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臨時マネージャー?
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しおりを挟むside悼矢
夏休み前日。
明日から夏休みということもあり、学校は午前授業で終了。
部活は午後からで、練習が始まるまで約2時間。
昼飯も食べ終えてしまい、俺は暇を持て余していた。
―暑いし、図書室に涼みでも行くかな。
部室棟を抜け出し、北校舎にある図書室に向かう。
図書室の中を見てみると先客がいて、ドアを開けてみると、そこには沙奈ちゃんがいた。
ドアが開く音に気付いて俺に声をかけてくる。
「あ、悼矢さん。悼矢さんもここに涼みに来たんですか?」
「まぁそんな所(笑)」
「今日は昨日より暑いですもんね(笑)」
そう言いながら沙奈ちゃんは手元の本をまた読み始める。
俺はそんな沙奈ちゃんの近くの席に座る。
沙奈ちゃんの机の周りには沢山の本。
「タンパク質を多くとっても平気っぽいな…でもビタミン、ミネラルも必要だし。ん~…」
何を読んでいるのか気になり、沙奈ちゃんの読んでいる本を数冊拝借。
スポーツ選手用の料理本?
パラパラと捲ると、料理を全くしない俺には意味不明な用語ばかり。
沙奈ちゃん、もしかしたら合宿の飯を気にしてんのかな?
「あ、」
「え?」
いきなり声を出されたから俺は椅子から落ちそうになった。
「うわわ、ごめんなさい!」
ペコペコと謝っている沙奈ちゃんは、オデコを机にぶつける。
「・・・痛っ!!!!」
「おい、大丈夫かよ!?」
「あいー」
ちゃんと見とかねぇと危なっかしいな。
裕大が心配するのも頷けるわ。
「なぁ、この本って、」
「あ、それは明日から合宿でマネージャーはご飯を作らないとだから、どんなものがいいかなと思って…」
「へぇ…」
オデコをさすりながら、でも楽しそうに言っていた。
俺と裕大が無理矢理頼んだ臨時マネジ。
それにも関わらず、こうして真剣にやってくれるのかと思うと、俺は少し嬉しくなり笑顔が零れる。
「それに、」
「―それに??」
「お兄ちゃんが、去年みたくお家に帰らないようにと思って…」
連絡もなしに帰ってきた裕大を、目を丸くして迎える沙奈ちゃんの姿が容易に浮かぶ。
沙奈ちゃんは苦笑いをしながら、また本を読み始めた。
「じゃあ、これで今年の合宿は安心ってことだな?(笑)」
「へ?!で、でも!!お口に合うかどうかは分かりません!お兄ちゃんは何でも食べちゃうし!」
「それはきっと沙奈ちゃんのだからでしょ。去年は初日から食わなかったよ(笑)」
「そ、そうなんですか?」
「そ、俺たちは頑張って食ってたけど。でも、次の日も、その次の日も一口口に入れるだけで後は手ぇつけなくてさ。結局腹は減るしまずいしで抜け出したんだぜ?上手い飯が食いたい、帰る!って(笑) もうそんな裕大見て、全員大爆笑」
「そんな裏エピソードがあったんですね…あたし、お腹空いたから帰ってきたとしか言われなかったので、ご飯が足りなくて帰ってきたとばかり―」
「ふは(笑)何だ、それ(笑)」
裕大に似ているからなのか。
それとも裕大の妹だからなのか。
でも他の女子とは違う感覚がした。
沙奈ちゃんの笑顔を見ていると、不思議と俺も笑顔になってしまう。
『お前、気ぃ許した奴にしかその顔見せないよな』
『どんな顔だよ(笑)』
『つられて笑う顔。別に女子の前で笑ってないわけではねぇけど、何か違う(笑)』
以前、裕大に言われた。
その顔がどんな顔なのか、自分では分かんねぇけど、沙奈ちゃんに何処か心を許しているのは分かる。
この感じは一体、なんだろうか―
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