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秋の桜海祭編
体育祭ーパン食い競争と借り物競争②
しおりを挟む松白君が走って来ている時、肝だめしで指名されたことのある私は感覚でなんとなく分かった。
「さくらっ、着いてきて。」
「分かった。」
やはり借りるものの対象は私だったらしい。
何と書いてあったかは知らないが予想通りだった。
…………と思っていたが、ここから先は予想外だった。
「さくら、ちょっとゴメンね。」
「…………えっ?」
松白君はそう言うと私をお姫様抱っこして、ゴールへと向かう。
その光景に会場からは歓声が上がる。
「ちょ、ちょっと!何でお姫様抱っこ?」
「カードに書いてあった。」
松白君は笑いながら話す。
そんな訳ないじゃんとか思ったが大人しくゴールまで身を任せた。
「「おっと、今年の桜海祭のシンデレラと王子様が見せてくれます!」」
司会進行の人も興奮した口調で話す。
は、恥ずかしい。
何とも言えない感覚に襲われる。
そして、松白君は私を抱えたままゴールした。
「一位おめでとう!ふふっ、あなた達のコンビ私は大好きよ。」
「もぉ、先生までからかわないでください。」
順位のチェックをしている先生にも笑われる。
……でも、完全に頭が真っ白で気づいていなかったが、どうやら無事に一位でゴールできていたようだ。
「あははは、いきなりごめんなさくら。」
「大丈夫だよ。それよりカードには何て書いてあったの?『隣の席の人をお姫様抱っこしてゴールに向かえ』とでも書いてあったの?」
他の人達が簡単な物を借りてゴールに来るなかで私の疑問はそこだった。
「さくら凄いな。」
「えっ?」
そう言うと松白君は持っているカードを見せる。
何とそこには『隣の席の人をお姫様抱っこしてゴールに向かえ』と書いてあった。
……まさか本当に書いてあったとは。
「あははは!」
そんな私の驚いた顔を見て松白君は笑っている。
そうだ、これは桜海の体育祭なんだ。これくらいのことはあるのは当たり前か。
………もしかして、今日は他にも何か起こったりするのだろうか?
いや、そんなこと考えても仕方ない。分かるのは神様だけだから。
(…………ふふっ。)
でも、今ので松白君の緊張がちょっとだけでも解けてたらいいな。
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