それは、恋でした。

臨時マネージャー？

1-7

本屋に着き、すぐ済むからと外で待っていて貰うことにした。


急いで、テーピングの巻き方が書いてある本を探す。





えっと、医療・治療らへんにあるよね？



ーあ、あった！




探していた本を見つけ、早足でレジに向かう。

その途中、もう１冊気になる本を見つけた。



スポーツ選手用の料理本―



パラパラと捲ってみると、栄養バランスの事など沢山書かれていた。


食事には５つの栄養素が大事で、4500以上のカロリーをとる―



こ、こんなにカロリー摂取しなきゃなの？！


確かに、スポーツしている人ってあたしが想像している遥か上の運動量だけどー



あたしは昔から、キッチンに立つことが大好き。


物心ついた頃から、お母さんに沢山の料理を教えてもらった。

今では、仕事で忙しいお母さんの代わりにご飯を作っている。




―…は！！



夏合宿でもご飯を作るという事で、つい真剣に読んでしまった。



外で、お兄ちゃんたち待たせてるのに！


読んでいた料理本も一緒にレジに足を向ける。



「沙奈遅い！欲しいもの見つからねぇの？」


結構な時間立ち読みしていたからか、お兄ちゃんが心配して様子を見に来た。



「ううん、大丈夫！ちゃんと見つかった！！」

「あ、そうなん？ん、何それ」

「ひっ、秘密！」



あたしは２冊の本を抱えながらレジで支払いを済ませる。


本屋を出ると、ベンチで座ってお喋りしている先輩たちを発見。




「す、す、すいません！本当に申し訳ないです！！」


「いいって。欲しいもん見つかったみてぇだし(笑)」

「そんなに待ってもいないしね。裕大はかなり待ったって感じだけど(笑)」

「本当、すいません…」



謝り続けていると悼矢さんがあたしの髪の毛をクシャクシャにしてきた。



「謝るなよ！こっちは平気だって言ってんだし」


悼矢さんの手はとても温かかった。

そして温かい気持ちになった。


こんなにも安心する手はお兄ちゃんだけだと思っていたけど、悼矢さんの手も大きくて安心できる手だった。



「じゃ、帰るか。」

「沙奈！重いだろうからその本持つ！」

「そんな重くないし、大丈「いいから！！」」



お兄ちゃんはあたしの手から本を奪って嬉しそうに持っている。


そんなお兄ちゃんを見て、思わず笑みが零れる。


後ろから視線を感じ、振り返る。


そこには、優しく微笑んでいる悼矢さんがいた。


あたしはまだ、気付いてもいなかった。









悼矢さんに会ってから突然表れた胸の高鳴りが、恋の始まりを示していたなんて―