浮気しまくってるのに婚約破棄されないんですが

小鳥遊 沙織

文字の大きさ
1 / 4

1

しおりを挟む
「私、貴方みたいな凛とした方が好みなの……もし良かったら今晩……」

上目遣いで、とびきり甘えた声を出して。パリッと糊のきいたスーツに豊満な胸を強調するようにしなだれかかる。
目の前の男は子爵子息とは思えないような品のなさで私の腰に手を回す。よし、落ちた。

そのまま二人でこっそりと息の詰まるパーティー会場を抜け出し、侍女に用意させた部屋に入る。

ドアを後ろ手に閉めると、我慢できないとばかりに唇を貪られた。背中に回った手は既にドレスのジッパーを下ろしにかかっている。

「んっ……や、もう、シャワーくらい、」
「貴女から誘ってきたんでしょう?いやしかし噂は聞いてますよ。かのルイス公爵の妻エミリアはとんでもない淫乱だってね」

そう言うなりベッドへと放られる。ジッパーを下ろされたドレスは申し訳程度に胸にかかっていて、しかしそれもすぐに脱がされた。胸の尖りを弾かれて思わず声が漏れる。

「あ、んん、きもちい、あぁ……」

子爵子息も興奮からか息が乱れ、質の良いズボンは随分と窮屈そうだ。
既にぐちゃぐちゃの下に手が伸ばされ、ショーツをずらされる。指で、舌で、丹念に愛撫を施され、そして────






**



翌朝、不快感で目が覚め、ベッドの横に目をやると、子爵子息がその間抜け面を晒してすやすやと寝ていた。

(この人名前なんだっけ……まあいいや。それより昨日シャワー浴びなかったし色んな液でぐちゃぐちゃだし腰痛いし……うわ、化粧落とさずに寝ちゃった、最悪……)

急いでシャワーを浴び鞄から化粧水と替えの服を取り出す。元々朝帰りの予定だったから色々持ってきておいて良かった。

まだ寝ている子爵子息を置き去りに、部屋を出た。すると、部屋の外に待機していた侍女が
「エミリアさま。ルイス公爵が、今日の午後に部屋に来るように、とのことです」
と言った。

一言了承の返事をして城へと歩みを進めた。


(これは…!ついに…!)

婚約破棄、その四文字が頭の中を駆け巡る。普通の令嬢なら泣いて縋るようなこの言葉だが、私は違う。なんたって私は、私の婚約者であるルイスのことが大嫌いなのだから。

あの男の良いところなんて地位しかない。まあ顔も少しばかり整ってるかもしれないけど。
何を考えてるのかわからないあの蛇のような目も、私への冷たい態度も、微塵も愛を感じさせないそぶりも全部嫌いだ。

初めて会った時、精一杯着飾った私を褒めもせず「へえ」の一言で終わらせ、連れ立って歩く時もさっさと歩いていって私を置いていくし、少しは仲良くなろうとお菓子を焼いたら「俺は甘いものが好きじゃないしこれは凄くまずい」と言い放つし……とても婚約者への態度じゃない。

なのに私がわかりやすく浮気をしたって、何人と寝たってルイスはなんにも言ってこない。私の首に付けられた赤い痕に気付いているはずなのに、まだ私を婚約者という立場においている。意味がわからない、ああ、腹が立つ!

でもそれも今日で終わりだ。今日の午後、私はあの男から解放される!


そう思うとあまりにも気分が良くて、城へ戻るなりとっておきのコーヒーを入れケーキを食べた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た

青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。 それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。 彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。 ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・ ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

婚約者を寝取った妹に……

tartan321
恋愛
タイトル通りです。復讐劇です。明日完結します。

私の夫は妹の元婚約者

テンテン
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

処理中です...