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番外編

番外編小話・1

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【私の彼の好きなところ(ほとり視点)】

私の彼氏は、灘川くん。
仕事できて、かっこよくて、顔も端正で、スタイルまで良くて、しかも優しくて、私のことが好き!
なにこれー!?こんな奇跡ってあるー?!
夢見てない?私、夢見てない?

夢じゃないんだってー!
現実なんだってー!!
前世の私、徳積んでるわぁ。ありがとう、ありがとう。今世最高に幸せです。
今生を大切に生きます。
私の一生をかけて、灘くんのこと幸せにします!


「ほとり、ほとりー!」
ハッと振り返ると、私の御彼氏様が、定刻通りに待ち合わせ場所へいらっしゃいました。
「また、ぼーっとしてたけど。何考えてたの?」
あ、聞いちゃいます?全然答えますけど。
「灘くんがー、かっこよくて、優しくて、仕事できて、顔もかっこよくて、オシャレで、スタイルよくて、何しててもかっこよくて、息してるだけでかっこよくて、好きで好きで死にそう」
「分かった、分かったから!もういいから!!」
灘くんは自分のことを直接的に褒められるのが苦手なので、毎回途中で止められる。
でも、照れてるのが可愛いから何度でも褒める。

「はー、やばー。私の御彼氏様まじやばー。超絶かっこいいんですけどー。今日も最高にかっこいいですー。」
今日の灘くんの服装は、シワ加工のストライプのワイシャツに、黒いスキニーパンツ、黒スニーカー、メッセンジャーバッグ。とてもシンプルな出で立ちだけど、清潔感があって爽やか。ちなみに普段上げている前髪は下ろしてる。
「そりゃどうも。」

ちなみに私は、白いブラウス、ゴブラン織りのベージュ地にボタニカル柄のタイトスカート、ペタンコのパンプス、小さいショルダーバッグ。
灘くんも、私を上から下まで舐めるように見る。
「ショルダー斜めがけですね。」
それはもう、嬉しそうにニヤニヤしている。
「お好きでしょう?」
「ええ、まあ。」
「灘くんって、前からだけどちょいちょい下ネタ挟むよね。」
「あー、うん。え、不快?」
「下品じゃないし、別に嫌いじゃない。ちょっと可愛いとすら思う。」
「あー本当。そっか、そっか。」
何を納得したのか、手を引かれて歩き出す。

「ほとり、俺のこと好きだよね。」
「え?知らなかった?伝え方が足りなかったかな。一番好きなのは、ふざけてるところで、二番目は仕事してる時とのギャップで、三番目は眉毛」
「いやもう、言わなくていいから、え?眉毛?」
怪訝そうな顔をしている。
ほら、その表現力豊かな眉毛だよ!
「顔のパーツで一番好き。よく動いて可愛い。一番好きな眉毛は、笑った時に八の字に下がるところ。」
「また、なんてニッチな嗜好で…ありがとうございます?」
なんとも言えない顔してる。

あー本当に可愛い。
大好き、大好き!

「今日は何回眉毛が下がるか数えておくね!」
「遠慮します。」

今度、もっとちゃんと、どこが好きか時間を作って伝えようと、新たに決心しました。
私の彼の好きなところ。






【連絡頻度(ほとり視点)】

付き合う前は、よく飲みに行く仲の良い同僚だったから、日常的に連絡を取り合うことなんてなかった。
あっても、帰社したのでそっち向かいます、とか。事務的なやつ。

彼氏になって1ヶ月(私の中では2週間)、面白いことがあったらメッセージが届いたり、出張中は夜に電話が鳴ったりしている。
くすぐったくなるような嬉しさ。


昨日のやりとりは、こんな感じ。

「ほとりみたいなネコがいたよ。」
空き地の雑草で、一人遊びをしてるのか、ピョーンと飛び跳ねているショットが添付されてた。

うーん。
一人遊びが上手ってこと?
ジャンプ力があるってこと?
元気ってこと?

伝わらないから聞いてみた。
「どの辺が?」

食器を洗って戻ると、返事が来ていた。

「顔!楽しそうでしょ?」

写真を見返す。
確かに、笑い声をあてるとしたら、ギャハハ!って感じの顔をしている。
彼からは、こう見えているのか。


それじゃあ、私も。
「街で見かけた素敵なシーン」

改札向かいにある駅ビルの前で、私を待っている彼の写真。
ただ立っているだけなのに、被写体が素晴らしいから、映画のワンシーンみたいに見えた。

溜め息が出るくらいかっこよかったから、隠し撮りしました。
実は、結構隠し撮りしてる。
だって、声かけて写真撮ると、絶対にひょうきんな顔するんだもん。
それも可愛くて大好きなんだけど、たまにはすました顔も見たいでしょ。

隠し撮り写真を眺めてたら、着信が入った。


「はーい、あなたの大好きな、ほとりちゃんでーす!」
「……好きですけど。まじ、ほとり、いつ撮ったのあれ」
「素敵でしょ?単館系の映画みたいでしょ?この前の待ち合わせの時に、見つからないように迂回して撮ったよ。いやぁ、パパラッチになれちゃうなぁ。」
「全然分からなかった。」
「他にもあるよー!ファッション誌風とか、アイドル雑誌風とか、セクシー特集組む女性誌風とかね!」
「えっ最後の絶対やばいじゃん。」
「んふふふ、いやぁ良いものお持ちですね。」
「すけべジジイかよ。まぁ、ほとりしか見ないから良いけど。」
「こんなにカッコいいってこと知ってるのは、私だけでいいもん。」
「そりゃどうも。じゃあ今度、撮影料金いただきますね。」
「えっ、お金無いんで現物支給でお願いします。」
「フッフッフ…言質取ったり。覚悟しておけよ。」
「まじ怖いんだけど。」

何させられるんだろう。
でもムッツリな彼なので、十中八九ベッドの中のことでしょう。
頑張ろ。
で、またセクシー女性誌風の撮影しよ。


こんな感じで、会えない日も楽しくやってる。







【ハイスペック営業マンの進化(阿部視点)】


俺が入社したばっかりの頃、灘川さんはキレキレの営業って感じで、どんな取引先の要望でも上手く対応して、ガンガン営業成績上げてるかっこいい人だった。
しかも見た目がすこぶる良いもんだから、社内から取引先から女の人がみーんな灘川さんを見てて、ささやかなものから大胆で直接的なものまで、毎日誰かからアピールされてた。
2週間一緒にいただけでそう感じたんだから、きっと生まれてから今までずっとそうだったに違いない。
俺も、そこそこ容姿には自信があった方だけど、灘川さんは立ってるステージが上だった。

そんな灘川さんは、容姿を褒められるのが苦手で、外面だけを見て寄ってくる女の人達を、微塵も相手にしていなかった。
きっと過去に、相当嫌なことがあったに違いない。

「阿部くん、今日飲みに行かない?」
珍しく、小休憩中に企画部に来た灘川さんが、難しい顔で声を掛けてきた。
にわかに企画部の女性陣が色めき立つ。
「いいっすよー。どこ行きます?」
「いつものところで。」
「オッケーっす。」
じゃ、と手を上げて部屋を出て行った。
そういや、この人と俺、同い年なんだよなぁ。
松田さんと木実もか。
俺たち3人が騒がしいから、灘川さんは落ち着いてて年上に見える。


サシってことは、何か話したいことがあるんだろうな、と思っていたら、悩み相談という名の惚気だった。
「どうしたら良いと思う?」
「そうっすね…」
ちゃんとした恋愛をしてこなかったから、彼女の喜ばせ方が分からないらしい。
なぜ人選が俺?って思ったけど、残りが松田さんじゃ相談になんないよな。
「彼女って考えるより、木実と何がしたいかじゃないっすかね。女と認識するより、木実っていう人間だと思って接した方が…え?」
灘川さんが、何か言ったぽいんだけど、よく聞こえなかった。
見目の良い顔を片手で覆って、苦しそうに呟いた。
「覚えたての学生みたいに、してばっかなんだよね…。木実としたいことなんて一つしかなくて。」
この人、アホだ。
人ってここまで変わるもんなんだな。
むしろ、こっちが本性か。会社のキレキレ営業が嘘みたい。
そして、俺にはその本性を晒してくれてるあたり、信頼されてんのかなって思って、まぁまぁ嬉しい。
「いいんじゃないっすか?付き合いたてなんて、そんなもんでしょ。ちなみに、頻度は?」
下世話なこと、気になるよね。
「一回のデートで、平均2、3回かな。」
この歳で?!サイボーグか何か?
「灘川さん元気っすね。俺1回しかできないわ。」
「ほとりが、かわいすぎて…」
木実、凄まじく愛されてんな。
「今のところ、嫌がってないんでしょ?」
「多分」
「じゃあ、やっときましょ。ついでに開発しちゃえばいいんじゃないっすか?灘川さんとじゃなきゃできないプレイとか。」
何だかは分からないけど。
「そう?」
「木実が嫌がらないなら良いと思いますけど。」
「そっか。いいかも。」
イケメンがすっごいエロい顔してる。
ごめん、木実。焚きつけた。違う意味で喜ばされるよ、頑張れ。


ハイスペック営業マンは、対木実専用エロサイボーグに進化しました。

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