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番外編

続お洋服を買いに行こう・2

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次に入ったのは、内装がモノトーンで落ち着いたお洒落なお店。でも、値段はかわいい。
「灘くーん!これとこれ着て!」
ただただ着て欲しい服を、目に付いたものから渡す。
「熱いな…その情熱、嫌いじゃない」
「お願いしまーす!!」
試着室で着替えるのを待っていると、スタッフのお兄さんが話しかけてきた。
「お姉さんの彼氏さん、無茶苦茶カッコいいですね。」
そうなんですー!分かりますー?!かっこよさの量が収まりきらなくて、お店を充満して流れていっちゃいそうですよね!!
「ありがとうございます、かっこいいですよね!」
「骨格が良いから、なんでも着こなせちゃいますね。あの、俺も着て欲しい服あるんですけど、お願いしても良いですか。」
そんなに?!おっけー!
「灘くーん!お兄さんが着て欲しい服あるってー!」
カーテンの向こうでゴソゴソしながら、何か言ってるけどよく聞こえない。
「多分大丈夫なんで、持ってきてください!」
「いいですか、ありがとうございます。すぐ持ってきます。」
灘くんかっこよすぎだから、コーディネートしたくなるのよく分かる…!
カーテンがシャッと開いて出てきた灘くんは、私セレクト。
黒いハット、詰襟の白シャツ、カラーストライプのロングジャケット、濃いグレーのストレートパンツ。
背が高いから、長い丈が似合いますね。キメキメなコーディネートにしちゃったけど、服に着られてる感がないのはさすがです。
「どう?」
「…か、かっこいいです…ああ…」
あまりのかっこよさに、感嘆詞しか出ない。目が潤んできた。
「そんなに喜んでくれるなら、着る甲斐があるよね。」
ポケットに手を突っ込んでくるりと回る。その所作もグッときます。
慌てて携帯電話を取り出してカメラを起動する。
「目線お願いしまーす。」
声を掛けると、キリッとした表情で右側に体重を乗せて、自然なポーズをしてくれる。サービス精神旺盛。素敵です。
「写真撮ったの?」
「撮ってないよ。カメラマンの振りしてるだけ。お店って普通、撮影禁止だよね。」
お兄さんは服を取りに行っていないから、撮っていいかも聞けないし。
「写真…欲しい?」
「欲しい!!」
「家にいる時なら、撮ってもいいよ。代わりに、ほとりも撮るからね。」
自分の写真とか死ぬほど嫌だけど、灘くんの写真を合法的に手に入れる為なら背に腹はかえられぬ。
「分っ…かりましたー」
灘くんとモデルごっこする…!たまんない。やりたい、モデルごっこ。小道具持参しますね!いやでも、ちゃんと撮るならスタジオ借りたい。
「ほとりー、ほとりさーん。」
「はっ!ごめん!聞いてなかった、何?」
「次、着替えるけど?」
「お願いします!」
2回分渡しちゃったので、私セレクトがもう1ターンあります。
ドキドキしながら待ってると、スタッフのお兄さんが服を持ってきた。
「もしかして、1回目終わっちゃいました?」
「はい。果てしなくかっこよかったです。」
「残念!」
お兄さんと話しながら待っていると、すぐカーテンが開いた。
スポーティなキャップに、リゾート柄の開襟シャツ、ジョガーパンツ。一歩間違うとウェーイ!ってなりそうなコーディネートだけど、灘くんのかっこよさが相殺してます。
「今年の流行りを全部入れましたって感じ?」
「ええ!調べてきました!灘くんはあんまり流行りもの着ないから、ちょっと見てみたかったんです!」
「いやぁ、本当、彼氏さんかっこいいですね。外国人モデル体型だし、っていうかもしかしてモデルさんだったりします?」
灘くんがゆるく手を振って否定する。
「しがない会社員ですよ。」
「社内一イケメンです。」
「ですよね!そうだと思いました。」
彼氏が褒められるって、嬉しい。
灘くんはむず痒そうな顔をして、カーテンを閉めようとしている。
「灘くん!これも!お兄さんセレクトだから!」
お兄さんが持っていた服を、灘くんに押し付けてそのままカーテンを閉める。
「お兄さんのコーディネート楽しみですー!」
「いやー、何でも似合う人ってシンプルな洋服を着がちじゃないですか?」
「確かに、灘くんはいつもシンプルです。めちゃくちゃかっこいいけど。」
「ですよね!なので、キメッキメなもの持ってきました!」
「ヒュー!お兄さんやるぅー!待ってましたー!」
カーテンの向こうで、ガタンと音がした。
「彼氏さん、大丈夫ですか?」
「すみません、ハンガー落としちゃって。さっき着てた服、試着室から出してもいいですか。」
「もちろんです。」
カーテンの隙間から綺麗に畳まれた服が出されて、お兄さんが受け取る。
「すみません、ありがとうございます。」
「いいえ!どうぞごゆっくりお着替えください!」
「あ、もう終わりました。」
シャッとカーテンを開き、3回目のご登場。
光沢のある濃いグレーの生地に、シルバーグレーの細かな幾何学模様の入った、三つ揃いのスーツだった。ネクタイも光沢のあるシルバーグレーで、パーティに参加していそう。
キラキラしていて、溜め息が出るほどセクシー。
「いやぁ、似合いますねー。」
お兄さんは満足そうにしている。
「こんなの着たことないです。」
チラッとこちらを伺う灘くんと目が合って、あ私は今日死ぬんだ…と死期を悟った。
「言葉も出ません。」
お下品な表現かもだけど、パーティでお持ち帰りされたい男性ナンバーワンって感じ。
「お兄さん、ありがとうございます。グッジョブです。」
「こちらこそ、ありがとうございます。デートの邪魔しちゃってすみません。」
「いやほんと、かっこいい姿見られて最高です。」
お互いペコペコとお辞儀し合う。
灘くんは少し眉間にシワを寄せている。あ、感想言わなかったからかな。
「灘くん!ちょっと一回転お願いできますか。」
リクエストに応えて、一回転とポーズを決めてくれた。
衝撃的なかっこよさに、膝から崩れ落ちる。
「待って…無理…、このまま抱いてって感じ。」
「これ買います。」
え?!即決?!
「あ、ありがとうございます。まだ試着されますか?それとも、もう購入されますか?」
「このまま着ていきます。あと、そこに掛かってるトップスのMサイズを彼女に着させたいんですけど。」
「あ!了解です。」
あれよあれよと言う間に、試着室でトップスを着ることになり、カーテンを開いたらお会計が終わっていた。
また…またなのか…!
不服そうな私を見て、スーツ姿のままの灘くんは満足そうに笑った。
「可愛い。そのままパーティに行けるよ。では、お嬢さんお手をどうぞ。」
灘くんにエスコートされて、お店を出る。
「ありがとうございました。」
お兄さんの声を背中で聞いて、道を歩く。通り過ぎる人が、みんな灘くんを見ていた。
そりゃ、こんなにかっこよかったら見ますよ。何かの撮影かと思うもん。
灘くんは何故だかとってもご機嫌で、八の字眉でニコニコ笑っていた。


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