王子様、あなたの妃にはなりません!

小達出みかん

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第一部 馴れ初めから結婚まで

ラブミーテンダー(4)

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ルセルは己の一物を見下ろした後、おとなしく服を着なおした。こうなったら、不貞寝するしかない。


そこへバタンと勢い良くドアがあいたので、ルセルは飛び上がった。


「殿下!!先ほどリリー様が全力で出て行かれましたが、どうされたんです!?」


「チャールズ、驚かすな・・・・。はぁ。スノウに見られてしまったと、うろたえてリリーは帰ってしまった」


チャールズは一瞬考えた後、ルセルの布団をはいだ。


「なっ、なにをする」


「なに言ってんですか、追いかけるんですよ!!!これはリリー姫を手に入れるチャンスです、チャンス!!!さあ着替えますよッ」


ぽかんとするルセルを、チャールズはけしかけた。


「このまま何もしなかったら、リリー様は恥をかいてしまいます!そのためも、彼女とは婚約しているんだとスノウ様に対してアピールして、リリー様の名誉を守ってさしあげないと」


「め、めいよ?こんやく?」


「ああもう、つまり、リリー様にプロポーズなさるんですよ、これから」


「はっ!?だがリリーにその気はないんだぞ。断られるに決まってる、余は・・・」


「だとしても言うチャンスはここです!リリー様も、スノウ様が賛成すれば流されてOKするかもしれないじゃないですか。それにどっちみちお妃選びもそろそろ時間切れです。誰か選ぶなら、彼女しかいないでしょう?あたってくだけろです」


「た、たしかに、そうだが・・・」


ここまで言われてなお、ルセルはしり込みした。


「なら、どっちがいいんです?このまま何もしなければ、リリー様は確実にスノウ様と領地にお帰りになられますよ。殿下とリリー様は、他人のままでもう二度とあうこともなくなるでしょう」


(それは・・・いやだ・・・。)


 そうだ、行動だ。何かを手に入れたかったら、自分で行動するしかない。

 今までそれをしてこなかったから、自分にはなにもないのだ。

 自分が、スノウのように愛してもらえるとは思えない。だが・・・


(このまま、彼女を逃してしまうことは・・・したくない)









「スノウっ・・・!」


リリーは全力疾走して、部屋のドアをバンとあけた。


「今のはちがうの、誤解なのっ!!だから・・・!」


スノウはおどろいて立ち上がった。


「まぁリリー・・・その・・・ごめんなさい、私、お邪魔しちゃって・・・ノックはしたんだけど、答えがなかったものだから・・・」


(うっ・・・・・!!)


あんなあられもない姿を、よりによってスノウに見られてしまったのかと思うと、リリーはおいおい泣きたい気持ちだった。


「くうっ・・・うっ・・・」


そんなリリーを、スノウはやさしく覗き込んだ。


「リリー、どうしたの、大丈夫・・・?でも・・・私、うれしいのよ」


「う、うれしい!?なにが・・・!?」


スノウはぽかんとして言った。


「あら・・・だって。殿下ともう、婚約なさったのでしょ?」


「はい????????????」


今度はリリーがぽかんとした。


「だってリリー、婚約したから、その・・・同衾、したのでしょう?」


(アッ・・・・・・アッ・・・どうしよ)


ここで肯定すれば、大嘘になる。だが否定すれば、婚前交渉するふしだらな女だとスノウに思われてしまう!

そもそも事の発端はスノウなのだが、それを言えるわけもない!

リリーの頭は爆発寸前だった。

そこへ・・・


「そうなんです!スノウ様!とうとうお妃様が決定したんです!我々がんばった甲斐がありましたね!」


満面の笑みを浮かべたチャールズが部屋へ駆けつけた。


「えっ、やっぱりそうなのですね!もう・・・リリーったら、水くさいんだから・・・」


スノウはそういってリリーを抱きしめた。


「え・・・?何?2人、いつのまに」


「なかなか殿下とリリーがくっつかないから、私達やきもきして見守ってたのよ、もう」


「え????????いや、それは、ちが」


しかしチャールズはその言葉をさえぎった。


「さあ、リリー様もはずかしがらずに。スノウ様もこうおっしゃってることですし。」


スノウはリリーの手を取って撫でた。


「私、本当に、嬉しいのよ・・・。リリーに幸せになってほしいって思ってたから。しっかり者のリリーなら、きっと立派なお妃様になれるわ。おめでとう」


「ま、まって、それは誤解で」


その時、ルセルが部屋へ入ってきた。


「で、殿下・・・」


(大変なことになっちゃったよ・・・!)


と、リリーはルセルに目でうったえた。

だがルセルは、チャールズに目線を送った。

かしこまりましたといわんばかりにチャールズは頭を下げ、スノウを連れて部屋から退出した。

その時間、わずかに3秒。

追いかけたくとも、リリーはなにもできなかった。






2人きりになった部屋で、ルセルはコホンと咳払いをした。


「リリー姫」


今までに見たことのない真剣な顔で、ルセルはリリーの前にひざまづいた。


(は!?!?!ちょ、ちょっと待て、この、この感じは・・・!?)


リリーはまたしても頭の中がぐるぐるした。彼が、まさか!?いやでもこの感じ・・・!?


だがそこで、ルセルの口が開かれた。


「余と、結婚してくれないか」


その目は真剣そのもので、彼が茶番で言っているのではないことがわかった。


(どうしよう、でも・・・でも私にはスノウが)


「・・・・だめか」


とたんに彼の顔が悲しそうに曇った。


「殿下・・私は・・・ご存知でしょう・・・?」


どういっていいのかわからず、リリーは言葉を濁した。


「余は・・・それでもかまわない。リリーがずっとスノウを好きでも。だからリリー、余と・・・ずっと一緒に、いてはくれないか。この数ヶ月、一緒に居てくれたように・・・」


そのひたむきな言葉に、リリーは心がゆれた。


「でも・・・私は、こんな女ですよ。生まれもよくないし、清い身でもない・・・。なにより女なのに、女が好きな異常者です。殿下の妻には、とてもふさわしくありません・・・」


ルセルは立ち上がって、リリーを見た。青い空のような目が、まっすぐリリーに届いた。


「だが・・・余はそんなお前の姿を見て、す・・・好きになったのだ。

お前はスノウのために自分を余に差し出した。最初は酔狂な女だと思った、だが・・・。

そのうちスノウがうらやましくなった。ここまで深くお前に愛されているのが。

お前の一途な所が好きだ。たとえその相手が、余でなくとも・・・。

だから・・・スノウには感謝している。スノウが好きなお前が、好きだ」


そういわれた瞬間、なぜだかリリーは、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


(ああ、私・・・・)


スノウを欲していないなんて、嘘だ。幸せを見守りたいなんて、嘘だ。

本当はこの気持ちを、誰かに認めてほしかった。

この自分の愛を、受け取ってくれる人がほしかった。

愛して、愛されて、求め合いたかった。

それがスノウなら、良かったけど・・・


(それは、無理だ)


なら、せめて、目の前に差し出された手を取るべきではないか。


(すくなくとも殿下は、私を求めてくれている・・・愛して、くれる)


「・・・殿下」


「だめか?余と一緒にいるのは・・・いやか?」


リリーはぎゅっと殿下を抱きしめた。


「わっ、リリー・・・」


「ありがとうございます・・・では、一生、私を離さないでくださいね。私も・・・離しませんから」


リリーの目からは、涙が伝っていた。



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