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オレは体格と年齢と性別を操る能力を持っている(短編読み切り)

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2月14日…

今年もこの日がやってくる

オレの名前は瀬名ジュン
4人男兄弟の末っ子として生まれた
双子の兄を持つ小学五年生


そして性別と体格と年齢を操る
人並み外れた
能力を持っている

能力を持ってるなんて
ちょっと凄いやつだろ

でも双子の兄貴以外には
能力を使えることは秘密にしてるんだ

だから周りから見れば
オレは至って平凡な小学生男子だ

でも同じ双子なのに
兄ちゃんは違って
たくさんの女子からモテていた

去年の明日だって
兄ちゃんへ好意を抱く女子からもらった
夜には三十個ものチョコレートが
部屋の勉強机の上に置いてあったんだ

正直何がオレと違うのかわからない…

二人並んでも
同じ顔だし背丈も同じだ

まぁ兄ちゃんのほうが
スカしてて
眼が凛々しくて
オレみたいに
ヘラヘラしてないけど…


「やっぱり!双子で
チョコを貰えないのは
オレのプライドが許さん!」

でも貰えるかの前に
女子にモテてないし…

オレは深く考え込む

そして
一つの案をひらめいた

「そうだ!自分で買って
女子からもらったって嘘ついちゃおww」

明日は生憎
家族全員で親戚の家に
行かなきゃいけないし…今日しかない!

でもこのままデパートの
チョコレート売り場に行っても
誰かに買ってるとこを見られてしまうかも
しれない…


「だけど、オレにはそれを
乗り切る手段があるwww」

オレはよその家からの
貰い物の箱に巻きついていたリボンと
お母さんの着なくなった
大きめのニットを用意し
ニマニマと一人部屋の片隅で笑った


そして数十分後
近くのデパートへと足を運ぶ


チョコレート売り場に踏み込むと
そこにはバレンタインデー用に
包装された箱詰めのチョコレートが
棚にたくさん並べられていた


つっついに来ちゃった…

オレはふと、周りを
確認した


いや、大丈夫だ…
今のオレを
瀬名ジュンだなんて思うやつは居ない

貰い物の箱に巻き付いてあったリボンは
変哲のない髪型のアクセントに…

大きめのニットは
ワンピースっぽく見えるように
着こなすため…

念には念を押して
前髪をちょっと三編みに編んだ


そして身体も
女体化させている

ブカブカのニットからも
身体のシルエットが見えるように
ヒップも大きく胸も豊満にしてるし

普通の女子化のときより
ちょっと揺れて歩き辛いけど

これで自作自演をする惨めな男とは
思われないぜ!


「ううwうまそ♪」

そのまま何も気にせず
歩き回り
オレは
一人チョコを眺めていた


しかし、突然
オレの肩を誰かが叩いてきた


「あれ?瀬名くん?」

オレは固まり
小刻みに震える

だっ誰だ…?
女体化してるのに
オレだってバレた?

オレのこと知ってるやつだよな?

「いっいえ…ちがっちがいます

けど…」

ゆっくりと振り向くと
そこには同い年くらいのツインテの女子が居た

クラスの女子じゃない…
もしかして兄ちゃんのクラスの子かな?

「ホントだ…ごめんね

何かクラスの男の子に似てたから

あっ!変な意味じゃないよ…
その子も顔がキレイだから!」


女子はオレをマジマジと見つめる

「でもすごいそっくりなのよね…

瀬名くんって確か
双子だって聞いているけど
向こうも男の子だもんねぇ…」

マズイ…これ以上
疑われたら
バレるかもしれない

ここは認めるふりをして…


「実はね…!わっ私は
瀬名くんの三つ子の末っ子で
小さいときに親戚に養子として
引き取られたのww!

それで今日は
久しぶりにお兄ちゃんたちに
会いに来たってとこかなww?」


「へぇ♪
瀬名くん家って本当は
5人兄弟で三つ子だったのねw♪

ところで瀬名くんたちも
お買い物に来てるの?」


「うっ…ううん!

今は私一人よww
だって…ああ!そうw!
私はお兄ちゃんたちのために
バレンタインデーのチョコを
手作りしようと思って材料を買いに来たの!」

って、何いってんだよ…オレ!
だいたい自分の分も貰えないくせに
兄貴たちにプレゼント
なんかしねーっつうの!


涙目で口からでまかせを
言っていると



「ちょっと~何してるのよぉナギサ~
早く帰らないとチョコレート渡せないでしょ」

その場に女子が3,4人
やってきた

どうやらオレと話していた
女子はナギサちゃんっていうらしい

そんなことより
また同じ学校の奴らが増えた…
また兄ちゃんのクラスメイトか⁉

「ごめんごめんw皆」

「あれ…この子は?」

「同じクラスの瀬名くんの三つ子の妹だって♪

ええっと名前…」


「わっ私はジュン…

いや!ジュンコよww♪」

「そう!ジュンコちゃんって言うんだ

ジュンコちゃんも明日のバレンタインデーのために
手作りチョコの材料を買いに来たんですって♪」

すると話を聞いていた
女子たちのうちの一人がオレの手を取った

「へぇ♪それならアナタも一緒に
私達とお家でチョコレートを作りましょうよ♪」


へ…?


こうしてオレは流されるまま
女子4人…
つまり兄ちゃんのクラスの
ナギサちゃんとアオイちゃんとメイちゃん
チヅルちゃんたちと
お家で手作りチョコを作ることになった…

みんなが頭巾をつけて
エプロン姿で待っている中
準備のできたオレもキッチンへと入る


「おっおまたせ…」

でも借り物とはいえ
女子物のエプロンを
身につける羽目になるなんて…///

「わぁ♡可愛い!
やっぱりそのフリルのエプロン
ジュンコちゃんに似合うわね♪」

「ホント♡そのレースの頭巾も
相まって素敵よ!」



「あっありがと…」

自分では思わないけど
女子たちには可愛く見えてるらしい

「はぁ~あ…ジュンコちゃんが
瀬名くんたちと同じ学校に通っていれば
いつでもこうして
お洒落して遊べるのになぁ…」

ナギサちゃんが
ため息を付いている

ジュンコ(オレ)と同じ学校じゃないことに
不満をいだいているからだ


今のオレ今世紀最大に
女子に好かれてないか…⁉

オレたちは
会話をはさみつつも
さっそくチョコ作りにとりかかった

そんな中オレは
偵察を入れる

「ところでさ皆は誰にチョコレート
プレゼントするの…?」

「うーん…ジュンコちゃんには
言いにくいんだけど
私はナナセくんかな♡」

「わっ私も…///」

「私も!」

「へっへぇ…」

ちくしょぉ~!
やっぱり兄ちゃんにやるのか…

オレはナギサちゃんにも聞いた

「ねぇナギサちゃんは
誰にあげるつもり…なの?」


「私?…へへ秘密♪///」

ナギサちゃんは
オレたちに照れくさそうに
人差し指を口に添える

…一体誰に
渡すんだろ

考えていると
アオイちゃんがオレにも
質問を投げ返してきた

「でもさ~ジュンコちゃんだって
本当に瀬名くんたちに渡すだけなのぉw?

もっと他に相手がいるんじゃない?
例えば逆チョコしてくる男子とかww♪」


「ええ⁉…いやいや!
そんな男子いないよぉwwフフ!」



そんなやつがいるなら
ここで手作りチョコなんか
作らねぇでソイツら全員女体化させてるっての!

ああ…本当に何でオレは
ここでこんなことやってんだろ

虚しい…

そうしてようやく
手作りチョコが完成した

みんなで一人ひとりが
可愛い柄の袋に作ったチョコを包み
リボンをつけた

「私の作ったのは
チョコレートのカップケーキで…」

「私はアイシングのチョコ」

「私はチョコのクッキー!」

「私は生チョコトリフ♪」



「それで私はチョコフォンデュで
コーティングしたいちごやバナナのフルーツ♪」

おおっ!みんなのお菓子も
うまそう…

でもオレのカップケーキも
中々のもんだろww

オレは皆に礼を言った

「今日は誘ってくれてありがとね!///」

「ううん!楽しかったし
次またこっちに来る用事が
できたら家に来てよ

そしたら今度は
遊びましょうね♪」

「うん…///」

ナギサちゃんって
話したことなかった子だけど
優しくて結構可愛い子だよな…///

「さてと…あとは
ナナセ…くんが家に来るだけね///」

急にナギサちゃん以外の女子が
ソワソワとし出した


「へ?ナナセ?」

何の話だ一体…
唐突に舞い込んできた言葉に
オレは唖然する

…ナナセがここに来るって⁉

「なっなんで
アイツが来んだよ!」

「え?だって…瀬名くん
明日はお家の用事で親戚のうちに
行くから夜まで居ないんですもの

渡すなら今日しか無いかなって
思って…♡///」

そうだったぁ…!
オレが親戚のうちに行くなら
兄ちゃんも行くに決まってんじゃんか!


マズイぞ!
兄ちゃんなんかにこの姿を見られたら
オレの嘘が全部バレちゃう…!

その時玄関の方で
インターホンが鳴った

女子たちが出迎えると
そこには兄ちゃんが立っていた

「よう…来たけど
何だよ?用事って」


「まぁ立ち話もなんだし
瀬名くんも家に上がってよ♪

ちょうど今瀬名くんの
妹ちゃんもお邪魔してるのよ」

「妹?弟じゃなくて?」

オレがジタバタしていると
兄ちゃんが目の前にやってくる


「おまえ…こんなとこで何してんだ」

「うっ⁉」

オレは立ち上がり
慌ててドアを開け廊下へと飛び出す

「ちょっと…!ジュンコちゃんどこ行くの?」


「私ちょっとおトイレに…!

ナギサちゃんおトイレ借りるね!」


「え…うっうん…」

「アイツ…」

それから2分半経つのを
トイレの中の時計で確認すると
オレは外の様子を伺った

「じゃあまた学校でね~♪」

「うん♪みんなバイバイ!」

ドアに耳を当てていると
そんな会話が聞こえてくる

どうやらみんな帰ったみたいだ
オレも出るか…

しかしオレがゆっくりと
ドアを開けたその瞬間
外側から
おもいっきし強い力で引っぱられた

「うわぁ!」

オレは廊下の床に倒れる

「いてて…

っ⁉にっ兄ちゃん…」


上を見上げると
兄ちゃんが不機嫌そうな顔で
オレを見ていた

同時にオレは
起こされ胸ぐらを掴まれた

「このバカ弟!
女子に混じって一体何やってんだよ!

ナギサから全部話は聞いてんだぞ!
白状しろぉ!」


「ううっくっ…苦しい!
ごめん…さいいい!!」

苦しさのあまり
無意識のうちに
オレは元の男の姿に戻ってしまった

するとオレらの前に
ナギサちゃんがやってきた

「弟…って?」

ふと、オレを見た
ナギサちゃんは
さっきとは違う
男子のその姿に戸惑う

どうやら聞かれてしまったし
見られてしまったみたいだ


兄ちゃんはオレから手を離し
オレは息を整えると
すべてを正直に言って謝った

もちろん能力のことも
言った

「本当に騙しててごめん!」


「そうだったんだ…

私は全然気にしてないよw

でも皆にも言ったりしたら
マズイかもね…」


「そっそうだよな…」

「だけど驚いたなぁ…
ジュンくんが
女の子になれる魔法を使えるなんてさw
嘘をついただなんて謝ったけど
本当に身体が女の子に変身してたわけだから
ほぼ、本当だよねww」


「あの…それでさ

能力のことは誰にも
内緒にしててくれないかな…」

「わかってるw
秘密にするわ♪」


ナギサちゃんは
快く了解してくれると
何故か
手作りアイシングチョコを
オレに一袋渡してきた

「はいっジュンくん♪」

「えっこれって…」


「帰り際他の皆にもあげた友チョコよ♪

皆に渡したかったから
誰に渡すか秘密にしてたのw♪

ジュンくんとも
今日お友達になれたからプレゼントするね♪///」

「あっありがと///」

嘘だろ…オレ、オレ
初めて女子からチョコレートを貰っちゃった!


オレが感激していると
兄ちゃんがクスリッと笑った

「フッwこれで
ジュンが女装なんかする必要も
無くなったわけだww」


兄ちゃんの言葉が
何か嫌味っぽく聞こえっけど…
まぁ良いや


ナギサちゃんからの手作りチョコを眺めていると
今日自分も
手作りチョコカップケーキを
作ったことを思い出す

「オレからもナギサちゃんに
プレゼントだ♪」

三袋のうち一袋を
ナギサちゃんに渡した

「フフw
ありがと!ジュンくん///」


「へへww

でも二つ余っちゃったな…そうだ!」


オレは兄ちゃんに
一袋突き出した

「なっ何だよ…」

「兄ちゃんにもやるよww
余り物で義理チョコww!」


「ふんっw…可愛くねぇ弟」

こうしてバレンタインデーの前の日
オレは女子からチョコレートをもらえた…
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