。
悟にとっては、最愛のパートナーに等しい存在になっているからな。
どんな人間よりも愛情を持っている事だろう。
大方、悟が生まれる時を測る為に、このアンドロイドが子作りするように二人を焚き付けたのだろう?
どうかね、性行為をしたくなるような出来事は無かったかね?」
勝昭の言葉を聞き、動揺するオレ達に、瑠璃は諦めたように語り出した。
ここまで推理されては、どんな言い訳も通用しないと悟ったのだろう。
諦めて真実を語るのが得策なのだ。
「大体合っているわ。私がマモルと冷菓を引き合わせたの。
異世界への転移を使い、マモルを事故に見せかけて異次元世界に送ったわ。
冷菓も私に都合の良い年齢だったし、日本語を学ばせて誰かと結婚させようと計画した。
マモルは無職で落ち込んでいた時だし、冷菓は一人残されてショックを受けていた。
丁度良い二人だと思ったの。
それで、私と恋人に成れる息子を産んでもらう為に演出したのよ。
なのに、あなた達はなかなか子供を産まないし、そういう行為もしなかった。
だから、また異次元に送って生命の危機に遭わせるようにしたのよ。
人間って、自分達が危険にさらされると、本能で子供を作ろうとして性欲が強まるらしいから、それで……。
結果、私の思惑通りに悟は誕生した。
あなた達は、何の疑いもなく、私が悟を育てるようにさせてくれた。とても幸せだったわ。この幸福がずっと続けば良いと切実に願ったわ」
勝昭の推理力は底なしだった。
不安げに語る少女となり下がった瑠璃に、さらに追い打ちをかける。
確実にオレ達を潰す気の様だ。
「ふん、それだけではあるまい?
お前が次に計画しているのは、人間の悟を成長させずにずっと同じ若さで居るせる事だ。お前はアンドロイドだから年を取らないが、悟は人間だ。
悟が年を取り始めれば、姿形の変わっていく自分を見て、お前との違いを痛感する。
そうなれば自然と距離ができる可能性はあるよな。
三十くらいになれば、他の人間の娘に心を惹かれていくだろう。
だから、お前は人体の研究者を調べて、悟の成長と寿命がコントロールできるように研究所を調べ回っているはずだ。
俺の研究所に来た本当の理由もそれが狙いだろ。
どうかね、光宮マモルと冷菓。
自分の息子が化け物になるように仕向けられている気分は?
最悪、悟をアンドロイド化なんて恐ろしい事もする気かも知れないぞ。
全くアンドロイドというのは、知性ばかりあって道徳観が無いから恐ろしいな?」
姫状瑠璃は、崩れ落ちるように座り込んだ。
自分の計画がばらされた事を悟り、オレ達が怒り出すと思っているのだろう。
アンドロイドであるにもかかわらず、人間の様に絶望の表情を浮かべる。
「その通りですよ。
私は、悟に年を取らせないように一定の年齢で成長を止める気でいました。
私とずっと一緒にいて欲しい事を願って……。
でも、アンドロイドにする気は全くありません。
人間として、私を愛して欲しかったから、アンドロイド化は望みませんでした」
「ふん、今はそうかもしれぬが、いずれ不老不死が不可能と分かれば、何をするかは分からんぞ。
スクラップにする方が世の為、人の為、悟の為かもな!」
「ひいいい、それだけは……」
姫状瑠璃は、殺されそうになっている人間の様に命乞いを始めた。
もう凛々しい姿のアンドロイドではなく、人間らしい女の子だった。
オレと冷菓は、状況が吞み込めず、二人でお互いの顔を見合わせているばかりだった。
オレは冷菓を抱きしめて愛を表現したかったが、冷菓の複雑な顔から不安を感じ近付けないでいた。今手を握ろうとしても、拒否される事だろう。
勝昭は、オレの隙を確認し、攻撃を再開し始めた。
恐るべき怪物モロクとなり、オレを腕力で粉砕しようとする。
オレは攻撃を避けるが、気持ちの整理ができていなかった。
不安定な気持ちで勝昭と対峙しなければならない。
「ふん、さっきまでと表情が違うなあ。
そんなに不安な表情では、俺に勝つ事は出来ぬぞ。
まあ、冷菓は俺と結婚するのが正解だっただろうな。
俺と冷菓なら、もっと凄い発見ができるかもしれない。
そして、素晴らしい芸術品である生物をたくさん生みだしている事だろう。
結局は、俺の計画通りに落ち着くのさ。光宮マモル、お前が死ぬ事によってな!」
「ふん、出鱈目をほざくな! もう一度ただの人間の爺に戻してやる!
喰らえ、次元相殺(ディメンションオフセット)!」
オレは、ナイフの火薬を爆発させ、次元能力を発動しようとするが、次元能力は発動せず、火薬が爆発するだけだった。
ナイフは高速で勝昭を攻撃するが、勝昭はそれをなんなく受け止める。
勝利の笑みを浮かべてこう語る。
「ふふふ、次元能力は、人間の脳を極限まで使って発動できる能力だ。
ゆえに、心が不安になっている時は、次元能力を使う事は許されない。
俺は動揺する事は無いが、お前は酷く不安定な心を感じている。
これが俺とお前の勝敗を決する決定的な差だ!」
「な、何?」
勝昭は、容赦なくオレの下半身に強力な一撃を与えた。
剛腕によるパンチにより、オレの両足は完全に吹っ飛ぶ。
立ち上がる事も出来ず、強力な一撃によるダメージでオレは完全に気を失ってしまった。
「ふん、気絶をしたか。ショック死してもおかしくないほどのダメージだ。
だが、お前は生かしておいてやるぞ。
俺と冷菓の愛し合っているところを見て、絶望させる為にな。くっくっく、あははははは」
勝昭は、オレを倒し、勝利の高笑いをしていた。
姫状瑠璃は、オレの敗北を見て、泣き始める。
「マモル、私のせいで……、ごめんなさい」
勝昭は、冷菓を次のターゲットに狙いを定める。
ゆっくりと怪しい笑みを浮かべて近付きだした。
「ふふ、光宮マモルはもう終わりだ。冷菓、大人しく俺の物に成れ。
そうすれば人並みの幸せを味あわせてやる。ここで死んでは、光宮マモルも浮かばれまい。俺と子孫を残し、最高の芸術品をたくさん生み出そうではないか?
ふふ、楽しい研究ができそうだな」
怪しく近づく勝昭に、冷菓は恐れを感じて逃げようとする。
「いや、助けて、マモルさん」
「ふん、マモルは消えた。お前は、オレのモルモットだ。こっちへ来い!」
「いやああああ……」
無理矢理手を握り、拘束しようとする勝昭に、冷菓は嫌悪感と恐怖によって叫んだ。
叫び声は、研究所の中まで響くが、誰も助ける者は来ない。
姫状瑠璃も、冷菓がピンチなのを確認するも、助ける事ができないでいた。
冷静な分析から、自分一人では勝昭を足止めする事さえできない事を悟っていたのだ。
だが、立ちはだかる小さな影が動いていた。
「止めろ! 冷菓ママを放せ!」
勝昭に立ちはだかったのは、九歳の悟だった。
冷菓を救出しようと止めに入るが、勝昭との力の差は歴然だった。
悟では、勝昭のパンチ一撃でミンチにされてしまうだろう。
勝昭は、小さな勇者を見下ろしていた。
「ほう、なかなか勇気のある小僧だ。だが、必要のない勇気と言う物もある。
勝ち目が全くないのに、強者に立ちはだかる事だ。結果、無残にも微塵に砕け散る。
光宮マモルと冷菓の愛の結晶など、俺には何の価値もない。
ただの生ゴミに成り、ウジを沸かせるが良い!」
「いやああああ、悟、逃げて!」
冷菓と瑠璃は必死に叫ぶが、勝昭の無情なこぶしは確実に悟に迫っていた。
鈍い音とともに、研究所の床にクレーターができる。
本来は、悟の血飛沫が飛び散ることが予想されたが、飛んで来たのは石の瓦礫だけだった。
「ん? 確実にヒットしたはずだが……。身体が小さ過ぎて、血飛沫さえも出ないか?」
勝昭は攻撃を止め、悟のいた場所を確認する。
悟のいた場所より少し後ろに、十五歳ほどの子供が立っていた。
女の子の様な男の子の様な区別のつかない見かけだが、逞しい筋肉を見に付けていた。
勝昭のキメラ化した剛腕とは違い、鍛えられた人間の限界ともいうべき美しさを備えた筋肉だった。この素晴らしい筋肉によって、反射的に攻撃を避けていたのだ。
「ふん、この土壇場で次元能力を発現させたか。
確かに、感情によって次元能力が使えなくなるのが一般的だが、稀に逆の次元能力をさせる事もある。命の危機感によって、覚醒したという所か。
恐るべき小僧だったな、悟……」
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