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閑話
34・シャーリーの休暇(2)
しおりを挟むアユリは中を見回して、感動していた。移動用のではあるのだろうけれど、美しい意匠の調度品はどれも統一感があり、ど真ん中に置かれたベッドはキングサイズよりも大きい。
「すごい…お金持ちって感じ。ゴージャス!」
「アユリ、こういうのが趣味なの?」
「ううん、こんな高級なの見たことないから、感激してるの。」
「うふふ、ノブレスオブリージュよ!さあ、お茶にしましょう。ソーヴィのハーブティは美味しいのよねえ。」
準備だけしておいたものを、メイド達が給仕する。
ほわっと香る優しいハーブは、心を落ち着かせた。
シャロンは一人、氷入りのミントティーを飲んでいる。
「最近、暑いわよねえ。もうすぐ夏が来るわあ…」
確かに、この前まで長袖を着ていたが、今は五分袖の物を着るようになった。
そして、アユリが着ている五分袖のワンピースは、シャロンのプレゼント品である。
「シャーリー、いつも素敵なお洋服をありがとう。」
「いいのよお、未来の妹ですものー!私、弟妹は可愛がるタイプなの。」
急に飛び出した妹というホットワードに、アユリの顔が赤くなる。
「えっ!?いや、あの?!えっ?!」
その様子を見て、ソーヴィは大変機嫌を良くしている。弟の機嫌を転がすのはお手の物だ。
「あら?違うの?まあそれは別にしても、アユリちゃんは可愛がりたい女の子だけどね!」
「…そっすか…」
貞操観念の違いで、アユリは引き気味である。
「シャロン、俺は普段通りに仕事をしているから、何かあったら言ってくれ。」
「ありがとう、助かるわ。あ、ねえ、何か新しい遊びないかしら?せっかく久しぶりに来たし、湖のほとりで肌を焼くだけじゃつまんないでしょ?」
確かに、1週間も滞在するのに、のんびりしているだけでは飽きそうだ。
「そうだなあ…俺はあんまり遊んで来なかったから、思い浮かばないな。」
「小さい頃から本の虫だったものねえ、ソーヴィは。」
そこへ、アユリが手を挙げた。
「あの、私が住んでいた地域の話なんですけど。」
「なあに?!」
シャロンが期待に目を輝かせる。
「こういう外で過ごす時って、みんなでボール投げて当てたり、打ち上げて得点を競ったり、円盤みたいな物を飛ばしてキャッチしたり、ゲームをして遊んでました。」
ドッジボールやビーチボール、キックベース、フリスビーのことだが、説明が面倒なので省略した。
「まあ、楽しそう!でもボール…当てたらみんな死んじゃうわね。」
メイド達がこくこくと頷く。
この国は硬くて小さいボールが主流らしい。
「そういうんじゃなくて、こう…ツルッとしてて柔らかくて、空気がいっぱい入ってるからよく弾むし、当たっても痛くないんです。」
「それなら、いいわねえ。でも、そんなもの無いわよね。」
そうか、確かにソーヴィの家でビニールを見たことはない。
しょぼんと残念そうにしているシャロンを見て、アユリはソーヴィの腕を引っ張った。
「ソーヴィ…」
愛しい女の潤んだ瞳に懇願されては、否と言えない。
「…やってみるけど、同じ物が作れるかは分かんないよ。」
「うん、ソーヴィありがとう!」
そうと決まれば、すぐに研究試行錯誤したくなるのがソーヴィである。スッと立ち上がり部屋を出て行く。
「じゃ、試作品作って来る。どういうのか分からないから、アユリも来て。」
「おーけーおーけー!手伝いまーす!」
「楽しみに待ってるわー!その間、私達は、お散歩でもしましょうか。」
「はあーい、シャーリー様ぁ!」
それぞれが部屋を出て、一日目を楽しみ始めた。
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