王子様、あなたの妃にはなりません!

小達出みかん

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第一部 馴れ初めから結婚まで

初めてのキス(3)

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 ルセルは部屋のカウチに乱暴にリリーを押し倒した。顎をくいっとされて、端正なその顔が近づいてきた。

 この時点でもういやな予感がした。

 そして、ルセルとリリーの唇が重なる…と思ったが、重ならなかった。なぜならルセルは口をあけてリリーにキスしようとしたからだ。その口はパクパクしている。


(いや、なんでキスのとき口あけるん!?閉じろ閉じろ!!)


 そしてその手は執拗にリリーの胸をまさぐっている


(胸に手ぇ入れて一瞬で乳首の場所まで到達したな・・・さすが慣れてる、でもそんな高速でこねくりまわされたら痛いんだけど!?)


 きわめつけに、ルセルの手がリリーの下着の中にはいってきた。リリーは嫌すぎて身をよじったが、ルセルは強引に足の間に指を押し入れた。


(あああ~~~っ!!痛い!!そこを力強くガシガシすんなっ!!!!!)


 そして予感は確信に変わった。

 これは、噂の・・・!!


(ガシマン、チクスト、池の鯉!!セックスドヘタ男の役満ッ!!!)


 リリーは耐え切れなくなって叫んだ。


「いっ、痛い痛い!!!殿下!!!ちょっとストップッッ!!!」


「なんだ?気持ちよくないのか?いままでの女はすぐにイっていたぞ?」


 自分のテクニックを疑わないその顔は得意げだったが、リリーは遠慮せず言った。


「いや待ってそれ演技!絶対演技!100パー演技だから!!!」


「なっ・・・失礼な奴だな、お前がマグロなだけではないか」


 リリーは上目遣いできいた。


「殿下・・・今までどんな女性と関係をお持ちになっていたのです・・・?」


「それは・・・いろいろだ。処女の娘もいたし、お前など比べ物にならないような裏社交界の花々たちとも浮名を流してきたぞ」


 裏社交界の花・・・つまり、高級娼婦か。リリーはため息をついた。力まかせに素人の娘、金にあかせてプロの女性・・・これではセックスも上手くなりようがないだろう。


彼は経験がないのだ。

身を焼かれるような劣情の炎を、知らないのだ。

愛しい人の肌に触れたいという身悶えるような気持ちを。

その体にくちづけできるなら、命さえ惜しくないと思えるような刹那を。


 リリーはため息をついた。


「はぁ・・・・殿下、お気持ちもわかりますが・・・少し、人形になったと思って動かないでいていただけます?目を閉じて。はい、口も閉じて」


「は?なぜそんな事をしなくてはならない」


「損はさせませんから、だまされたと思って」


 リリーに押し切られて、しぶしぶながらルセルは目を閉じた。赤い光に照らされた濃い睫毛が、その頬に影を落とした。


「な、何する気だ・・・・?痛いことしたら、ただではおかないぞ」


「大丈夫、殿下とちがってそんなことしません、嫌だったら嫌って言えばいいですから」


 リリーはそっとルセルの頬に触れた。ルセルはびくっとしたが、そのまま何が起こるのか待っていた。


(いいもの食べてるから、肌はさすがに綺麗だなあ。ちょっと濃いけど、見事なブロンド。これが・・・・彼女だったらいいのに)


 そう思いながらリリーはルセルにキスをした。淡い桃色のその唇を唇でなぞると、かすかに震えているのがわかった。なのでリリーは安心させるように頬を撫でた。

 先ほどの池の鯉がまた発動しないよう、リリーは先手を打って彼の唇に舌を這わせ、そっと中へ舌を入れた。

 彼はあっけにとらて、されるがままになっている。その動かない舌に、リリーは自分の舌を深くからませた。


「っ・・・・ふぁ・・・」


 鼻にかかったルセルの吐息が漏れる。リリーは唇からルセルの耳に移動した。

 息を抑制して、そっと耳に唇で触れる。大丈夫そうだったので、そのまま柔らかい耳を舐めた。


「っ・・・なに・・・を・・・」


 切れ切れの声でルセルが言った。


「嫌ですか・・・?」


 少し沈黙が流れたが、彼は以外にも再び目を閉じた。


「嫌・・じゃ、ない・・・つ、続けろ」


 しばらく優しく耳を舐めたあと、首元からゆっくりと服を脱がせた。


「や、やめろ、自分で脱げるっ」


「今のあなたは人形。私にまかせてくださいって」


ルセルの頬がじんわりと赤くなった。が、それ以上は抵抗しなかった。

上衣を脱がすと、青年になりたての白磁の肌があらわになった。


 その肌につっ・・・と触れる。胸から腹、そして下半身へ。


「んっ・・・」


そこはすでに硬く持ち上がっていた。


「下、脱がしますよ」


「う・・・」


顔をそむけながらも、ルセルは素直に従った。彼のものが現れた。


(うーん、これを…実地で触るのははじめてだ)


リリーは一瞬躊躇した。


「な、なにを見ているっ・・・!」


リリーに他意はなかったのだが、ルセルは真っ赤になっていた。


「ば、馬鹿にしているのか、お前っ・・・」


「そんなことないですよ。殿下は感じやすいんですね」


リリーはそれに指をのばして、先端に置いた。じわりと透明な液体が指先に滲んだ。


「っ・・・・」


(ええと、これが先走りってやつかな・・・?ま、女の子と同じように触れば大丈夫かな)


ルセルの腰がふるふると震えている。表情はちょっと苦しそうで、浅い呼吸をくりかえしていた。


「リ、リリー・・・」


「なんですか?」


「も、もう人形はやめだ、お前に、い、入れたい・・・」


 そう訴えるルセルの目は、泣いているわけでもないのに潤んでいる。濃い金色の睫毛に縁取られた空色の瞳。


「大丈夫、ちゃんと最後まで面倒みますから・・・」


 リリーは片手でルセルを抱きしめ、もう片手をそこへやった。


「あっ・・・くぅっ・・・」


 痛く感じないギリギリの力で、リリーの手はそこをにぎった。透明な液体がとめどなくあふれていたので、それが潤滑油になって動かしやすかった。

 手の中でそれが、固くなっていくのがわかった。


「あ、あ、やめっ・・・やめろっ・・・・」


「痛い?」


「ち、ちが、そうじゃなく、て・・・・・あっ、あっ・・・っ!」


 彼はそこで言葉を途切れさせた。硬い部分がどくんと脈打ち、とろっと白く熱い液体が流れた。


(あ・・・これ、精子?)


 熱い液体が手をぬらしたので、リリーはハンカチを取り出してそのものと自分の手を拭いた。


「ひゃっ・・・・あ、あっ・・・も、もう、さわるなっ」


ルセルは全力疾走した後のように、ぐったりとリリーに体をあずけ息をついていた。


「大丈夫ですか、殿下?」


「も、もう少し・・・こうして、いろ」


ルセルはリリーの胸に顔をうずめ、ぎゅっと腕をにぎって言った。


「わかりました」


そういうとルセルは安心したのか、握る力を弱めた。


「お前・・・なんだかいい匂いがする・・・な」


「ふふ、香水ですよ。ところで・・・気持ちよかったですか?」


そう聞くとルセルは怒りだした。


「ば、ばかっ。余はお前に入れようと思ったのに、お前からキスしたりみ・・・耳を舐めたり変なことばかりするからっ」


いや、そっちがしてきたことの方が相当やばかった。リリーは頭の中でそう突っ込みを入れた。


「私のキス、どうでした?いやじゃなかったでしょう?」


「・・・・」


ルセルは顔を真っ赤にして黙り込んだ。


「殿下はしたことなかったかもしれませんが、あれが本当のキスだと思いますよ」


「余がいままでしていたキスは間違いだとでも申すのか」


「う~ん、そうとも言い切れませんが・・・好きな人には、ああはしないんじゃないですか?」


「お前は好きな人と本当のキスとやらをしていたのか。それは誰だ」


そういわれて今度はリリーが詰まった。


「いや、それは、う~ん・・・」


「答えられぬのか」


「えっと・・・・・」


煮え切らない態度のリリーに、ルセルはかんしゃくをおこした。


「もうよいっ、下がれ!余はひとりになりたいっ」


「わかりました、おやすみなさい、殿下」






いわれたと通りリリーは部屋を出た。


(はぁ~~~~っ、つかれた)


とりあえず男女の本格的な行為をしなくてすんだことにほっとして、肩の力が抜けた。


「リリー様」


突然、さきほどの側近に話しかけられてリリーは飛び上がった。


「わっ、あ、あなた・・・えっと」


「リチャードと申します」


その落ち着きはらった様子にリリーは頬を赤らめた。


「やだ、あなた・・・中の様子、聞いていたの?」


「いいえ、滅相もない。ですが・・・何が起こっていたかはわかっております、どうかこちらをお受け取りください」


リチャードはずっしりとしたびろうどの巾着を取り出した。


「なんですか?これ」


「我々からの感謝の気持ちでございます」


中身を察したリリーは顔をしかめた。


「やだ、そんなのいらないです。それより、これを見てくださる?」


リリーは先ほどルセルに書かせた証文を取り出した。


「殿下とはこういう約束をしたの。だからリチャードさん、あなた証人になってくださる?」


リチャードは目を白黒させながらそれに目を通した。


「え?あ、はい」


「ちゃんと見せましたからね。覚えていて下さいね、お願いよ!」


 そういってリリーは颯爽と部屋へ戻っていった。誰もいなくなった真夜中の廊下で、リチャードはこっそりつぶやいた。


「これは・・・いままでにないパターンだな・・・」


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