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気配

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さて。
「王妃様、花壇の準備が整いました」

 朝食をとったあと、バメオロスと寛いでいると、侍女が私を呼んだ。

 バメオロスのご飯はイーディナ花だ。といっても、食べなくても支障はないらしく、どちらかというと、嗜好品に近いらしいけれど。

 だから、私が自由にしていいと許可をもらった範囲で、イーディナ花を育てることにした。

「ありがとう」
 私は早速バメオロスと一緒に、花壇に行った。

 花壇の側にはイーディナ花の種も用意されており、あとは植えるだけになっている。

 ちょっとした裏技を使うので、侍女たちを下がらせ、花壇に種を植える。
『花が育つのに、二週間はかかるな』
 バメオロスは今朝もイーディナ花を食べたばかりだというのに、残念そうにいった。なんでも、バメオロスに用意されたイーディナ花は見た目の維持のために農薬が使われていて、あまり美味しくないらしい。
「いいえ、バメオロス。今すぐよ」
『今?』

 首をかしげたバメオロスに笑って、私は種を植えた土の上にそっと手をおいた。

 すると──。


 みるみるうちに、芽がでて、育ち、薄桃色のイーディナ花が芽吹いた。

『!? これ、は……』
「正真正銘、無農薬のイーディナ花よ」
 私の花壇には農薬をまかないように、と注意したので、美味しいはずだ。

 バメオロスは、イーディナ花に近づいて、くんくんと香りを嗅いだ。
 そして、きらきらとした瞳で私を見る。

 バメオロスの言いたいことは、伝わった。

「食べていいよ」

 私が頷くと、バメオロスはおそるおそるイーディナ花を食む。
『美味い。こんなに美味いイーディナ花を食べたのは、初めてだ』

 それならよかった。美味しそうにバメオロスが花を食む光景に、ほっこりする。

 しばらくして、満足したバメオロスが私の足元にすり寄った。
『ありがとう。とても美味しかった』
「それなら、良かった」
『しかし、アデライン、あの力は?』

 私は、バメオロスにこれは内緒よ、と前置きして癒しの力のことを話す。
『隣国の癒しの力……?』
「ええ、そう。私、癒しの力が使えるのよ」

 私は、土や植物にも使えるのだ。癒すというより、促進させる効果に近いけれど。でも、この力を祖国のアイルーマで使ったときも、ルナがやったことになっていたはずだけれど。隣国であるユーリシアにはその強制力が及ばないのか、物語が終わったからなのかわからないけれど。

『しかし、この力は癒しの力というより、豊穣の女神アストユースマリアの気配が……』

 首をかしげたバメオロスに私も首をかしげる。
「豊穣の女神?」
 この世にいるのは、破壊神と創造神だけじゃなかったの?

 バメオロスは、はっとしたように、首を振り、私を見た。
『……いや、私の勘違いだ。美味しいイーディナ花をありがとう、アデライン』
「ええ、どういたしまして」

 その後は、ニートらしく二人で遊んで時間を潰した。
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