【オススメネット小説】秘められた異次元（ シークレットディメンション） ムッツリスケベは異世界を救う！？

番外編の最終章 最悪なるアンドロイドの誕生！

第六十三話 オレ、死んだ？

人造人間エリスの圧倒的な剣術の前に、オレは胸を貫かれていた。
自分の胸から血が出るのを確認し、膝から崩れ落ちた。

「馬鹿な、オレは、死ぬのか？」

「ふふ、死んだと思いましたか？
ちょっと手の込んだドッキリですよ。
見た目はヤバイ状況ですが、実際には致命傷を避けているのです。
せいぜい最後まで足掻いてくださいよ！」

オレは胸を触るが、血はそこまで出ていなかった。
どうやら心臓に当たらない場所を刺されていたらしい。
冷静になれば、大したダメージを受けているわけではない事を悟る。

「はあ、はあ、なんとか致命傷は避けた様だな。
まだ戦えるぞ、負けてない！」

「ふふん、ショックで死ぬ事もあるというのが剣の勝負です。
しかし、良く持ち直しましたね。
第一段階は、合格というところです。
でも、勘違いしないでくださいね。

致命傷を避けたのは、あなたの回避能力によるのではなく、妾の剣術によるのだという事を……。
では、第二段階の死を経験してもらいましょう。
死なないでくださいよね！」

エリスは、次の勝負を仕掛けて来た。
レイピアという慣れない武器では勝負にならない。
オレは、子狐丸をそのまま使い、エリスに対抗する。
力勝負に持ち込めば、レイピアでは刀の攻撃を避ける事はできない。

オレは、レイピアを避ける事に専念しつつ、力任せに剣を振るう。
レイピアの攻撃さえ避けきれば、エリスにはオレの刀を止める術はない。
しかし、オレの攻撃もヒラリとかわされ、カウンター攻撃を喰らい始めた。
徐々にオレの体が傷付いて行き、血が滲み始める。

「ふふ、急所は狙わね。
徐々に体力を奪って行くのも一興というものじゃ。
あなたの攻撃パターンは見切っている。
レイピア同士での勝負に勝てなかったなら、刀で勝負すると踏んでいた」

エリスは、オレの刀をかわし、またカウンター攻撃を喰らわせる。
ワンパターンの攻撃をしたのでは勝てない。
オレは、子狐丸を槌に変化させ、レイピアの破壊とエリス自身の破壊を狙う。
どちらが壊れても、オレの勝利だ。
相手の強さを見て、オレもなりふり構っていられなくなった。

「そろそろ、そう来ると思っていましたよ。
レイピアの特徴は、細い剣による突きとしなりです。
このしなりという物は、意外と厄介なものですよ。
こんな風に、大ダメージを与える事もできます。
致命傷ではありませんが、肉の裂ける痛みを味わうと良いぞ♡」

エリスのレイピアがオレの肩に刺さったかと思うと、剣がしなって肉を引き裂いた。
思わぬ激痛に、オレは崩れ落ちる。
エリスは、興奮した表情で笑っていた。
どうやらオレを飽きるまでなぶり殺しにする気の様だ。

「うふふ、綺麗な赤い花の様な傷ができましたね。
この一撃で、姫野真槍ならアイドル生命を絶ったという所でしょうか？
まあ、妾には医療能力も豊富にあるので、この程度の傷ならば立ち所に治してあげます。
ふふ、まだ戦う意思はある様ですね。
嬉しいですよ♡」

エリスは、オレの傷を治療し、再度戦える様にする。
この勝負、オレの心が折れない限りは負ける事はない。
そういう風に、エリスがセッティングしていた。
オレが降参するか、勝つまで続けられるのだ。

「良いのか、オレを治療したりして……。
その油断が仇となるぞ」

「ふふ、妾の目的は、あくまでも冷菓の体を奪い、あなたと結婚する事です。
その為ならば、実現するまで一時の油断もありませんよ。
妾の頭脳と力をフル回転させ、あなたの全ての攻撃を受け切るつもりです。
そして、妾には勝てないと判断させ、合法的に結婚するのです。

女性は、運命という言葉に弱いですが、男性でもそれは同じ事です。
妾が冷菓の体を使い、あなたと結婚して子供を作るのも決められた運命なのですよ♡
あなたが光宮冷菓と出会って結婚した様にね。
それを、あなたの身で証明して納得して貰うために、この様な手間をかけているのです。
本来ならば、最初の一撃で勝負は決まっていました」

「ふん、その舐めプが、大勢の強者を敗北に至らせて来たのだ。
お前も間抜けなその一人にしてやるぜ！」

第三の戦いが始まり、オレは攻撃を仕掛けるが、すぐにエリスに体を貫かれてしまう。
剣は、オレの腹を貫通し、血さえも出ていなかった。

「ふふ、妾は油断も隙もない。
お前を殺さぬ様に細心の注意を払い、不意打ちや偶然さえも起こらぬ様に計算しているのだ。
あなたが全力や限界を超えても勝てない様にな。

あなたは降参しない限り負けないが、妾はたった一度の偶然やまぐれでさえ負けてしまうのだ。
これほどの圧倒的な不利な状況でも勝てないと悟れば、あなたも納得せざるを得ないでしょう」

「くう、なんだ、この攻撃は……。
これで軽傷だと……」

「ふふ、また死んだと思いましたか？
レイピアという剣の特性ですよ。
鋭い針の様な剣の為、刺し所が良ければ貫いても死にません。
所謂、針治療の様な感じです。
もちろん、刺し所が悪ければ死にますけどね！」

オレは、狂った様なエリスに攻撃され、何度も体を貫かれていた。
オレは、何度も死ぬ様な幻覚を見せられている様な状態なのだ。
精神的に傷付き、立ち上がる気力も無くなっていた。
これが、エリスの狙いらしい。