【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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 少女漫画脳からしてみれば、日に二度も会うなんて運命にしか思えないのだろう。私にとってはただの偶然にしか見えないけれど。
 トントンと部屋のドアがノックされた。
「はーい」
 ドアからぬっと元要が顔を出す。
「りん、これいつもの」
 スカイブルーの封筒を受け取ると、中から便箋を取り出した。
「本当懲りないな」
「今日で最後にするから、どうしても頼みを聞いて欲しいって言われた」
「なにそれ」
「最後に一度だけ会って話したいって」
 手紙を読むと確かに、ちゃんと諦めるから一度だけ会いたいとある。
「会ったら諦められなくない?」
「うん、だから無理に行かなくていいよ」
 最後まで目を通すと、私の弱い部分を人質に取るようなことが書いてあった。
「うっわ…来るまでずっと待ってるって…」
「倫音が罪悪感持つことないから、勝手に待たせておきなよ」
 それはそうなのだけれど、こういうのが本当に苦手だ。
 元要は柔らかい話し方で人当たりが良く、優しい気質だけれど、実はドライでこういうのも放っておけるタイプだ。でも、私はそうはいかない。こっちが罪悪感や申し訳なさで不快になるし、向こうの自分勝手さに振り回されるのが本当に嫌だ。
「はー…どうしようかな…」
 一応、記載されている場所をネット検索してみると、隠れ家的なカフェのようで、人目はあるけどつきすぎないみたいだ。
「行かなくていいよ」
「うん…そうだね…」
 だけど、モヤモヤする。向こうの勝手だと分かっていても、胸の奥がぐるぐるする。
 こういうことしてくる奴は、本当に無理。今後一切の望みは捨てていただきたい。
 元要が部屋を出て行ってからも、しばらくベッドの上でゴロゴロしていた。


 快晴、雲一つない。梅雨が終わって、本格的な夏がやってきた。茹だるような暑さ、胸のモヤモヤもあり、気分は最低だ。
 結局、ずっと罪悪感に悩まされるのが嫌で、指定の日時、場所へ向かっている。カフェだし、お店の人もいるだろうし、危ない目には合わないだろう。
 面倒だったから、服なんてめちゃくちゃ適当で、元要のTシャツにジーンズを履いただけだし、足元はサンダルだ。
 でも、顔が良いせいで何を着ても様になってしまう。元要なんて、寝巻きとして学生時代のジャージを着ているのに、スポーツブランドの広告みたいに見えるのだ。
 顔が良すぎるのも考えものだ。
 肩から下げた小さいショルダーからスマホを取り出して、灯里にだけは行くことを伝えておいた。もし、もしも何かあった時に困るから。
 そのまま指定場所の地図を確認し、お店の最寄駅から向かう。
 というか、現役でアイドルやってる癖に、仲間の家族にアプローチするとか、頭がおかしいのでは?
 真剣に仕事しろ!自覚を持て!そして、好きなら相手に迷惑をかけるな!一切の脈はないぞ!
 ただ一つ良かったことは、元要と同じグループのメンバーじゃないってことだ。元要の仕事に迷惑がかかるのも、本当に嫌だ。元要は真剣に仕事に打ち込んでいるし、楽しそうにしているから、私のせいで邪魔をしたくない。
 大きくため息を吐いて、たどり着いたカフェへと入る。
 
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