浮気しまくってるのに婚約破棄されないんですが

小鳥遊 沙織

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「私、貴方みたいな凛とした方が好みなの……もし良かったら今晩……」

上目遣いで、とびきり甘えた声を出して。パリッと糊のきいたスーツに豊満な胸を強調するようにしなだれかかる。
目の前の男は子爵子息とは思えないような品のなさで私の腰に手を回す。よし、落ちた。

そのまま二人でこっそりと息の詰まるパーティー会場を抜け出し、侍女に用意させた部屋に入る。

ドアを後ろ手に閉めると、我慢できないとばかりに唇を貪られた。背中に回った手は既にドレスのジッパーを下ろしにかかっている。

「んっ……や、もう、シャワーくらい、」
「貴女から誘ってきたんでしょう?いやしかし噂は聞いてますよ。かのルイス公爵の妻エミリアはとんでもない淫乱だってね」

そう言うなりベッドへと放られる。ジッパーを下ろされたドレスは申し訳程度に胸にかかっていて、しかしそれもすぐに脱がされた。胸の尖りを弾かれて思わず声が漏れる。

「あ、んん、きもちい、あぁ……」

子爵子息も興奮からか息が乱れ、質の良いズボンは随分と窮屈そうだ。
既にぐちゃぐちゃの下に手が伸ばされ、ショーツをずらされる。指で、舌で、丹念に愛撫を施され、そして────






**



翌朝、不快感で目が覚め、ベッドの横に目をやると、子爵子息がその間抜け面を晒してすやすやと寝ていた。

(この人名前なんだっけ……まあいいや。それより昨日シャワー浴びなかったし色んな液でぐちゃぐちゃだし腰痛いし……うわ、化粧落とさずに寝ちゃった、最悪……)

急いでシャワーを浴び鞄から化粧水と替えの服を取り出す。元々朝帰りの予定だったから色々持ってきておいて良かった。

まだ寝ている子爵子息を置き去りに、部屋を出た。すると、部屋の外に待機していた侍女が
「エミリアさま。ルイス公爵が、今日の午後に部屋に来るように、とのことです」
と言った。

一言了承の返事をして城へと歩みを進めた。


(これは…!ついに…!)

婚約破棄、その四文字が頭の中を駆け巡る。普通の令嬢なら泣いて縋るようなこの言葉だが、私は違う。なんたって私は、私の婚約者であるルイスのことが大嫌いなのだから。

あの男の良いところなんて地位しかない。まあ顔も少しばかり整ってるかもしれないけど。
何を考えてるのかわからないあの蛇のような目も、私への冷たい態度も、微塵も愛を感じさせないそぶりも全部嫌いだ。

初めて会った時、精一杯着飾った私を褒めもせず「へえ」の一言で終わらせ、連れ立って歩く時もさっさと歩いていって私を置いていくし、少しは仲良くなろうとお菓子を焼いたら「俺は甘いものが好きじゃないしこれは凄くまずい」と言い放つし……とても婚約者への態度じゃない。

なのに私がわかりやすく浮気をしたって、何人と寝たってルイスはなんにも言ってこない。私の首に付けられた赤い痕に気付いているはずなのに、まだ私を婚約者という立場においている。意味がわからない、ああ、腹が立つ!

でもそれも今日で終わりだ。今日の午後、私はあの男から解放される!


そう思うとあまりにも気分が良くて、城へ戻るなりとっておきのコーヒーを入れケーキを食べた。

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